「ピリオド楽器から迫る オーケストラ読本」

ONTOMO MOOK/「音楽の友」編、佐伯茂樹監修、音楽之友社から2017年7月に出版されている。
http://www.ongakunotomo.co.jp/kagutsu/k349.html
一般に、古楽器/ピリオド楽器による演奏というと、ルネサンスやバロック時代のレパートリーがイメージされるが、本書では作曲当時の楽器を使って古典派以降の管弦楽作品を演奏する「ピリオド・オーケストラ」に焦点を当てている。
バッハ、モーツァルト、ベートーヴェン、ベルリオーズ、ヴェルディ、ワーグナー、ブラームス、シャブリエ、ブルックナー、ストラヴィンスキー、ムソルグスキー/ラヴェル、バルトークなどの名曲がどのような楽器でどのように演奏されたか、という説明はひじょうに興味深い。
中でも、個人的に特に引用しておきたい箇所は下記の通り。

○シャブリエ:狂詩曲「スペイン」
これもベルリオーズの「幻想交響曲」から始まるものであるが、この曲には、木管楽器の伸ばしの音を目立たせたいときに「トリル」をかける用法が見られる。バロック・古典派時代までのトリルは、解決音の前の音を強調して焦らすときなどに使用したが、19世紀になると、サイレンの音を揺らすのと同じように、その音自体の存在を目立たせるためにかけるようになってきた。この場合、下の音からトリルをかけるべきなので気をつけなければならない。

狂詩曲「スペイン」には、19世紀のパリで使われるようになった「山型アクセント」が登場する。この記号の意味は、現在でも国や地域によって異なっているので注意が必要だ。日本では、音の頭を強く発音して目立たせると説明されることが多いが、欧米では、音を区切って目立たせるという解釈が多い。はっきり区切ることで目立つという発想なのだろう。

○ブルックナー:交響曲第8番ハ短調
ブルックナーの交響曲というと、金管楽器が主役というイメージを持たれがちであるが、実際にブルックナーが指定した楽器で演奏してみると、現在の演奏とは少し違う姿が浮かび上がってくる。具体的には、金管楽器に埋もれがちな木管楽器の動きが聴こえるようになるのだが、とりわけそこで目立つのがファゴットの存在だ。まるでバロック時代の通奏低音のように、弦楽器と木管楽器が作り出す音楽の基盤になっていて、その上に金管楽器が展開しているのである。モダンの演奏でも、少しだけ金管楽器を控えめにすれば、木管楽器の動きが浮かび上がってくるはず。


さらに、第2~4章 19世紀の楽器発展史(低音管楽器、トランペット、ホルン、コントラバス、ティンパニ)は、ここまでまとめられた文献はこれまでなかったのではと思うくらい充実したもので、各楽器を演奏する人はもちろん、オケをやる人にとっては必読の内容と思う。

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    Excerpt: ●「ピリオド楽器から迫る オーケストラ読本」 「音楽の友」編/佐伯茂樹監修(音楽之友社/2017.7) http://zauberfloete.at.webry.info/201708/articl.. Weblog: Zauberfloete 通信 racked: 2017-08-31 21:55