音楽用語ものしり事典

著者は久保田慶一(国立音大教授)、アルテスパブリッシングから2010年9月に出版されている。
カタカナ語の音楽用語について、その背景にある言語的、文化的、社会的な脈絡を知ることを通して用語の理解を深め、さらに背景にある文化や社会にまなざしを向けてもらうことがねらいである、と「はじめに」に記してある。
細かいことを言うと、バスーンの英語表記がbasoonになっていたり、ケッヘルがドイツ人など、不適切な記述も少なからずあるのだが、それは別として私がなるほどと思ったのは下記の二点。
●「調性」という語について
「調」、「調号」、「調性」、「調律」という4つの用語は、英語ではそれぞれ、
key , key signature , tonality , tuning(temperature)
という言葉に対応するという。そして、私自身もこの言葉を間違って使用していた一人なのであるが、
「最近では音楽の専門教育を受けた人でも、調と調性を混同してもちいている人が多い。(中略)原語を知っていれば、混同することなどけっしてないと思うのだが・・・。」と書かれている。
この本には「調性」の意味について詳しく書かれていなかったため調べてみた。Wikipediaによれば下記の通り。
メロディーや和音が、中心音(tonal centre)と関連付けられつつ構成されているとき、その音楽は調性(tonality)があるという。伝統的な西洋音楽において、調性のある音組織を調(ちょう/key)と呼ぶ。(中略)バロック以降の西洋音楽にあっては、調性を確立する(聞き手に調性を確実に把握させる)ために和声(harmony)が重要な働きをする。
つまり、「調性」という言葉は「調性を持っている」、あるいは「調性がある」という使い方をする言葉であり、「調」という言葉より広い概念を持っているということになる。また、「無調音楽」に対する概念が「調性音楽」になるようだ。
●「アルト」という語について
イタリア語で、アルト:高い、バッソ:低い、であるにもかかわらず、なぜアルトが「低い」女声部なのか疑問に思っていたが、下記のような説明があり納得した(以下要約)。
中世・ルネサンス時代に多声音楽が発達した時、楽曲の基礎となったのがテノール声部だった。この声部の上に置かれたのがスぺリウスと呼ばれた声部で、これがのちにソプラノとなった。その後、テノールとソプラノを響きの上で補うために、テノール声部に対置する声部が二つ追加された。
上に対置された声部は contra tenor altus
下に対置された声部は contra tenor bassus
と呼ばれた。contraは「~に対する」を意味するラテン語であり、英語ではcounter、アルト声部をファルセットで歌う男声歌手はカウンター・テノールである。
altusは「高い」の意味で、イタリア語ではalto、bassusは「下に」の意味で、イタリア語ではbassoとなる。
なお、明治14年(1881年)出版の「西洋音楽小解」には、ソプラノ/アルト/テノール/バスは、「秀品/高品/中品/低品」と訳されている。

なお、ここでは「コントラルト(contralto)」という語については全く言及されていないが、「アルト」と「コントラルト」はまったく同義のようである。
最後に、コントラバスやコントラファゴットの「コントラ」とは何?という疑問について。本書によれば、本来「コントラ」とは「~に対する」という意味だが、音高や音域について使用されると1オクターヴ低くという意味にもなる、ということである。
以下、アルトクラリネットと、コントラアルトクラリネットについて。
アルトクラリネットは、コントラルトクラリネットと同義であるが、コントラアルトクラリネットは、変ホ調の移調楽器で、しばしばE♭コントラバスクラリネットとも呼ばれる。アルトクラリネットよりも1オクターブ低い音が出る楽器で、バスクラリネットより大きく、B♭コントラバスクラリネットよりも小さい。
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この記事へのコメント

オムヤン
2012年02月22日 02:18
はじめまして。よく楽しませていただいてます。

コントラファゴット→ファゴットのオクターブ下 はわかるのですが
コントラバス→バス× チェロ○ のオクターブ下 で
コントラチェロ が正解では?(笑)

件の本 読んで見ましたが 紙面の関係上か もう少し突っ込んで欲しいところが多いようですね。

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