「CDでわかるクラシック入門」

「名曲・名演の違いを探る!」というサブタイトルが付いていおり、2011年4月にアルク出版企画/ナツメ社より出版されている。77分収録のCD付きで価格は1580円。広上淳一監修となっているが、佐伯茂樹、早川元啓、佐藤美代子、柴辻純子各氏が執筆している。「入門」とはなっているが、A5サイズで250ページと内容的には大変充実しており、私のようなマニア(?)でも十分楽しむことができた(と言うより勉強になった)。
PARTⅠは、ベートーヴェンの「運命」交響曲を素材にしたクラシック音楽の仕組み(音楽記号、速度標語、強弱記号などの約束事、楽器と演奏に関する知識など)、PARTⅡは「名曲」でわかるクラシック音楽(音楽のかたち、約束ごと、楽器と演奏の知識、音楽の歴史)についてそれぞれCDと連動した詳しい解説が行われている。
各項目が独立しているのでどこからでも読めるし、知っている話は読み飛ばしても良い。以下、個人的に勉強になった箇所を抜き書きする。
○fp と sf はどう違う?
場合によっては同じように聴こえることもあるが、ベートーヴェンは、「前後に関係なく絶対的なfp(「運命」交響曲第四楽章64小節)」、「前後はfで相対的に突出するsf(「運命」交響曲第四楽章74小節)」のように使い分けている。
○ブラームス交響曲第3番第二楽章64小節に出てくる pf
ピアノ・フォルテではなく、poco f (ポコ・フォルテ=ちょっとフォルテ)を略したもの。
○mezza と sotto
ブラームス交響曲第3番第一楽章36小節:mezza voce
ブラームス交響曲第3番第一楽章149小節:sotto voce
sotto voceは「ひそやかに」、mezza voceは「やわらかに」であり、mezzaは直訳すると「半分」。
→結論としてmezza voceの方を弱くするということなのかどうかわからない。
○「幻想交響曲」第四楽章冒頭で、ティンパニが6つの音を叩くが、通常は両手で叩くところを「右手で6個音を叩く」よう指示がある。
→スコアを確認したところ、確かに何か書いてあるのだが意味はわからなかった。以前にベルリン・フィルで観た映像は正しい奏法だったことになる。
○速度の程度にかかる副詞
meno ⇔ piu は知っていたが、non troppo(やりすぎず)の反対は assai(十分に)とのこと。

なお、「田園」のティンパニの出番が第三、四、五楽章となっていたり、「ボレロ」の第二番目のソロ楽器(クラリネット)の塗りつぶしがまちがっていたりと細かいミスは何箇所かはあるものの、これだけの情報量でありながら明らかなミス(誤植や間違い等)が他にほとんどないことは、かなり丁寧に作られた本であるということがわかる。
なお、付録についていたCDの中のカラヤン=フィルハーモニア管弦楽団のベートーヴェン:交響曲第5番(全曲)のみを聴く。1954年11月にロンドンでEMIに録音された疑似ステレオの音源。私は初めて聴いたが、録音はかなりの古さを感じるが演奏はまぎれもなくカラヤンのもの。第一楽章196小節からの二分音符による管と弦の掛け合いがほとんどテヌートしていない点を除いて、他の解釈は後年のカラヤンの演奏とほとんど同じと思う。参考までに1976~77年に録音されたベルリン・フィルと2回目の録音の演奏時間を以下に記す。
1954年録音:Ⅰ7:14/Ⅱ 9:40/Ⅲ 4:59/Ⅳ 8:46
1976年録音:Ⅰ7:08/Ⅱ 9:27/Ⅲ 4:36/Ⅳ 8:38
約20年後の演奏の方が全体で約50秒ほど短縮されてはいるが、各楽章のプロポーションはほとんどと言って良いほど相似形が保たれている点は驚嘆に値する。

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