モーツァルトの「アレグロ マエストーソ」

モーツァルト:フルート協奏曲第1番ト長調K313第一楽章に書かれている「アレグロ マエストーソ」の発想標語について調べてみた。
https://zauberfloete.at.webry.info/201906/article_5.html
マエストーソは一般に日本語訳では、「威厳を持って、荘厳に」と訳されるが同時に、感嘆、尊敬の念など、「偉大さ」を感じさせる言葉でもあるという。
そのようなイメージであれば必然的にテンポもゆったり/たっぷりしたものになることが想像される。
モーツァルト自身も、普通のアレグロよりは少し遅めのゆったりとしたテンポを想定していたのではないかと思われる。
ちなみに、「アレグロ マエストーソ」の指定がある主要な曲は下記の通り。
○「ハフナー・セレナーデ」K250/第一楽章
○ピアノソナタ イ短調K310/第一楽章
○フルート協奏曲第1番ト長調K313/第一楽章
○ヴァイオリンとヴィオラのための協奏交響曲変ホ長調K364/第一楽章
○管楽八重奏のためのセレナーデ変ホ長調K375/第一楽章
○ピアノ協奏曲第21番ハ長調K467/第一楽章
○ピアノ協奏曲第25番ハ長調K503/第一楽章
○ホルン協奏曲第4番変ホ長調K495/第一楽章
○「フィガロの結婚」第18曲レチタティーヴォとアリア/「私は見ることになるのか 召使いの幸せを」
○「魔笛」第4曲レチタティーヴォとアリア(夜の女王)
○「魔笛」第一幕フィナーレ354小節/「ザラストロ、ばんざい」
などで、以上はすべて四分の四拍子(伯爵のアリアのみ二分の二拍子)となっている。

ということで、ご存じの方が見ればなるほどと納得させられる曲ばかりが並んでいる。
が、ふだん「普通の」演奏を聴いている方は、上記の中のフルート協奏曲とホルン協奏曲には疑問符が付くのではないだろうか。
私自身、この2曲はかなりの枚数のディスクを持っているが、フルート協奏曲第1番については、
○グラフェナウアー/ヴァント=バイエルン放送響(BR KLASSIK/1981)
○ブラウ/カラヤン=ベルリン・フィル(EMI/1971)
http://zauberfloete.at.webry.info/201007/article_14.html
ホルン協奏曲第4番については、
○ザイフェルト/カラヤン=ベルリン・フィル(1968/DG)
http://zauberfloete.at.webry.info/201212/article_15.html
以外の演奏は、ふつうの「アレグロ」になっている。
なお、ブレインとの録音(EMI/1953)は、ザイフェルトとの録音ほどゆったりとはしていない。

以前、カラヤン(だけ)はなぜこの2曲をゆったりしたテンポで演奏するのだろうか?と疑問に思ったこともあるのだが、「アレグロ マエストーソ」の指定があるということで大いに納得している。

以下参考、4曲のホルン協奏曲の楽章毎の調性/速度・発想標語は下記の通り。
第1番(K412/514) ニ長調/アレグロ、ニ長調/ロンド アレグロ
第2番(K417) 変ホ長調/アレグロ、変ロ長調/アンダンテ、変ホ長調/ロンド アレグロ
第3番(K447) 変ホ長調/アレグロ、変イ長調/ロマンツェ ラルゲット、変ホ長調/アレグロ
第4番(K495) 変ホ長調/アレグロ マエストーソ、変ロ長調/ロマンツェ アンダンテ カンタービレ、変ホ長調/ロンド アレグロ ヴィヴァーチェ

と、ここまで書いて念のためと思い、実際のCDの表示をいくつか見たところ、ザイフェルト/カラヤン盤はじめ、いくつかのディスクで第4番第一楽章に「アレグロ モデラート」と書いてある。
そこでimslpで調べてみたところ、オイレンブルク版やブライトコプフ版のスコアでは、驚いたことに「アレグロ モデラート」になっている。
とはいえ、NMAが「アレグロ マエストーソ」と言っているのだから間違いないとは思うが、カラヤンが録音に使った譜面には「アレグロ モデラート」と書いてあった確率の方が高いとも思える。
いずれにしても、「アレグロ モデラート」の方が「アレグロ」よりもゆっくりなのだとは思うが・・・。

この記事へのコメント

cherubino
2019年06月12日 21:34
Zauberfloete 様、こんばんは。
少しご無沙汰でしたが、貴ブログはいつも楽しみに拝見させていただいております。
今回、話題となっているホルン協奏曲、旧第4番:変ホ長調 KV495 ですが、自筆譜は第2、3楽章の一部しか残されていません。なので、第1楽章の発想標語は実際のところ、かなりあいまいです。
新全集の校訂報告によれば、アンドレ社が1802年に出した初版(パート譜)では「Allegro moderato」です(全175小節。新全集の付録に収録)。一方、1803年にウィーンで出された同曲のパート譜には、「Allegro maestoso」とあります(218小節。ただし、第一ヴァイオリンには「Allegro moderato」と書かれている)。もうひとつの重要な資料、プラハにある総譜には「Allegro」とあるのみ(こちらは一番長く229小節)。これらはすべてモーツァルトの死後の資料ですが、唯一、モーツァルトの自作目録によれば、なんと「Allegro」とだけあるようです。
このように、同曲の発想標語(そして小節数も)資料によってかなりばらばらの状態ですので、CD等の表記がばらばらなのは仕方のないところです。自筆譜が黒・赤・青・緑という4色インクで書かれていることも含め、まだまだ解明が必要な曲ですが、どの版が使われているのか聴きわけをする楽しみもありますね。
2019年06月12日 22:41
cherubinoさま
いつもながら詳細なコメントありがとうございます。
私はあまり調べもせず直感的に書いてしまうので、詳細なフォローをいただきいつも感謝するとともに感心しております。
自筆譜と目録上でも違いがあることもあるらしいので仕方がないことだとは思いますが、個人的にはこの曲の第一楽章オープニングはやはり「マエストーソ」を感じます。
なお、CDの誤標記に関しては、第2番第一楽章に「アレグロ マエストーソ」と書かれてあるものも少なからずあったのですが、あの曲想でマエストーソはあり得ないと直感的には思います。
cherubino
2019年06月15日 15:22
Zauberfloete 様、こんにちは。お返事をいただきありがとうございます。
旧第2番:変ホ長調 KV417 の方は、幸い第1楽章(の176小節までとロンド)の自筆譜が残っていて、imslp や新全集の前文で見ることができます。が、僕が見る限り速度標語等は記載されていないようです。「Allegro maestoso」は、アンドレの初版(1802年)に由来しています(ただし、第二ヴァイオリン・パートには「Allegro moderato」、Bassi には「Allegro」と書かれている)。プラハに残る総譜は、「Allegro moderato」ですが、他にも「マエストーソ」を伝承する楽譜もあって、旧全集は「マエストーソ」となったようです。
こちらも、断定的なことは言えそうにない資料状況ですが、新全集は、斜体の「Allegro」。K495ともども、新全集の編者のギーグリングと Zauberfloete さんとは、標語採用の判断が一致していることは間違いのないところです。
2019年06月16日 20:40
cherubinoさま
さらにいろいろ調べていただき本当にありがとうございます。私は完全な誤植と思っていましたが、根拠はあるのですね。今後ともよろしくお願い致します。

この記事へのトラックバック