「新版 モーツァルト 演奏法と解釈」

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エファ・バドゥーラ=スコダ、パウル・バドゥーラ=スコダ著/今井顕監訳/堀朋平、西田紘子訳(音楽之友社/2016.4)
名著「モーツァルト 演奏法と解釈」(原著は1957年、日本語版1963年刊行)の新版。
http://www.ongakunotomo.co.jp/catalog/detail.php?code=131110
旧版には演奏法に関するひじょうに有効な示唆が数多く書かれており、モーツァルト(およびその時代)の演奏法に関する最良の参考書であった。
http://zauberfloete.at.webry.info/201212/article_7.html
http://zauberfloete.at.webry.info/201112/article_27.html

初版から約50年が経ち、資料状況の変化や新しい研究成果など新しい情報をもとに、本書では大幅に加筆校訂が施されれている。
デュナーミク、テンポとリズム、アーティキュレーション、装飾音、即興的装飾、カデンツァとアインガングなど、モーツァルトを演奏する上で欠かせない情報が満載で、ピアノを演奏する人はもちろん、それ以外の楽器を演奏する人にとっても必読の書と思う(672ページ、本体価格/税別7300円という高価な本ではあるが)。

私は発売後すぐ5月には購入し、必要な箇所は拾い読みしてはいたのだが、常に手元にある本は、図書館などで借りた本より優先順位が下がるのは常のこと。なかなか読み通せなかったがやっと一応すべてのページに眼を通すことはできた。今後はその都度知りたい箇所を読み直すことになるのだろう。

引用したい箇所は山ほどあるが、とりあえず、「付録1 パミーナのト短調のアリアに関して伝えらえるモーツァルトのテンポ」から抜粋・要約しておきたい。
ニッセン:「モーツァル伝」によれば、「モーツァルトから引き継がれた伝統によれば、当時このアリアのテンポは、”Rhein.Zollで6から7”だった」とのこと。ラインのツォル Rheinisch Zoll というのは一種の振り子の機械で、単純な形をしたメトロノームの前身で、現在のメトロノーム表示に換算するとそれは♪=138~148という信じられないほど速いテンポになるという。しかし、
アンダンテ楽章に正確なメトロノーム表示を残した後世の作曲家たちのほぼ全員が「アンダンテは遅いテンポを意味しない」という見解だった事実を知っておくことは重要です。
という説明の具体例として、
○ベートーヴェン:交響曲第2番第二楽章アンダンテ→八分音符=92
○シューマン:「トロイメライ」/アンダンテ→四分音符=100
○ブラームス:ピアノ協奏曲第2番第三楽章アンダンテ→四分音符=84
などの例を挙げている。
さらに、ゴットフリート・ヴェーバーという人が、1815年にライプツィヒの一般音楽新聞 Allgemeine Musikalische Zeitung に発表した論考「ひとつの疑惑 Ein Zweifel」の中で、上記パミーナのアリアが「遅すぎる」という警告を発しているという。
そしてその4か月後、同じ紙上にウィーンの記者による記事が掲載され、このアリアのテンポと性格に関するヴェーバーの意見が追認される。この記者が「魔笛」の初演に参加した多くのオーケストラ団員に質問したところ、その誰もがモーツァルトは生き生きとしたテンポを、つまり「はげしい痛みを混じりけなく表現していた」と語ったとのことである。
http://zauberfloete.at.webry.info/201504/article_12.html
http://zauberfloete.at.webry.info/201506/article_13.html

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