ショパン:ワルツ/仲道郁代

仲道郁代が1842年製プレイエルと2013年製スタインウェイを使ってショパンのワルツを弾いた2枚組のCD(RCA/2015.5)を聴いた。仲道は2007年にNHKの番組収録の際、1848年(ショパンがパリに生き、プレイエルを使っていた時代)製のオリジナルのプレイエル・ピアノを弾く機会を得たとのことで、その印象について次のように述べている。

音を出してみて最初に私が気づいたのは、その楽器のリフトアップ感だった。
フレーズの終わり、音の終わりが現代の楽器のように立派に長くは残らない。いともはかなく繊細に消えゆく音たち。ペダル使いと相まって、楽器の性能に最もはまった音楽が、ワルツだったのである。
ショパンが記したダンパーペダルの記号たち。ある時は、フレーズを越えて踏み残し、ある時はフレーズの半ばで離す。またある時は、ペダルなし。というような、細かく指示されたこだわりのペダル記号。この微妙な変化によって絶妙な色合い、間合いがプレイエル・ピアノでは生まれるのだ。それらを駆使して演奏するワルツは、単なる華やかな曲ではなく、陰影に富んだ深い芸術的表現をともなう音楽となる。
プレイエル・ピアノが教えてくれたことはそれだけではなかった。現代の楽器と比べて浅く軽い鍵盤、小さなハンマー、華奢な弦を使うことによる音色の軽さ、明るさ、柔らかさ。これらが独特の表情のしなやかさを生む。決して大仰にならない豊かさ。そこに、ショパンの音楽に流れる品格を見出すことができるのだ。


ということだが、ここではプレイエルのみならず、スタインウェイでの演奏も収められている。
確かに、プレイエルの優しく慎ましくしなやかな音色はインティメイトな雰囲気を醸し出し、まことに好ましく響くのだが、スタインウェイの強靭で豊かな響きも素晴らしく、変ホ長調やヘ長調などの「華麗なる(大)円舞曲」にはこちらの方が相応しいのではと思ってしまう。
仲道は、両楽器の特性を活かして巧みに弾き分けている。スタインウェイの方がテンポがゆっくりめかというと必ずしもそうでもなく、また、所要時間は同じでも、聴感上のイメージはだいぶ異なっている。いずれにしても、作曲家がどのようなイメージ/音を想定して作曲したかということを知る上で、この録音は有用なものとなるだろう。
なお、通常の(?)14曲に加え、あと5曲が収録されている。

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