モーツァルト:コンサート・アリアK538 ~その2 聴き比べ~

モーツァルト:コンサート・アリア「ああ、恵み深い星々よ、もし天にあって」K538 のいくつかの録音を聴いてみた。
http://zauberfloete.at.webry.info/201404/article_4.html
この曲はヘ長調のトゥッティで開始され、24小節からソプラノのソロとなるが、38小節からの転調でハ長調となり、途中一時ハ短調を経てずっとハ長調の音楽が続く(115小節からはまさに「後宮」の音楽)。そして122小節から無理やり(?)変ロ長調に寄せていき、133~134小節あたりでやっと最初のヘ長調に戻ってくる、という構造になっている。
ということで全212小節のこの曲、ヘ長調よりハ長調の占める割合の方が多くなっているのは別としても、37、8小節あたりからのヘ長調からハ長調への転調の仕方(ファゴットのE→Cis→Aという動きが素晴らしい)、前述122小節からのハ長調から変ロ長調を経由したヘ長調への戻し方、トゥッティの前奏19小節のHのユニゾン、75小節のソプラノのBに対するオケのCisのユニゾンなど、大胆な手法が随所に見られるのも一つの特徴と思う。
さて、家にあったCDは下記の7種類。実はもう一枚、テレサ・シュティヒ=ランダルが歌ったEMI盤(1955)もあったのだが録音状態があまり良くなかったので除外した。

○リタ・シュトライヒ/マッケラス=バイエルン放送響(DG/1960)
 全般に遅めのテンポ。シュトライヒは歌詞をクリアに発音しメリハリのきいた存在感のある歌唱。
○クリステティーヌ・ヴィットレーゼ/ギーレン=南西ドイツSO(ALLEGRIA/1960年代?)
 重めの歌唱で歯切れは悪い。技巧的に不十分ではないがやや歌い過ぎという印象を受ける。
○クリスティーナ・ラーキ/フィッシャー=ウィーン室内O(DECCA/1980・81)
 線はやや細いが伸びのある声で、軽やかな歌唱は美しい。
●エディタ・グルベローヴァ/ハーガー=モーツァルテウムO(DG/1980・81)
 伸びやかで艶やかな声はひじょうに美しく、ハリのある表情は素晴らしい。
●エディタ・グルベローヴァ/アーノンクール=ヨーロッパ室内O(TELDEC/1991)
 10年前の録音に比べると、声の重心がほんのわずか下がったような感じも受けるが、艶やかさは健在で表情はさらに深く、アーノンクールの指揮も相俟ってドラマチックな音楽となっている。ライブ録音とは信じがたい水準の高さ。
○クリスティアーヌ・エルツェ/ヘンヒェン=C.P.E.バッハ室内O(BERLIN Classics/1993)
 どちらかというと暗め/重めの声だがテクニック的には十分でそこそこの歌唱。
●ナタリー・デセイ/グシュルバウアー=リヨン歌劇場O(EMI/1994)
 軽々と発声しているかのような、しなやかで突き抜けるような歌唱は圧倒的に見事なもので、そして限りなく美しい。
▲シンディア・ジーデン/ブリュッヘン=18世紀O(Glossa/1998)
 ピッチはやや低めだが、幅広く優しい声、軽さもあり丁寧で格調も高い。

ということで、グルベローヴァとデセイは群を抜いて素晴らしかった。また、ジーデンの地味ながら優れた歌唱も捨て難い。
なお、この曲の65、118,120,151,156,198小節などに見られるソプラノ・ソロのアポジャトゥーラは、ラーキ以前の録音ではどれも考慮されておらず、すべて「楽譜通り」に歌われていた。

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