ヴィオローネ

ヴィオローネと言えば、コントラバスにつながる大型低音楽器と単純に考えがちだが、必ずしもそれだけではなかったらしい。まずWikipediaを見てみる。
ヴィオローネ(伊・独:Violone)は、ヴィオール属の擦弦楽器で、16~18世紀頃ヨーロッパで用いられた古楽器。
ヴィオラ・ダ・ガンバと同属の最低音域楽器であり、コントラバスの先祖に当たる。 バロック音楽の頃には通奏低音として盛んに用いられ、小規模なアンサンブルでは現在のチェロのような役割として低音部の旋律を、やや大規模なアンサンブルやオーケストラでは、チェロとともにその8度下(オクターブ・ユニゾンという)を演奏する、現在のコントラバスの役割を担った。現在も古楽系の楽団において、復元楽器が使用されている。

ということなのだが、問題はその次。
ウィキペディア英語版では、「チェロのサイズのヴィオローネ」、「チェロよりやや大きめのヴィオローネ」の存在も確認されているが、こちらを使用する場合は一オクターブ下ではなく実音を演奏する。ヴィオローネといえばコントラバス、という常識がなかなか覆らなかったために、ヴィオローネのパートは長い間一オクターブ下げた深く重い音でどっしりと演奏されていたが、最近の古楽考証により小ぶりな音色と実音で演奏されている録音も増えつつある。

とあり、実音で弾かれたヴィオローネもあったとのこと。
そこで思い出すのがバッハ:ブランデンブルク協奏曲第6番。この曲の編成は第1・2ヴィオラ・ダ・ブラッチョ(腕のヴィオラ)、第1・2ヴィオラ・ダ・ガンバ、チェロ、ヴィオローネ/チェンバロというもの。ヴィオローネ・パートは基本的にチェロと同じ動きをしており、一般的には一オクターヴ下の音を弾くと考えられている。ところが、第三楽章の最後の小節の後半では突然、オクターヴ下の記譜(A↗B↘D↗F↘B)がされており、特に最後のBのオクターヴ下は現代の五弦コントラバスの最低音より低い音になってしまう。
ということは、この曲のヴィオローネ・パートは実音でチェロとほぼ同じ音域を想定していたということになる。
(以上の項、佐伯茂樹著「楽器から見るオーケストラの世界」(河出書房新社/2010)を参考にさせていただいた)

さて、ヴィオローネには大別して二種類の楽器があるという。下記のサイトに詳しい話が載っている。
http://daizobass.web.fc2.com/What_is_violone/index.html

それでは、ハイドンの場合はどうか。以下もWikipediaから引用してみたが、まず、交響曲第1番についての説明。
交響曲第1番ニ長調は、フランツ・ヨーゼフ・ハイドンの交響曲。「第1番」の番号が付けられているものの、最初に書かれたものではなく、1757年ごろの作とされるが、正確なところは不明である。それ以前の可能性もある。
楽器編成
オーボエ2、ホルン2、第一ヴァイオリン、第二ヴァイオリン、ヴィオラ、通奏低音(チェロ・コントラバス・チェンバロ・ファゴット) 音楽学者のランドンは「ハイドンが想定した編成」を勝手に思いついて全集スコアに何の注釈も無く記しており、通奏低音を含んだ上記はその編成である。しかし、実際にハイドンが想定した編成は、クラシカル・オーボエ2、ナチュラル・ホルン2、クラシカル・第一ヴァイオリン、クラシカル・第二ヴァイオリン、クラシカル・ヴィオラ、A・ヴィオローネ(チェロサイズとコントラバスサイズの中間)の8人編成であった可能性が指摘されている。モルツィン伯爵家ですら、ハイドンはもっぱら第一ヴァイオリンの担当であり、チェンバロやフォルテピアノは用いていない。
ハイドンは、自筆譜に指定されたヴィオローネの音部記号を、二種類使い分けていることが判明している。オクターブ下を弾くか、実音を弾くかの違いであると見られる


続いてチェロ協奏曲第2番ニ長調について。
ハイドンは1761年から1790年にかけて、ハンガリーのニコラウス・エステルハージ侯に仕えていた間に、数曲のチェロ協奏曲を作曲したといわれている。しかし規模や内容の点で、有名な第1番と第2番が際立っており、一般にハイドンのチェロ協奏曲といえば、この2曲を指すのが普通である。第2番は20世紀の中ごろに、第1番が発見されるまでにハイドンの唯一のチェロ協奏曲として知られていた。第2番はハイドンの作曲の弟子で、チェロの名手としてエステルハージ侯の楽団で活躍していたアントン・クラフトのために書かれたという。クラフトの息子であるニコラウスが「自分の父が本当の作曲者だ」と証言したことによって、一時は偽作説まで流布したが、ハイドン自身の手稿譜が1954年にウィーンで発見されたため、現在この偽作説は否定されている。
楽器編成
独奏チェロ、オーボエ2、ホルン2、弦五部。これは出版譜に記された編成。
当時は考証が全く行われていなかったために、「勝手に想像して」出版社がこの編成に仕立て上げていた。現実に自筆譜に記されていたのは、オーボエ2、ホルン2、第1ヴァイオリン、第2ヴァイオリン、ヴィオラ、独奏チェロ、そしてヴィオローネ・グロッソの9人編成であることが判明している。この事実は、自筆譜が発見されるまで知られることはなかった。
演奏方法等のコメント
エステルハージの雇った弦楽器奏者の数はこれよりは多く、必ず9人で演奏しなければならないということはない。作曲当時「弦五部」という概念は、まだ存在していなかった。ただし、この協奏曲が西洋音楽史上初の、弦楽パートが5部に独立した楽曲である可能性はある。
第3楽章につけられた「solo」というただし書きは、主題がチェロのみで演奏されることを意味し、弦五部の中のsoloという意味ではない。もともと編成に1人しかいないため、「チェロ独奏」と「そのほかの複数のチェロ」という近代編成の作品ではない。
Bassiというのは楽器奏者の数が複数いるという意味ではなく、ヴィオローネの弦の数を意味する。当時コントラバスの弦の数は3本、ヴィオローネ・グロッソの弦の数は6本である。つまり、ヴィオローネ・グロッソをBassiと指定したのである。音部記号は第1楽章と第3楽章に鉤のようなものがついているが、これは1オクターブ下げるという意味である。第2楽章は実音で奏される。

なお、IMSLPに自筆ファクシミリがあるが、上記のような判別はできなかった。
http://conquest.imslp.info/files/imglnks/usimg/b/b1/IMSLP93598-PMLP18850-Haydn_-_Cello_Concerto_in_D_Major_Hob7b2_Op101_manuscript.pdf
また、ヴィオローネには大別して二種類の楽器があるという説明が載っていたサイトを見ると、小型と大型両楽器とも6弦と書かれている。第二楽章では小型の楽器に持ち替えるという指示なのだろうか・・・。

以上、引用ばかり長くなってしまったが、いずれにしてもヴィオローネには少なくとも二種類の楽器(チェロに近いものとコントラバスに近いもの)のが存在したということは事実なのだろうと思われる。

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