ヘンゲルブロック/=NDRエルプ・フィル/ブラームス4番

ハンブルクに新しくできたエルプ・フィルハーモニーで昨年11月に録音されたヘンゲルブロック=北ドイツ放送エルプ・フィルハーモニー管弦楽団によるブラームス3・4番のCD(SONY)を図書館で借りてきた。
第4を聴き始めてびっくり。作曲者自身によって削除された4小節の序奏が演奏されている。
この「幻」の序奏の存在は知っていたが、実際に聴くのは初めて。本CDには木幡一誠氏他による詳細なライナーノーツが付いているので以下に抜粋する。

4小節の導入楽句は、第一楽章の最終小節を記した余白の部分にブラームスが作品全体を書き終えてから付け加え*、その後に自ら斜線で削除の指示を与えたものであり、
http://www.omifacsimiles.com/brochures/brahms_sym4.html
1886年10月にジムロックから刊行された初版譜およびそれ以降の出版譜は、当然ながら削除された形だ。ブラームス新全集版の編纂者ロバート・パスコールは、この導入楽句の作曲は初演に先立つ1885年9月から10月上旬と見なした上で、書簡などの状況証拠からするに、最終的な削除の判断がなされたのは遅くとも1885年の11月4日と推測。1885年10月25日にマイニンゲンで行われた初演のリハーサル段階で音にされた可能性は高いが、実際に初演の場で採用されたかどうかは特定できないとの見解も示している(新全集ヘンレ版に収められた序文での記述)。そしてこの交響曲が1886年2月1日にベルリンで初披露された際の指揮者がヨーゼフ・ヨアヒム。ブラームスとの間に交わされた書簡の文面から、彼が第1楽章の始まり方に大手を振って賛成はしていなかったことが伝わってくる。

*そこで管楽器が吹き重ねる和音進行は、イ短調の和音(Eが根音なので四六の和音)にホ短調の主和音が続くいわゆるプラガル終止、これは第1楽章を終結に導くカデンツと同一の形である。


そして、ヘンゲルブロック自身がこの異稿の採用について下記のように語っている。
「ブラームスの自筆譜には冒頭楽章に先立つものとして4小節の導入楽句が残されています。それが第1主題に対して幕を切って落とす役割を果たすのですが、出版譜に印刷されることはありませんでした。その理由はおそらく・・、交響曲第3番の導入とは異なり、続く楽章主部の流れに関連する構造的な重要性を持っていないからでしょう。しかし、ヨーゼフ・ヨアヒムはブラームスの措置を惜しみ、この導入楽句を演奏に用いました。私も同感です。その存在が、印刷譜の形ではどこか茫洋としたままの開始部分に、ある種の重みを与えると思うのです。」

百聞は一聴に如かず。
YouTubeにヘンゲルブロックのコンサート映像があった。
https://www.youtube.com/watch?v=_DHOZWiTx9w

以上、第4交響曲序奏については、フィガロ序曲中間部のシチリアーノ
http://zauberfloete.at.webry.info/200906/article_6.html
と同じくらいのインパクトがあったが、終楽章パッサカリアについてのヘンゲルブロックの発言もひじょうに興味深いものがあった。以下抜粋。
「バロック時代の記録を読むと、パッサカリアという楽曲は葬送の場で演奏されることがあり、そこでは埋葬される人間の生きた軌跡が、各変奏を通じて音楽的に蘇ると信じられていたのです。このパッサカリアから、ブラームスの全人生が今一度、私たちの眼前を通り過ぎていくような思いすら抱かされます。」

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