ハイドン:交響曲第97番ハ長調

来月の演奏会でこの曲を演奏する。
交響曲第97番ハ長調は、1792年に作曲された4楽章からなる交響曲であり、第1回ロンドン旅行の折りに作曲された。初演は1792年5月3or4日とのことらしい。
12曲のロンドン・セットの中でも最も知名度の低い曲の一つと思う。またハイドンにとって最後のハ長調の交響曲。ハイドンのハ長調のシンフォニーと言えば第82番、第90番、そして、第95番の終楽章も「ジュピター」を思わせるハ長調で書かれているが、この第97番もハ長調特有の晴朗さに溢れている。楽器編成は、フルート、オーボエ、ファゴット、ホルン、トランペット各2、ティンパニ、弦5部。
第一楽章は、四分の三拍子、アダージョの指定がある13小節の序奏が付いている。なお、この序奏の音型はこの楽章の最後(240小節)において再現される。続くヴィヴァーチェは明るく快活な曲想。第二主題が出る直前はやや強引な(?)持って行き方もみられるが、第二主題は極めてエレガント。形式通りのソナタ形式で明るく第一楽章を終える。
第二楽章はアダージョ・マ・ノン・トロッポ。
ドーヴァー版(明記はされていないが慣用版のリプリントと思われる)では四分の四拍子となっているが、現在オケで使っているヘンレ版では二分の二拍子になっている。モーツァルトのピアノ協奏曲の緩徐楽章に例が見られる通り、おそらく作曲家の指定はアラ・ブレーヴェだったものを校訂者が書き直したものと想像される。実際に演奏してみても(指揮者は4つに振っているが)この楽章が二拍子で意図されたことは疑いない。
へ長調の親しみやすい主題に基づく変奏曲の楽章。数あるハイドンの交響曲の中でも緩徐楽章が変奏曲の作品は名曲が多い。この主題も優雅な変奏を繰り返していく。そしてヘ短調の変奏の後、Maggioreの指定がある第4変奏では、当時としては珍しいと言われる al ponticello(駒の近くで)の指定がある(ドーヴァー版には書かれていない)。
この曲の最大の特徴は第三楽章アレグレットにある。
この、レントラーを思わせるのどかで楽しいメヌエットには、ティンパニの強打以外にもいくつかの仕掛けが隠されている。通常、メヌエットはA-B(トリオ)-Aの三部形式で構成され、Aの部分はさらに二つに分けられ、それぞれが繰り返される。ところが、この楽章にはリピート記号が全くない。と言うより、普通は同じ楽譜が二回繰り返されるのだが、ここでは二回目が少し違った形の楽器編成でもう一度書き込まれている(リピート記号を使った場合の倍の小節分が書かれている)。
このような例は、第101番二長調「時計」の第3楽章トリオにも見られ、フルート・ソロのバックを務める弦楽器群の伴奏を一回目と二回目で変えるために、リピート記号を使わずハイドンはわざわざ倍の量を書き込んでいる。実はこの第97番の第二楽章で既にこの書法は用いられている。
トリオはオーボエとファゴットの優雅なデュオ。注意して聴けば伴奏が一回目と二回目で異なっていることが分かる。そして、トリオ後半の二回目では1stヴァイオリンがオクターヴ上げたメロディを弾く。初演時コンサートマスターの席に座ったザロモンのために、ハイドンがスコアのこの箇所に<Salomon Solo ma piano ; solo for Salomon,but played softly!>と書き込んだそうである。
第4楽章はプレスト・アッサイ。弾むようなモティーフが繰り返されるロンド-ソナタ形式。いかにもハイドンのフィナーレという感じで、軽妙洒脱で生き生きとした躍動感を持っている。そして曲の終わる直前、プレストは失速し二回停止する。個人的な想像だが、この最後のフェルマータの箇所でハイドンは曲が終わったかのように指揮したのではないだろうか・・。そして聴衆が当惑する間、一呼吸置いてからア・テンポ、フォルテで曲を終えたのではないかと思えてならない。
第90番終楽章での偽終止は有名だが、第97番の終楽章をそのように演奏したディスク(7種類しか聴いていないが)は私の知る限り未だない。が、実際のコンサートであればそのような演出も一興と思う。何しろ、ハイドンは聴衆を喜ばせるために音楽を書いたのだから。

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