「バッハ・古楽・チェロ~アンナー・ビルスマは語る~」 

チェンバロ、フォルテピアノ、クラヴィコード奏者である渡邊順生と加藤拓未が、アムステルダムのアンナー・ビルスマの自宅でインタビューしたものをまとめたもの。2016年10月にアルテスパブリッシングから出版されている。
第1部 音楽活動、仲間たち、そして人生
第2部 チェロ、センツァ・バッソ
第3部 「無伴奏チェロ組曲」の奏法
第4部 音楽について、そしてボッケリーニ
という章構成になっており、ひじょうに内容は濃い。

「無伴奏チェロ組曲」の奏法の章が最も実用的(?)とは思うが、私は専門外なのでそれ以外の箇所で気になった箇所を以下に抜書きしておく。

○アップ(クレッシェンド)は「吸気」であり、ダウン(デクレッシェンド)は座り心地の良いソファーに座って「沈み込む」感じだ。

○すべての音符を、まったく等しい音量で演奏すると、細かい違いが失われて、すべてが同じに聴こえてしまう。
中略)モダンの奏者は、楽譜にあるすべての音符を気にかけてしまうんだ。むしろ、協和音程か、不協和音程か、小節のうちの重要な部分なのか、そうでないのか、スラーでつないだ方がいいのか、弓を返した方がいいのか、ということを考えるべきだ。(中略)
モダンの奏者たちは、すべてを「歌う」ように演奏する。たしかにそれは時として、一、二小節の範囲では素晴らしいこともある。しかし、音楽には推移部もあるじゃないか。そうした推移部も、過度に重要に演奏するのはいいとは思えないんだ。(中略)オーセンティック派は、もっとも重要な音符を見つけ出し、それ以外の音符はちょっとだけ軽く扱うんだ。つまり、際立たせるべき「良い」音符を知っている。

○良い音楽はみな「言葉」になっている。バッハの音楽の場合、リズム的和声的な複合体として書かれていて、特に拍節を重視し、短いスラーを意図的にたくさん使用することで、音型を言葉の音節レヴェルにまで短くしているんだ。

○まずいちばんに肝に銘じてほしいのは、子どものころに習い、ずっと実践してきたこと、たとえば、「すべての小節の一拍目は必ずダウンで弾くこと」や、「すべての音符をつなげることで、旋律を歌うように演奏すること」、「さまざまな音楽の変化を無視して、すべてのボウイングを均一化すること」などなど――こういったことは、いちど忘れていただこう。

○バッハの時代には伝統的に、イタリア様式のボウイングと、フランス様式のボウイングがあったんだ。その違いは、イタリア様式は「臨機応変に」というやり方で、これに対し、フランス様式は各小節の最初の音は、必ず「ダウンボウ」で始めることが原則だった。

○「文化」はすでに終わったものであり、過去のもの、これに対し「芸術」は今まさに生み出されているもので、生命のあるものだ。

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