「証言・フルトヴェングラーかカラヤンか」

最近読んだ本の中では飛び抜けてエキサイティングで興味深いものだった(川口マーン惠美著、新潮選書から2008/10/24刊)。
このタイトルを聞いた人は、1987年に出版されたヴェルナー・テーリヒェン(高辻知義による日本語訳は1988年音楽之友社刊)の著作を思い出すだろう。
この本は、下記の元ベルリン・フィル楽員(注:ヴァツェルは現役奏者)たちにインタビューした内容をまとめたもの。テーリヒェンには2回、ハルトマンには3回インタビューしたとのことで全部で14章構成になっている。なお、●印はフルトヴェングラー時代からの楽員、○印はカラヤン時代になってからの楽員である。
●ヴェルナー・テーリヒェン
●ハンス・バスティアーン
●エーリッヒ・ハルトマン
●ギュンター・ピースク
○ディートリッヒ・ゲアハルト
○カール・ライスター
○ルドルフ・ヴァツェル
○ルドルフ・ヴァインスハイマー
●ライナー・ツェペリッツ
●エーバーハルト・フィンケ
○オスヴァルト・フォーグラー
とにかくオケの中の人の話というのは面白い。ベルリン・フィルの楽員からみたフルトヴェングラーやカラヤンの体験談、およびオーケストラや音楽についての話というのは、ライスターの著作と上記テーリヒェンの著作以外には存在しなかったと思う(一部、ゴールウェイやシュテルンの著作もあったが)。もし上記のうち、3人以上の名前を知っている人は直ぐに書店にこの本を買いに行った方が良い。

著者は、シュトゥットガルト国立音楽大学大学院ピアノ科卒業、シュトゥットガルト在住。著書に「フセイン独裁下のイラクで暮らして」(草思社)、「母親に向かない人の子育て術」(文春新書)などがあるとのこと。昨年の11月からいきなり本人に電話してインタビューを申込み、断られたり受け入れられたりなどを繰り返し、今年の9月までインタビューを続け、出版にこぎつけたという。その間この4月にテーリヒェン氏は亡くなっている。
もともとこの企画自体は、新潮社の編集部によるものらしい。
熱烈なフルトヴェングラー支持者だったテーリヒェン氏は別として、フルトヴェングラーとカラヤンの両方を知る当時のベルリン・フィルの楽員たちがどう感じていたのか、それを知りたいということで始まったのだとは思うが、結果的にその目的は達成されたのだろうか?その意味で誰にインタビューするかは重要な意味があると思うのだが、結果的にインタビューに応じてくれなかった人もいたらしいので、当初の意図(があったかどうかわからない)が十分に反映されているとも言い難いと思う。
この本の中では、もちろんそれぞれ楽員の体験談は語られているのだが、フルトヴェングラーとカラヤンについて語ることはできても、どちらを採るかというのは結局のところ、読者もしくはその音楽を聴いた人自身が判断することになるのだろう。

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