クリスチャン・メルラン「オーケストラ」

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クリスチャン・メルラン著、藤本優子・山田浩之訳、みすず書房から2020年2月に出版されている。
https://www.msz.co.jp/book/detail/08877.html

https://www.amazon.co.jp/%E3%82%AA%E3%83%BC%E3%82%B1%E3%82%B9%E3%83%88%E3%83%A9%E3%83%BC%E2%80%95%E7%9F%A5%E3%82%8A%E3%81%9F%E3%81%8B%E3%81%A3%E3%81%9F%E3%81%93%E3%81%A8%E3%81%AE%E3%81%99%E3%81%B9%E3%81%A6-%E3%82%AF%E3%83%AA%E3%82%B9%E3%83%81%E3%83%A3%E3%83%B3%E3%83%BB%E3%83%A1%E3%83%AB%E3%83%A9%E3%83%B3/product-reviews/4622088770/ref=cm_cr_dp_d_show_all_btm?ie=UTF8&reviewerType=all_reviews

「知りたかったことのすべて」というサブタイトルがついているが、本書の内容は一般の方が「知りたかったこと」なのかどうかは個人的にはやや疑問。
徹底的にオーケストラの個々の楽員(すべて実名で登場する)にこだわった内容になっている。これだけの数のオーケストラ楽員(加えて一部指揮者)の実名が出てくる(内情暴露)本は空前絶後だろう。
私のようなマニアにとっては、ひじょうに興味深い内容で面白かったが、普通の音楽好きの方々にとってはここまでの内容はやや冗長過ぎるのではないかと思う。500ページを超える大著で価格も6000円(税抜き)と半端でない。一部の事実誤認/誤訳(?)と著者の独断も気にはなったが本書の価値を低下させるものでもない。

以下、気になった箇所(書き出したらキリがないが)を一部抜粋する。
○元バイエルン放送響首席ホルンのリツコフスキーは自分のパートをアシスタントに交替することを潔しとしなかった。
○ニース交響楽団のトランペット・ソロのオーディションに審査委員長として招かれたWPhのヨゼフ・ポムベルガーは、実力の拮抗した二人の候補者が残った時に、ウィーンで一般的な解決策を提示した。ーーーひとりずつ交互にワーグナー:「パルジファル」前奏曲のppソロと、リヒャルト・シュトラウス「アルプス交響曲」のppソロを続けて演奏させ、二人のどちらかが失敗するまで同じことを繰り返す。
○ニューヨーク・フィルはクラリネット・ソロのスタンリー・ドラッカーの後任として、礼を尽くしてリカルド・モラレスをフィラデルフィア管弦楽団から引き抜いた。
○1950~1975年までのパリ音楽院の学生と家庭環境の関係に関する統計によれば、弦楽器奏者の41.6%が管理職か高度な知的職業の家庭の出身者であるのに対し、金管楽器奏者の場合は14.5%、木管楽器奏者は28%となっている。
○(BPh)ヴィオラ・ソロのダヌーシャ・ヴァスキエヴィチやキャリー・デニスは試用期間を終えても採用されなかった。
○WPhにおいては、たとえ能力に一切の衰えがみられなくても、ホルン・ソロは50歳になった時点で降格となる。
○(WPh)ホルン奏者のフランツ・ゼルナーは自宅で転倒した時に顔を打ち歯で下唇の神経を切断したために、演奏家としてのキャリアを断念せざるを得なかった。
○(BPh)ティンパニ奏者ゼーガースの場合は、蝶類にかける情熱の方が強いというのが実情で、世界でも有数の蝶のコレクションを有している。
○クラウディオ・アバドは、なぜ若者たちのオーケストラの指揮が好きなのかと問われ、「この曲はこれまでこう演奏してきた、などと言わないからだ」と答えている。
などなど、まだ全体の半分のページにも至っていないのだが、その人を知らない人にとってはどうでも良いような話も多い。

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この記事へのコメント

マイスタ-フォ-ク
2020年06月21日 08:38
面白い本ですね。

私にプレビンが編集された同じような本がありました。

ひと昔前のLondon近辺の楽員の暮らしから指揮者との駆け引きまで面白かったです。

大陸の様子もです。

ところで最近ゼ-ガ-スがバイエルンで演奏してましたがトラですかね..

ドラッカ-にかなり昔、レッスン受けましたがモラレスとは対照的ですね(笑)
Zauberfloete
2020年06月22日 17:01
マイスターフォークさま
コメントありがとうございます。
プレヴィンの本は「素顔のオーケストラ 」でしょうか?
今度探してみます。
ゼーガースはヤンソンス=バイエルン放送響の来日時にも出演していました。
BPh定年退職後はどうしているのでしょうか。