「魔笛」序曲のトロンボーンについて

「音楽の友」2018年1月号に、佐伯茂樹氏による「新・名曲解体新書」第1回として「モーツァルトは<魔笛>序曲にトロンボーンを使っていなかった?」という記事が載っている。以下引用。
(前略)通常のオーケストラのコンサートで演奏されるモーツァルトの作品でトロンボーンが入っているのは「魔笛」序曲だけなのです。
ところが、「魔笛」の自筆譜を見ると、なんと序曲にはトロンボーンパートが見当たりません。他の楽器のパートは全部段に分かれて書き込まれているのにもかかわらず、トロンボーンは編成に含まれておらず、1つも音符は書かれていないのです(譜例参照)。モーツァルトの死後に書かれた19世紀の筆写譜にも、序曲にトロンボーンパートが書かれていないものがあるので、現在一般に演奏されているトロンボーン入りの序曲は、出版時に第三者によって付け加えられたとしか考えられません(「レクイエム」のように、モーツァルトが死の床から弟子に加えるように指示したのかもしれませんが)。


私も気が付かなかったので、念のため持っている「魔笛」自筆譜ファクシミリを参照してみた。
http://zauberfloete.at.webry.info/201001/article_13.html
「音楽の友」に掲載されている自筆譜のコピーはひじょうに小さいため、ファクシミリをよく見たところ、序曲冒頭のページは12段の五線紙に書かれており、1・2段目がヴァイオリン、3段目がヴィオラ、4段目が1stフルート、5段目が2ndフルート、以下6~10段目が、オーボエ1・2、クラリネット1・2、ファゴット1・2、ホルン1・2、トランペット1・2、11段目がティンパニ、12段目がバッソとなっており、確かにトロンボーンパートは書かれていない。

しかし、この自筆譜ファクシミリ第2巻/VOLUMEⅡ、第二幕の次の章に、SHORT SCORES という15ページくらいの付録/補遺(一点を除きモーツァルト自筆譜/内容は下記参照)が付いており、その中に序曲のトロンボーンパートが入っていることがわかった。
○序曲のトロンボーン・パート譜
○No.1イントロダクションのトランペットとティンパニ各パート譜
○No.8フィナーレのフルート、トランペット、ティンパニ各パート譜
○No.12クインテットのフルート、トロンボーン、トランペット、ティンパニ各パート譜
○No.21フィナーレのフルート、トロンボーン、トランペット、ティンパニ各パート譜
○Dreimaliger Akkord/Threefold Chordのフルスコア
○No.17アリアの(モーツァルトではない)コピイストによるスコアの断片

そして、アラン・タイソンによる五線紙の透かし模様研究のインデックスも付いているのだが、それによれば、
○No.1イントロダクションのトランペットとティンパニ各パート譜は、序曲と同じ五線紙
○序曲のトロンボーンパートは、「魔笛」の中では使われていない五線紙(Vienna/1791)
○上記No.8フィナーレのフルート、トランペット、ティンパニ各パート譜以下はすべて、No.20アリアのグロッケンシュピールの2・3回目を書いた五線紙
がそれぞれ使われているとの記述がある。

ということで、書かれた時期は別としても、モーツァルトは12段の五線紙では書き切れなかったパートは別紙に書いていたということがわかる(第一幕フィナーレではフルートとクラを1段にまとめたり、コーダのプレストではトロンボーンは合唱と同様など、何とか12段に収めている工夫が随所に見られる)。

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この記事へのコメント

佐伯です
2017年12月21日 11:43
こんにちは。いつも取り上げていただいてありがとうございます。魔笛のトロンボーンに関しても大変ありがたいご指摘感謝します。次号で改めて訂正できればと思います。今後ともよろしくお願いいたします。  
                          佐伯茂樹

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