シューベルト:交響曲第8(9)番第一楽章序奏のテンポ

ラルフ・ヴァイケルト著/井形ちづる訳「指揮者の使命~音楽はいかに解釈されるのか~」(水曜社/2019.9)という本を読んでいたら、「スコアへのアプローチ」の章、「テンポと拍子」の節で、下記のような記述があった。

交響曲ハ長調「ザ・グレイト」第1楽章では、序奏のアンダンテがアラ・ブレーヴェであることは長い間知られていませんでした。なぜなら旧全集ではアラ・ブレーヴェではなく4分の4拍子と書かれていたからです。このためこの序奏は4分の4拍子で振られていましたし、今日でも時おり4拍子で振られ、あまりにゆっくりと演奏されましたし、されています。そうすると、主部のアレグロ・マ・ノン・トロッポに達するためには、ダイナミックなクレッシェンドだけでなく強いアッチェレランドをかけなければなりません。これは楽譜の読みとしてもテンポとの関係性においても完全に間違っている思います。ここでもコントラバスの付点音符の伴奏音型が主部の付点のリズムをあらかじめ示し、それと渾然一体となっており、アッチェレランドをかけない時にのみ、その意味がわかります。その後の管楽器の3連符は必然的に、序奏の弦楽器の3連符に対応しています。
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私はこれまでモーツァルトの楽曲における序奏と主部の関係性についてはいろいろと考えてきたが、この曲に関してはあまり気にしたことはなかった。しかし、言われてみるとまったくその通りだと思うし大いに納得した。

さらに、「モーツァルト」の章では、交響曲イ長調K201の第一楽章アレグロ・モデラートについて、
古いオイレンブルク版ではまだ4分の4拍子になっていますが、モーツァルト新全集では本来のアラ・ブレーヴェが復活しています。このことはテンポばかりでなく、その楽章の性格にも重大な影響を与えました。この「モデラート」という指示は、4分の4拍子にではなく、アラ・ブレーヴェに向けられているのです。

とした上で、著者がこの曲をアラ・ブレーヴェで振った時の、それを聴いたベームとのやりとりが下記のように書かれている。

ベームは私を人影に連れて行き、まさに懇願するように「ねえ君、第1楽章は4つ振りすべきですよ!」と言いました。私は彼にいろいろな版の現状を説明しましたが、彼は「いいですか、私はモーツァルトをどう振るべきか知っている唯一の人間です。このことを疑問に思う人は誰一人としていませんよ!」と言って、私の論証を消し去りました。

あと、この本にはモーツァルト:歌劇「ドン・ジョヴァンニ」序曲の序奏と主部に関する記述もある(次回に続く)。

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