「バッハのすべて」

○「新編 バッハのすべて~生涯、作品とその名演奏家たち」音楽の友編(音楽之友社/2016.12)
ONTOMO MOOKシリーズで、バッハの生涯、名演奏家が語るバッハの世界、バッハ演奏家たち他の内容。「アーノンクール、クイケンなどへのインタビューや、演奏評――特に征矢健之介と山本友重の「シャコンヌ聴きくらべ」対談は興味深かった。そして、第4章新しい演奏の潮流 では、佐伯茂樹氏による「なぜバッハの音楽を古楽器で演奏するのか?」、「バッハ演奏の現在」など、ひじょうによくまとめられてわかりやすいものだった。
復習の意味も兼ねて下記に一部引用しておく。

バロック音楽は「語る」音楽であり、流麗に「歌う」19世紀以降の演奏スタイルとは本質的な考え方が違う。長いフレーズを良しとするロマン派以降の音楽では、スラーの記号は、長いフレーズを表すフレージングスラーの場合が少なくないが、バロック時代のスラーは、細かく分節して「話す」アーティキュレーションを表す記号になる。多くの場合は、スラーは非和声音と和声音を結んでおり、スラーの頭がアクセントになって語尾は減衰するという点も、ロマン派以降のスラーとは違う。
この特徴はバロック時代の楽器の特性と無関係ではない。例えば、バロック・ボウは、現在のヴァイオリンの弓よりも重量が軽く発音しやすいので、バロック時代のはっきりしたスラーを演奏するのに適している(バロック・ボウは短いので、ロマン派の作品を弾くと弓が足りなくなってしまうケースもある)。それだけではなく、バロック・ボウは、先端が軽いので、下げ弓(ダウン・ボウ)のときに音が減衰しやすく、バロック音楽の生理とも合致するのだ。下げ弓と上げ弓(アップボウ)で音のキャラクターが違うという点も、舞曲を中心とするバロックのレパートリーでは長所となる。
だが、この特徴は、長いフレーズを語尾まで減衰せずに鳴らすことを要求されるロマン派以降の音楽では、反対に全て欠点になってしまう。そのため、19世紀にバッハの音楽が復興して以来、バッハの楽譜には、オリジナルにはないフレージングスラーが書き込まれ、長いフレーズでロマンティックに演奏されるようになってしまった。また、響きに潤いを与えるためにヴィブラートを常にかけるようになると、本来なら減衰する長い音符にもヴィブラートをかけてしまい、バロック音楽が持つ「緊張から弛緩」という美学が薄らいでしまったというのもある。

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    Excerpt: ●「新編 バッハのすべて~生涯、作品とその名演奏家たち」音楽の友編(音楽之友社/2016.12) http://zauberfloete.at.webry.info/201612/article_6.. Weblog: Zauberfloete 通信 racked: 2016-12-31 23:43