川口成彦インタビュー

「レコード芸術」2019年3月号に、昨年行われた第1回ショパン国際ピリオド楽器コンクールで2位に入賞したフォルテピアノ奏者 川口成彦氏のインタビューが掲載されている。フォルテピアノとの出会いに関して、最初はモダンピアノを弾いていたが、古典派の演奏スタイルがよくわからなかったという。以下抜粋引用。

フォルテピアノに出会ったのは大学2年生のときです。先輩にフォルテピアノがおもしろいと勧められて副科の実技を取りました。始めてみたら、目から鱗でした。

楽器に触れたとき、音色がガラっと違っていて、印象がすべて変わりました。とくに、当時の楽器、最初に触ったのはヴァルターで1790年頃のコピーですが、その時代の楽器ってハンマーが弦を打つ打点ポイントがとてもはっきりしていて、クリアなんです。

打点ポイントがはっきりしているということは、音に子音があるということ。とくに古楽の人がよく言うのは、喋るように弾くということなんです。歌うというのは19世紀的な発想で、バッハの時代から古典派にかけての時代は、語る、話すということが音楽に求められたわけなんですね。歌うという発想なら、母音だけのヴォカリーズでもいいのですが、話すとなると子音が必要になる。

子音がクリアだとなにが起こるかというと、アーティキュレーションが生き生きとしてくる。スラーの開始地点と終わりのポイントがクリアになる。スタッカートのキャラクターもクリアになる。すべてが新しいサウンドとして聴こえてきて、モーツァルトがここにスラーを書いた、ここにスタッカートを書いているということの意味がわかったのです。そのアーティキュレーションによる音楽の生き生きとした表情が、古典派音楽の核だと思ったんですね。それでモーツァルトをさらい直したらおもしろくてしょうがなくて、それまで嫌いと思っていた古典派音楽が好きになるきっかけになりました。

C.P.E.バッハの「クラヴィーア奏法」や、レオポルト・モーツァルトの「ヴァイオリン奏法」を読むと、どう弾けばいいのかが、そこに書いてあるんです。そこでC.P.E.バッハが述べているのは、拍感の重要性です。彼は拍における優越関係を明確に定めているんですね。4拍子の場合は、優/劣/優/劣、厳密には、1.2/0.8/1.1/0.9の比率になるんですが、その優劣関係を時間の操りによってつけていくんです。その拍ごとに場所が変われば長さも変わる。時間軸を動かすことで、表情が出てくるわけです。

不均等であるからこその表現、動きが出てくるんですね。葉っぱの模様とか、自然にあるものは不均等なものが多いですよね。ガウディの建築だって自然の曲線美から影響を受けています。この自然であることの美しさ、モーツァルトの音楽も自然でなければならないんです。

フランス・バロックのイネガル奏法の発想が、モーツァルトにも影響を与えているし、それがショパンにも続いている。そういうことを知るきっかけが、すべてフォルテピアノだったんです。

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