ロッシーニ:「主題と変奏」

ロッシーニ作曲の「主題と変奏」というと、普通は「クラリネットと管弦楽のための序奏、主題と変奏 変ロ長調」(1810)のことを指すのかも知れない。また、他にも「クラリネットと管弦楽のための変奏曲 ハ長調」(1809/1810)という曲もある。
さて、今回採り上げるのは上記のいずれでもなく、一般的には、フルート、クラリネット、ホルン、ファゴットのための四重奏曲の中の第6番と呼ばれている曲である。
以下、ロッシーニ:弦楽のためのソナタ、およびその管楽四重奏編曲版などに関する年表を作成した。

○1792年 ロッシーニ、イタリア ペーザロに生まれる
○1794年 フリードリヒ・ベール(管楽四重奏版編曲者)、マンハイムに生まれる
○1804年 ロッシーニ、パトロンであったアゴスティーノ・トリオッシのために三日間で「弦楽のためのソナタ」全6曲(ヴァイオリン2、チェロ、コントラバスという編成)をラヴェンナで作曲、初演 →その後オリジナルは失われる
○1806年 ロッシーニ、ボローニャ音楽院入学
○1812年 ロッシーニ、「管楽四重奏のための主題と変奏」を作曲
○1825/1826年 通常の弦楽四重奏に編曲(ロッシーニ自身の編曲という説もある)された「弦楽のためのソナタ」が、ミラノのリコルディから出版(オリジナルの第3番/ハ長調はカットされた5曲セット)
○1828/1829年 パリとマインツで、上記弦楽四重奏版を基に、フルート、ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロの編曲版が出版される 
○1828/1829年 パリとマインツで、上記弦楽四重奏からの編曲版として管楽四重奏版(ベール編曲/6曲セット)が出版される 
*6番目の作品として「Tema con variazioni per quattro strumenti a fiato(四つの管楽器のための主題と変奏)」が含まれている
○1838年 ベール没
○1868年 ロッシーニ没
○1872年 「弦楽のためのソナタ」手稿譜を、ロッシーニ未亡人がマンツォーニという人へ贈る
○1954年 アルフレート・カゼッラにより、ワシントン図書館で「弦楽のためのソナタ」手稿のパート譜*が発見される
○1977年 ドブリンガーから「弦楽のためのソナタ」出版される

ということで、「弦楽のためのソナタ」の手稿譜が再発見されるまでは、この曲は、弦楽四重奏、管楽四重奏として知られていたということである。
弦楽四重奏版からはオリジナルの第3番が除かれており、それを基にベールが編曲した管楽四重奏は全5曲だったため、出版時にロッシーニのオリジナルである「主題と変奏」が追加されたというのが現在の一般的な定説となっている。
しかし、マイケル・トンプソン管楽四重奏盤 (NAXOS/1996)の解説を書いているジョン・ハンフリーは、編曲スタイルが他の5曲と一致している、ロッシーニが1812年になぜ突然このような作品を書いたか説明し難いなどから、この作品は、ロッシーニがオペラの一部など他のアンサンブルのために書いた曲をベールが編曲したのではないかと推測している。
(*8/29追記:ベーレンライター版のPREFACEには、Bibliotheque nationale de Franceに保存されている作曲者自身の手稿譜についての記述があるため、この曲がロッシーニのオリジナルであることは疑いない。ただし、1812年という作曲時期については疑問視されている。)
また、パリ・クァルテット(アリニョン、オダンなど)盤(PIERRE VERANY/1996)の曲名表記では、四重奏第1番~第5番に加えて、Tema con variazioni per quattro strumenti a fiato の表記があり、さらにそのトラックは次のように分かれている(通常は、アンダンテ、主題と変奏の2トラック)。
①Andante 冒頭(アンダンテの開始)、八分の六拍子
②Allegretto 主題(テーマ) 四分の四拍子
③Poco meno ファゴットによるヘ短調の第四変奏(なお、ここで遅くするのは普通のやり方だが楽譜にはこのような指定は特にない)
なお、ここでの「アンダンテ、主題、変奏」の全部をまとめて、Tema con variazioni per quattro strumenti a fiato と呼ぶのか、あるいはこの「アンダンテ」は独立しているのか、はっきりとはわからない。
しかし、いずれにしても他の5曲に比べこの曲が、各楽器の使い方、旋律の美しさなどの面において優れていることは疑いない。

*手稿のパート譜には、ロッシーニ自身による以下のような書き込み(作曲よりずっと後になってから書き込んだと考えられている)があったという(佐藤章氏訳による)。
私がまだ通奏低音のレッスンさえ受けていない、ごく若い頃に、私の友人でありパトロンでもあったアゴスティーノ・トリオッシの(ラヴェンナに近い)別荘で作曲した6曲の「ひどい」ソナタの第一ヴァイオリン、第二ヴァイオリン、チェロ、コントラバスのパート譜。これらの曲はすべて3日間で作曲、写譜され、トリオロッシ(コントラバス)、トリオロッシの従兄弟モリーニ(第一ヴァイオリン)、モリーニの弟(チェロ)、私自身の第二ヴァイオリンによって、きくにたえない演奏が行われた。実をいえば、私自身がグループの中では一番ましだった。

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