追悼 佐伯茂樹氏

タワーレコードのHPに佐伯茂樹氏の追悼記事が掲出されている。
https://tower.jp/article/campaign/2019/08/05/06
上記記事にある通り、佐伯氏の執筆活動は単行本に加え、CD解説領域での著作も見逃せない。それは単なる曲目解説にとどまらず、演奏者(特に管楽器奏者)の使用楽器や奏法まで踏み込んだ佐伯氏ならではのものだった。
以下、2016年12月に復刻された「ベルリン・フィルハーモニー金管アンサンブル/ブラスのクリスマス」
https://zauberfloete.at.webry.info/201612/article_4.html
の佐伯氏解説から抜粋する。


現在のベルリン・フィルでもドイツタイプの楽器が使われているが、トランペットは小振りなベルで明るい音がするウィーンタイプの楽器が好んで使われており、トロンボーンもドイツ製ではあるものの、アメリカ製の楽器の合理的な設計を取り入れた楽器が主流になっているので、このレコードで聴かれるようなサウンドとは少々違う。

大きなベルを持つヨゼフ・モンケ製のB管ロータリートランぺット、伝統的なスタイルを守るヘルベルト・レッチェやエド・クルスペが製作したトロンボーンが生み出す往年のベルリン・フィルの金管セクションの響き、それこそがこのアルバム最大の聴きどころなのである。

注目しなければいけないのは使用楽器だけではない。このアルバムでは、オーケストラのグローバル化の洗礼を受けて現在はほとんど廃れてしまった伝統的なドイツ奏法による演奏を聴くことができるのだ。 

19世紀から続く正統的なトランペットのアンブシュアを継承するホルスト・アイヒラーが奏でる太く豊かな音色がそう。この奏法はホルンには残ったが、トランペットのものはコルネットのアンブシュアに駆逐されてしまったので、その響きを優れた録音で体験できるのは有り難い。

トロンボーンの奏法も同様で、タンギングに頼らず息のコントロールで滑らかに移動するドイツの伝統的なレガート奏法を守っていた時代のメンバーが揃っており、声楽のような美しいレガートが随所で聞こえてくる。とりわけ、ヨハン・ドムスとカール=ハインツ・ドゥーゼ・ウテッシュという2人の名手の甘く歌う高音域の競演は聴き物だ。

奏法に関しては、メンバー全員が、現在の金管楽器奏者のように音価を均質なテヌートで埋めるように吹くのではなく、各音を前方に飛ばすようなスピード感のある吹き方をしていることにも注目していただきたい。この吹き方で、全員の音のスピード感を揃えるのはテヌートで均質に吹くより難しいのだけれど、彼らはスピード感が自然に揃った見事なアンサンブルを聴かせる。厚みがありながら涼し気で暑苦しくないその響きは、まさにこの奏法の賜物なのである。
 
このアンサンブルの魅力の秘密は全体のバランスにもある。バス・トロンボーンの世界的名手として名を馳せたジークフリート・チースリクが、ボアを太くしベルを大きくしたレッチェ製の「チースリク・モデル」を使用して、アンサンブルの土台を形成。その上で、やや大きめのテノール・トロンボーンを吹くハインツ=ディーター・シュヴァルツがな内声部を充実させ、さらに、ドムスとドゥーゼ=ウテッシュが、細めの明るい音色のテノール・トロンボーンで上声部を担当することで、ピラミッド型のバランスを築いているのだ。

トランペット・セクションも、アイヒラーとゲオルク・ヒルザーが、ベルの大きいモンケ製のB管が生み出す豊かなサウンドで土台を築き、その上で、コンラディン・グロートとマルティン・クレッツァーの首席の2人が、明るい音のC管(当時はヘッケル製やヤマハ製を使用)やG管ピッコロ(セルマー製)に持ち替えて吹くことで、やはりピラミッド型の響きを形成している。(後略)


ということで、あらためて読み直してみても、これだけの解説を書ける人は佐伯氏以外にはいない ということは誰もが認めるのではないか。

ほかにも、ラトル=BPhによる展覧会の絵(EMI)
https://zauberfloete.at.webry.info/200807/article_6.html
はじめ、佐伯氏が解説を執筆したCDは少なからずあるハズで、それらを全部読んでみたいと思うのは私だけではないだろう。

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