ヨハン・シュトラウスⅡ:ワルツ「酒・女・歌」作品333~その1~

「酒・女・歌を愛さないものは、一生愚か者である」
マルティン・ルター(1483~1546)がチューリンゲンのヴァルトブルクに滞在した際に書いたとされ、そのためにこの歴史的な場所に記録されているこの文は、ヨハン・シュトラウスが1869年2月2日にディアナバートザールで開かれたウィーン男声合唱協会のカーニヴァルの夕べのために作曲した、男声合唱とオーケストラのためのワルツの長い序奏の歌詞のタイトルおよびクライマックスに使われている。
1867年のカーニヴァルで初演されたワルツ「美しく青きドナウ」作品314もやはりウィーン男声合唱協会により初演されたが、もともとは序曲とコーダのついた舞踏曲として作曲され、演奏に際して、合唱とオーケストラのために編曲された。したがって、ワルツ「酒・女・歌」は、ワルツ王の作品の中で、最初から合唱とオーケストラのために書かれたものとしては最初の作品だと言わなければならない。
ウィーン男声合唱協会によるこの合唱ワルツの初演は当然すばらしい成功を収めた。(中略)しかし、ヨハン・シュトラウスはこの作品のオーケストラ版を演奏するまでには時間をおいた。3月16日になってようやく、「酒・女・歌」はシュトラウス楽団の「大プロムナードコンサート」のプログラムに載った。この演奏会は、ヨハン、ヨーゼフ、エドゥアルトのシュトラウス兄弟がペスト*1のレドゥテン・ザールで催し、交互に指揮をとった。しかし残念なことにヨハン・シュトラウスがこの時、どの版でこのワルツを演奏したかについて、信用できる話は伝えられていない。そのため、合唱抜きの作品の演奏に際しては全部で173小節におよぶ序奏*2を使うべきか、それよりずっと短い序奏を使うべきかについての議論がなされている。(中略)
ウィーンでこの作品のこの版が聴かれたのは、1869年3月29日、イースターの月曜日になってからのことで、ヨハン・シュトラウスとヨーゼフ・シュトラウスが造園協会の花のホールで開いた慈善プロムナードコンサートの時だった。
(以上、「ヨハン・シュトラウスⅡ管弦楽曲完全全集 全曲目解説(アイヴィー/1999)」より抜粋)

(以下筆者注)
*1 ハンガリーの首都ブダペストのドナウ川東岸の平野部の地区名。1873年、ドナウ川西岸のブダおよびオーブダ地区と合併し、ブダペストになった。
*2 オイレンブルク版スコアによれば、変ホ長調二分の二拍子が終わるのが117小節、118小節にテンポ・ディ・ヴァルスの表示(変ロ長調四分の三拍子)、138小節からはワルツⅠの表示がある。
従って、ワルツⅠの直前までを序奏と考えれば137小節、テンポ・ディ・ヴァルスの前までを序奏と考えれば117小節が序奏となる。いずれにしても上記173小節は誤りと考えられる。
なお、私が持っているCDの演奏は下記の通り。
○カラヤン=ウィーン・フィル(EMI/1951) 118小節テンポ・ディ・ヴァルスからの開始。全体の録音時間の制約でもあったのかその後のリピートも省略され、全曲が4分ちょうどで終了している。
○ボスコフスキー=ウィーン・フィル(DECCA/1966) 省略なく全部の序奏が演奏されている。
○カラヤン=ベルリン・フィル(DG/1980) いきなり100小節マエストーソ(変ホ長調二分の二拍子)から開始される。
○ボスコフスキー=ウィーン・ヨハン・シュトラウスO(EMI/1987) 100小節マエストーソ(変ホ長調二分の二拍子)から開始される。
ということで、そもそもの「酒・女・歌」の歌詞が含まれているという序奏を省略してしまってはこの曲の意味がなくなってしまうことと、何よりこの美しくドラマティクな序奏は後半のワルツと同等あるいはそれ以上に名曲でもあるという理由から、序奏部分も全曲演奏すべきであるというのが私の考えである。

(2015.1.3追記)
「BS世界のドキュメンタリー▽美しく青きドナウ~名ワルツは、こうして生まれた」を観ていたら、「美しく青きドナウ」について、合唱付きの初演は大失敗して、後年管弦楽用に書き換えたという解説があった。


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    Excerpt: 「ららら♪クラシック」今年第1回はヨハン・シュトラウスの「美しき青きドナウ」。 http://www.nhk.or.jp/lalala/archive.html いつもながら初心者でなくても勉強に.. Weblog: Zauberfloete 通信 racked: 2015-01-12 22:26