シベリウス:交響曲第6番~2つのカラヤン盤聴き比べ~

2つのカラヤン盤(オケは両方ともベルリン・フィル)の聴き比べを行った。
なお、カラヤンはフィルハーモニアOと、1955年7月にこの曲の最初の録音をEMIに行っているが私は未聴である。
ベルリン・フィルとの2つの録音データは下記の通り。
●DG盤 録音:1967年4月/ベルリン・イエスキリスト教会/エグゼクティブ・プロデューサー:O.ゲルデス/プロデューサー:H.ヴェーバー/バランス・エンジニア:G.ヘルマンス
演奏時間:Ⅰ(8:27)/Ⅱ(6:01)/Ⅲ(3:17)/Ⅳ(9:19)
●EMI盤 録音:1980年9月/ベルリン・フィルハーモニー/プロデューサー:M.グロッツ/バランス・エンジニア:W,ギューリッヒ
演奏時間:Ⅰ(9:17)/Ⅱ(6:20)/Ⅲ(3:32)/Ⅳ(9:45)
前回、第四楽章だけ聴き比べた時には気づかなかったのだが、今回データを調べてみて、DG盤の方が全ての楽章で演奏時間が短いことが比較してみてわかった。
http://zauberfloete.at.webry.info/200608/article_23.html
それはともかく、13年間の隔たりがありながら全体のコンセプトがあまり変わっていない(と私には感じられる)のは前回書いた通りである。
ただし、DGとEMIの録音の違いのせいか、聴感上のオケの音色はかなり異なっている。同時に今回あらためて感じたのは、同じベルリン・フィルとはいえ、個々のトップ奏者が異なっていることがこの2つの演奏の色づけの違いに大きな影響を与えているということ。2つの録音の各パート奏者は下記の通り(いずれもトップ奏者、オーボエ以外は「おそらく」、前者がDG盤、後者がEMI盤)。
フルート:ツェラー(中音域は甘くしっとりと、高音域は派手ではないが華麗な音色、やや突出気味)/ブラウ(堅実で地味、溶け合い方は素晴らしい)
オーボエ:シュタインス(柔軟性に富み、艶やかによく歌う)/コッホ(徹底したドイツスタイル、この上なく美しい音色)
ティンパニ:テーリヒェン/フォーグラー(粒立ちのよい音と極めて思い切りのよいダイナミクス、終楽章は凄い)
トランペット:誰だかはわからないが、アイヒラーらの時代からグロート、クレッツァーに代替わりしていることは確実。録音バランスの違いもあるが、聴こえ方はかなり異なる。DG盤はやや鋭いのに対し、EMI盤は包み込む柔らかさ。
あと、ハープのバランス。この曲のハープは単なる飾りではなく、ひじょうに重要な楽器(だと私は思っている)。両方の録音とももっと前面に出て欲しかったが、どちらかと言うとDG盤の方がやや前に出ている。
さて、聴き比べて最も違うと感じたのは第一楽章冒頭。私EMI盤を先に聴いてからDG盤を聴いたのだが、一聴して、DG盤の方が録音時期が古いにもかかわらず、クリアというかピントが合っている感じがした。パワーアンプが温まったせいもあるかも知れないが、もともとDGの録音はシステムのグレードが上がるほど弦楽器の硬さが取れてくる傾向にあるので、さらに良い装置で聴けばもっと弦は艶やかになるだろう。ちなみに私が持っているDG盤はオリジナル盤で、OBIPのりマスター盤ではない。
練習番号Bの前までは、テンポもDG盤の方がゆっくり目で表情も濃い。ただ、ティンパニの音だけは全楽章を通じ、EMI盤の方が奏者の違いか硬い撥なのか皮の張りが強いのか一音一音の打点がはるかにクリアに聴こえ心地良い。
第二楽章以下は上記、各楽器の音色の違い以外にはあまり目立った違いは感じられなかった。あえて指摘すれば第三楽章の終わりあたりの金管のバランスが微妙に異なるくらいか・・。終楽章はDG盤の方が熱い。が、前回も指摘した通り、EMI盤の内に向かう静かな燃焼も心に迫る。
ということで、総合的にどちら?と訊かれそうだが、冬の終わりの春が近い時、音楽とまともに対峙して聴く元気がある時、そしてシステム(ステレオ)のウォーミング・アップも十分終わり、万全の音が聴けそうな時はドイツ・グラモフォン盤、秋から冬に向かう季節、ちょっと心がグレーな時はEMI盤ということになるだろうか・・。

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