「セビリアの理髪師」序曲のファゴット・ソロ

秋の演奏会で「セビリアの理髪師」序曲を演奏する。これまで何回か演奏したことはあるが、今回は初めてベーレンライター版を使用する。
http://zauberfloete.at.webry.info/201106/article_22.html
190小節前後にあるファゴット・ソロは鳴り難い音域のイヤなフレーズ。今回、一般的にどのような吹き方がされているのか比較試聴してみた。私が持っている「セビリア」は下記の通り。なお、アバド=ロンドン響も持っていたと思ったが発見できず、また、パタネ=バンベルク響のロッシーニ序曲集(RCA)には何と「セビリア」は含まれていなかった。
●マリナー=アカデミー室内O(PHILIPS/1974)
2種類のマリナーの演奏があるとは思わなかった。これは3枚組の序曲全集に含まれているもの。ピッコロも入った珍しい版による演奏。ファゴット・ソロはごく普通の演奏。
●マリナー=アカデミー室内O(PHILIPS/1980年代?)
こちらはオムニバス盤に入っていたデジタル録音の方。演奏も違うし版も異なる。ファゴットのソロは、ホ長調の上昇音階をいやにテヌートで吹いている。
●デュトワ=モントリオールSO(DECCA/1990)
大オーケストラによる目も醒めるデッカ・トーン。珍しくこのディスクには使用楽譜がクレジットされており、「セビリア」はRicordi版とのこと。ファゴット・ソロは美しく自然。上昇音階はややマルカート気味、E-FisGisとGis-Hの間をやや空けるのが特徴。
●オルフェウス室内O(DG/1985)
指揮者なしで一世を風靡した演奏。ファゴット・ソロ、上昇スケールはスラー・スタッカート気味、E-FisGis/Gis-Hの拍頭のGisにアクセントを付けている。
●カラヤン=ベルリン・フィル(DG/1971)
私が最も回数多く聴いている黄金時代のベルリン・フィルの演奏。序奏からコッホの美しい音色に魅了される。さて、ファゴット・ソロ、上昇音階は極めてスタッカートでホルンのような音色、E-FisGis/Gis-Hはワン・フレーズで(Fis-GisA/A-Hも同様)、前半にすごいクレッシェンドをかける。次のFisも多少音程が上ずっているものの、この鳴り難い音域に200%息を入れていることがわかる。おそらくピースク氏の演奏だろう。

あらためて、スコアとパート譜を見直してみた。
日本楽譜出版社(スコア)とブライトコプフ版(パート譜)では、ホ長調の上昇音階にスタッカートが付けられているが、ベーレンライター版(パート譜)ではスラー・スタッカートとなっている。さらに、E-FisGisのフレーズでは前二者がスラーのみ、ベーレンライター版ではスラーに加えてドルチェと書かれている。そしてGis-Hのフレーズは日楽版ではスラーのみ、ブライトコプフ版はスラーに加えGisにアクセントが付いている。ベーレンライター版にはスラーとディミヌエンドが付いている。
リコルディ版もおそらくホ長調の上昇音階の箇所はスラー・スタッカートになっていると思われる。そして、ブライトコプフ版のようにGisにアクセントが付けられていればこの二小節を一つのフレーズにする演奏もあると思うが、E-FisGisにドルチェが付いているとなると、各小節毎にまとめて行くのか迷うところではある。
いずれにしても、ロッシーニが意図したここでのフレーズの歌い方はどのようなものだったのだろうか。残された楽譜を手掛かりにするしかないのだが・・・。

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