モーツァルト:ヴァイオリンとヴィオラのための協奏交響曲変ホ長調K364~その2~

この曲、以前のオイレンブルクのスコアなどでは独奏ヴィオラ・パートは変ホ長調で表記されていたが、NMA/ベーレンライター版1975などでは、ニ長調で表記されている。
http://dme.mozarteum.at/DME/nma/nmapub_srch.php?l=2
もともと、独奏ヴィオラパートは半音高く調弦する(スコルダトゥーラ)ことを前提に ニ長調で書かれていたためである訳だが、実際にそのように弾かれているケースはどれくらいあるのだろうか?
手持ちのCDの中に、五嶋みどり、今井信子、エッシェンバッハ=北ドイツ放送響(SONY/2000)があり、そこでは今井信子が半音上げて調弦したヴィオラを弾いている。
ライナーノーツには、
今井は長年にわたって演奏してきた指遣いをまったく新しいものにしなければならなかったが、「結果的に全く別の作品になったかのような感じがする。ヴィオラの伸びのある倍音によって両楽器の響きが完全に溶け合うようになった。何故もっと以前に試みなかったのだろう!」と語る。
とある。ということはやはり、本来の調弦のまま弾くのが普通、であることがわかる。さらに、
この調弦法に関して今井はヴィオラが「これまでとは次元の違う楽器になった」と言い、また弦の張りが強くなったために「これまでよりずっと少ない労力で、それでいて今までよりもしっかりした」音が出せるようになったと語っている。
とも書かれている。

実際にその演奏を聴いてみても、ヴィオラの音色は確かに張りがあり、力強く輝かしい。特有のくすんだ響きは影をひそめ、ヴァイオリンと対等に語り合えているように感じられた。
念のため、クスマウル、クリスト、アバド=ベルリン・フィルの演奏(SONY/1994)をあらためて聴いてみたが、ここでのクリストはやはり本来の調弦で弾いているように思える。

さて、半音高く調弦するということは、本来in C の楽器が in Cis の移調楽器になるということであり、いつもと同じ指遣いだと半音高い音が出てしまう訳で、絶対音感を持った人にとってはどうなるのだろうか?、という疑問が生じる。
この問題については、Yahoo知恵袋に以下のようなQ&Aが載っている。
http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q11144788766
「絶対音感は無関係」、と言っている人と、「絶対音感があると、違和感があり、読替は必要になるでしょう」と言っている人がいる。また、移調楽器を演奏する場合の問題についても触れられている。
http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q14129786069
いずれにしても、絶対音感があっても瞬時に読替えをして問題なく弾ける人もいるということなのだろう。

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!

ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。

→ログインへ

なるほど(納得、参考になった、ヘー)
驚いた
面白い
ナイス
ガッツ(がんばれ!)
かわいい

気持玉数 : 0

この記事へのコメント

pfaelzerwein
2016年09月22日 14:29
「スコルダトゥーラ」から「絶対音感」、この手の話は音楽の根源的な話に繋がるので興味が尽きませんね。前者はここでも何度か出てきましたね。聞く人にとっては音色が変わるだけですが、演奏者にとっては技術的な問題のようです。知る限り、調弦無しでさらっていない人はいないのではないでしょうか。そして両方をレパートリー化しているのは大抵女性奏者だと思います。どうしても調弦ありだと「難しい」となるのは教育メソッドの恩恵と弊害なのでしょう。

絶対音感、これも上の議論では12音平均律のそれを指しているようですが、少なくとも現在の音楽市場で演奏される西洋音楽に限っても、一体どこにそれがあったかななどと思います。オルガンの前は鐘、その前はやはり胴声などが現場での重要な基準を与えていたかなとなどと想い描きます。

モーツァルト自身のヴィオラは塩川・シフで録音がありますよね。聞かれたことがありますか?その大きさの楽器のその音を想像するのですが。
pfaelzerwein
2016年09月22日 14:37
失礼しました「塩川・シフ」は勿論ヴァイオリンですから、ヴィオラではなかったです。混同しました。
2016年09月22日 20:46
pfaelzerweinさま
いつもコメントありがとうございます。
私は絶対音感がないのでわかりませんが、記譜上は別として実体としては実音(?)が出ているので聴感上の違和感はないと思うのですが・・。

この記事へのトラックバック