読んだ本の記憶

本を買うことがほとんどなくなったので、同じ本をもう一冊買うということはさすがになくなった(以前は何度かあった)が、読み始めてしばらくして「これは以前に読んだことがある本だ」と気が付いた経験は何度かある。
逆に、敢えてもう一度読みたくて読んだ本も少なからずある。
https://zauberfloete.at.webry.info/200808/article_15.html
が、今回は一度読んだことは知っていて(何となく面白かったという漠然とした記憶があったのだろう)再び読み始めたものの、初めて読んだような感じで、内容はまったく覚えていなかったというケース。
約5年くらい前に読んだ
「オペラ座のお仕事」三澤洋史著(早川書房/2014.10)
という本。
https://zauberfloete.at.webry.info/201411/article_20.html
ここ↑でも指摘されている(自分で書いた)のだが、カラヤンの指揮ぶりに関する内容を今回メモしておこうと思う。
カラヤンの指揮ぶりについて三澤氏は次のように指摘している。

スキーと水泳の二つのスポーツほど、指揮者としてのあり方に深く影響を与えるものはない。直接の指揮運動に関係しているのは水泳である。水の中を掻いていくいく腕の運動は、レガートの表現をなめらかにする。
また、水の中では自分が起こしたアクションがワンクッション遅れて返ってくる。これが、指揮者が起こしたアクションとオケの反応との時間差に慣れる良いエクササイズとなっている。
(中略)拍を叩いたのにオケは鳴らず、腕が上がってしまってからオケの響きが来る。(中略)このタイムラグと指揮者は付き合っていかなければならない。打点以後の上がってしまった手でオケの響きをどう受け止めるのかということは、どの指揮者にとっても心の重荷となっている。しかしながら、じつはこの打点後の動きに、指揮における重大な秘密が隠されている。この時間差の間に”ある動き”をすることによって、オケの”響き”を操ることが出来るのだ。このことを意識的に知覚している指揮者は少ない。しかしカラヤンはそれに精通している。(中略)彼は、サウンドを操る技法を彼の打点後の動きに凝縮した(その技法は文章では説明できない)。(中略)
一番分かり易いヒントを強いて挙げるとすれば、それは、クロールのスクロールの運動にある。もっとはっきり言うと、腕の内側で水をキャッチする感覚にある。
一方、スキーは、運動の中心がむしろ下半身にあるので、腕の動きに直接関係するものではないかも知れないが、音楽のあらゆる面でのバランス感覚に大きな影響を与えている。
スキーは、水泳やジョギングのように自分の筋肉で進むわけではない代わりに、重力、遠心力、慣性の法則など、滑走が体にもたらす様々な物理的力を受け止める筋力と柔軟な感性が要求される。加えて、ゲレンデの形状や斜度、あるいは雪質などの外的要素にも対応しなければならない。そこで最も大切にされるものとは姿勢である。スキーはフォームこそが命である。
カラヤンの指揮におけるフォームは理想的である。(中略)つまり背筋を伸ばすことによって、下から上がってきた”気”が途切れることなく、彼の両腕と胸のあたりに大きな磁場が形成されるのだ。
(中略)彼はその”気”でもって、たとえフォルッティシモの個所でさえ、極小の動きで最大限の効果を上げることに挑戦しているかのようであった。
仮にアンサンブルが乱れても、彼の指揮ぶりが乱れることはなかった。スキーでも、ミスをした時にフォームが乱れると、ますますバランスを失って下手をすると転倒まで至ってしまう。そんな時こそ冷静にフォームを保ちながらリカヴァリーに専念するべきなのだ。(中略)
このように、運動力学の観点から見た場合、カラヤンの指揮は、実にアスリート的である。トップ・アスリートのフォームは美しい。しかし、それは元来人に見せるためのものではない。安定性や効率を考え、ベストタイムに導くために無駄をどんどん削ぎ落としていった結果、それがひとつのフォームに結集したのである。つまりは機能美である。そして、一度そのフォームを築き上げたら。もうそのアスリートはいきあたりばったりでフォームを変えることなどしない。
(以上引用終わり)

なお、三澤氏は上記のようにカラヤンの指揮テクニックについては尊敬に値するものとしているが、カラヤンが作り出した音楽については賛同できない部分が少なくないと述べている。

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