ハイドン:交響曲第45番嬰へ短調「告別」~その2 聴き比べ~

2009年のWPhニューイヤー・コンサートでバレンボイムがこの曲の終楽章を採り上げたことは記憶に新しいが、プロのオーケストラの演奏会ではなかなかその演目にはあがり難い曲のようだ。
カラヤンは1943年にスカラ座でこの曲を演奏したという記録があるが、録音は残しておらず、ベーム、バーンスタインなども録音はない。ザンデルリンク(父)=ドレスデンの録音もあるらしいが現在は廃盤と思う。
今回、家にあるCDをかいつまんで聴き直してみた。
●カザルス=プエルトリコ・カザルス音楽祭O(SONY/1959)
ライブの緊張感と熱気が伝わる演奏。音質は優れているとは言えないが鑑賞には差し支えないレベル。最近では聴けないアプローチでなかなか参考になる。メヌエットはかなり遅いテンポ。
●ローラ=フランツ・リスト室内O(HUNGAROTON/1983)
現代楽器で小編成ながら、ひじょうにオーソドックスで格調高い見事な演奏。緩徐楽章を含む全楽章にファゴットがひそやかに加わっている。
●ソロモンス=レストロ・アルモニコ(SONY/1980年代後半?)
かなり人数を絞り込んだ、典型的な古楽器による演奏。ホルンの咆哮(ハルステッドほか)が特徴的。チェンバロも加わり、控えめにファゴットも入っている。
●マッケラス=St.ルークスO(TELARC/1988)
現代楽器による比較的小編成のアンサンブル。チェンバロ、ファゴットも加わるが、落ち着いたテンポ、バランスも良く、それでいて適度な緊張感もある。録音は特に素晴らしい。
●アーノンクール=ウィーン・コンツェントゥス・ムジクス(TELDEC/1988)
第一楽章は適度なテンポで三拍子を感じさせる。ところどころテヌートを強調するが過度な激しさはない。メヌエットはひじょうに速い。終楽章プレストは意外に遅いが説得力のある見事な演奏。アダージョに入ってからのアーティキュレーションのつけ方はさすがにアーノンクールと思わせる。
●フィッシャー=オーストロ・ハンガリアン・ハイドンO(Nimbus/1988)
録音のせいかやや響きが豊か過ぎる面もあるが、現代楽器の大(?)オーケストラによる模範的な名演。フィッシャーの指揮も中庸を得て嫌みがない。ホルンの音色は特に美しい。
●ワイル=ターフェルムジーク(SONY/1993)
かなり激しく尖った演奏で、テンポも速い。チェンバロもファゴットも入っていないように聴こえる。
●シュテファン・ザンデルリンク=ロイヤル・フィル(Royal Phil/1995)
現代楽器による普通の演奏。オケの音色に魅力が乏しく、テンポもやや性急で余裕がなく落ち着かない。
●ブリュッヘン=オーケストラ・オブ・ジ・エンライトゥンメント(UNIVERSAL/1990年代後半?)
古楽器による演奏だが、過度な激しさはまったくなく優等生的で無難な演奏、テンポも中庸。終楽章、アダージョに入ってからのアーティキュレーションに一貫性がないのが気にはなる。チェンバロ、ファゴットは入っていないように聴こえる。
●ディヴィス=シュトゥットガルト室内O(SONY/2000年前後)
現代楽器によるやや小編成の標準的な演奏。可もなく不可もない。

こうして聴き比べてみると、テンポ、バランス、歌い方などももちろんそれぞれ個性があるが、ターンや前打音など装飾音の演奏の仕方、そして何より、特に指定のない箇所のアーティキュレーションの付け方は千差万別という感じがした。また、チェンバロについては、入れないことが最近の標準のようだが、ファゴットについてはその扱いがさまざまであることがわかる。ランドン校訂によるフィルハーモニア版のスコアには、緩徐楽章以外はチェロ・バス・ファゴットの指定があるのだが、ブライトコプフ版ではファゴットは全楽章(最後のアダージョを除き)チェロ・バスと同じ音符を演奏するようになっている。が、実際の録音では第三楽章までファゴットはまったく加わらない演奏も少なくなかった。個人的には、ファゴット・パートがチェロ・バスから独立するまでの曲については、緩徐楽章も含めチェロ・バスと重ねるべきではないかと思っている。

なお、今回下記のCDを図書館で借りてきた。発売された時に買おうかどうかずいぶん迷った演奏である。
●リープライヒ=ミュンヘン室内O(ECM/2007)
現代楽器だが一部古楽器的奏法を採り入れている。小編成で見通しの良いすっきりした響きが心地よい。が、醒めた演奏ではなく静かに熱く燃える演奏で、オーボエやホルンの浮き上がらせ方が素晴らしい。が、終楽章プレストで細かいダイナミクスや表情を付け過ぎるのが鬱陶しい。これがなければかなりの秀演と思う。管楽器のメンバーには、オーボエ:L.M.ナヴァロ、ホルンにはガーグ、マクウィリアムなども加わっている(終楽章で一小節早く吹き始める箇所もあるが)。なお、驚いたことにファゴットは編成から完全に省かれている。

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