ルーテ(Rute)

今年の2月に某アマチュアオケでハイドン:「軍隊」、モーツァルト:「後宮」序曲などが演奏されたコンサートを聴いたのだが、その時に大太鼓奏者が左手に持って大太鼓のワクを叩いていた筮竹(ぜいちく)のような細い棒の束。あれが何だったのか調べたり、知っていそうな人に訊いたりしたのだがずっとわからないでいた。
今週の演奏会(ハイドン:「軍隊」を演奏する)に向けての最後の練習時、エキストラの大太鼓奏者の人がそれを持って叩いていたので、練習終了後、初対面の人ではあったが「それは何と言うのですが?」と思わず訊いてしまった。
「ルーテ」というのだそうだ。
Wikipediaには下記のように書いてある。
ルーテとは、柔らかい鞭の形をした楽器(打楽器)のことである。日本語に「むち」と訳されることが多いが、むちには別の楽器もあるので注意を要する。
独:Rute/英:switch, twig brush/仏:verge/伊:verga
柔らかい1本の棒、もしくは細い棒や細い枝を束ねたものを、2個用意して打ち合わせる。または、1個で大太鼓のヘッド(皮)やリム(枠)を叩いて音を出す。
主な使用楽曲
グスタフ・マーラー:交響曲第2番《復活》、第3番、第6番《悲劇的》、第7番《夜の歌》
ルロイ・アンダーソン:そりすべり
参考文献
『打楽器辞典』網代景介、岡田知之著、音楽之友社、1981年、254-255頁

「むち」と訳されるようだが、上記にもある通り、いわゆる楽器の「むち」(ラヴェル:ピアノ協奏曲冒頭で使われる)とは別もの。
ただし、竹で作られたスティック/ブラシとどう違うのかは分からない。
https://www.amazon.co.jp/SODIAL-058808-%E3%83%89%E3%83%A9%E3%83%A0%E3%82%B9%E3%83%86%E3%82%A3%E3%83%83%E3%82%AF%EF%BC%8CSODIAL-R-%E3%83%9A%E3%82%A240%E3%82%BB%E3%83%B3%E3%83%81%E3%83%A1%E3%83%BC%E3%83%88%E3%83%AB%E3%82%B8%E3%83%A3%E3%82%BA%E3%83%89%E3%83%A9%E3%83%A0%E3%80%81%E7%AB%B9%E3%81%A7%E4%BD%9C%E3%82%89%E3%82%8C%E3%81%9F%E3%82%B9%E3%83%86%E3%82%A3%E3%83%83%E3%82%AF%E3%80%81%E3%83%96%E3%83%A9%E3%82%B7%EF%BC%88%E3%83%96%E3%83%A9%E3%83%83%E3%82%AF%EF%BC%89/dp/B01DBKP910/ref=sr_1_9?ie=UTF8&qid=1530766586&sr=8-9&keywords=%E3%83%89%E3%83%A9%E3%83%A0%E3%82%B9%E3%83%86%E3%82%A3%E3%83%83%E3%82%AF+%E3%83%96%E3%83%A9%E3%82%B7
なお、日本語では「ささら」と言うらしい。
http://www.ims-tokyo.co.jp/instrument_07.html

さて楽器名はわかったものの、マーラーのシンフォニーで使用されるとの記述はあったが、トルコ音楽での使用についての記述がなかなか見つからないので、<rute,bass drum,turkish>で検索したところ、英語版Wikipediaに下記のような記述があった。
https://en.wikipedia.org/wiki/Rute_(music)
最初に使われたのはモーツァルト:「後宮」(1782年)で、
The rute were played by the bass drum player, with a mallet striking on downbeats and rute being struck on offbeats.A typical pattern in this style would generally go, in 4/4 time, boom-tap-tap-tap boom-tap-tap-tap, the taps representing strikes of the rute. Mozart's contemporaries and immediate successors used the rute in a similar fashion for military effect.
ルーテはバスドラム奏者により演奏され、マレットでダウンビートを、同時にルーテでオフビートを叩く。
例えば、4/4拍子の場合、
boom(マレット)、tap(ルーテ)、tap(ルーテ)、tap(ルーテ)
のように演奏する。
とのことである。
そして、Anatomy of the orchestra という書の中には下記のような記述がある。
https://books.google.co.jp/books?id=vsVzqUN1GBcC&pg=PA380&lpg=PA380&dq=rute+bass+drum+turkish&source=bl&ots=8frBDCF1Mr&sig=-yRr3lxtUeuBuMknMBtL6z85138&hl=ja&sa=X&ved=0ahUKEwjozsfguYfcAhUCsJQKHd9rDBUQ6AEIbDAL#v=onepage&q=rute%20bass%20drum%20turkish&f=false
ハイドンの「軍隊」交響曲の中のトルコ音楽のような場合においては、バスドラム奏者により、一方にはスティックを、もう一方にはバーチ(ルーテ)を持って演奏され、パート譜には符尾が上下に分けて記載される。

私も迂闊だったと言うか、「後宮」や「軍隊」のスコアをよく見たところ、バス・ドラムのパートには確かに上下に分けた2つ分のパートが書かれていた。
画像


ということで、最後に実際の演奏シーン(ルイジ=ウィーン響)。
https://www.youtube.com/watch?v=GrFbiw77_90
なお、フルートのトップを吹いているのはカール=ハインツ・シュッツ(現WPh首席)のようである。

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この記事へのコメント

通りすがりのアマチュア打楽器奏者
2018年08月19日 18:43
こんにちは.
クーパーの記事を検索していたらこちらにたどり着き,
興味深く拝読させていただきました.

さて,マーラーが2番や6番で用いているルーテは,
もともとは木の枝を束ねたものです.
現代では,それこそ,ささらのようなものをつかいます.
ルーテをお互い打ち合わせたり,大きな木の板を叩いたり,
大太鼓のふちや胴をたたいたりします.

ハイドンやモーツァルトで大太鼓をたたくばちは,
私は木の棒を使うべきだと考えています.
メフテル(トルコの軍楽)や当時の絵画を見ると,
右手に大きな木のばち(当時はマレットはありません),
左手に細い木の棒を使って,それぞれ膜面を叩いています.
https://youtu.be/A4U_eA8G2VY?t=4m20s

ただ,このような奏法は現代のヨーロッパでは忘れられ,
かつモダンオーケストラで演奏するにあたって,
演奏者や指揮者の指示によって
さまざまな演奏が行われているのが現状です.
2018年08月20日 20:22
通りすがりのアマチュア打楽器奏者さま
興味深い内容のコメントありがとうございます。また何かありましたら教えてください。

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