クラシックの真実は大作曲家の「自筆譜」にあり!

DU BOOKS/ディスクユニオンから2016年3月に出版されている。著者は作曲家の中村洋子、自身のブログから単行本化されたもの。「バッハ、ショパンの自筆譜をアナリーゼすれば、曲の構造、演奏法までも分かる」というサブタイトルが付いている。
何とも刺激的な本でひじょうに面白かった。
この本は、「レコード芸術4月号」の書評に採り上げられており、その中で「すべての譜例が中村自身の手書きによるもの」と書かれていたため、私自身、読む前に心の準備(?)ができていたのだが、それを知らない人はこの書名を見た時に、自筆ファクシミリの図版が多く掲載されていると思うだろう。
それはともかく、この書ではさまざまな問題提起がなされており、有益な示唆が含まれている。以下、メモとして転記しておく。

○作曲家がわざわざ特別な書き方をしていても、出版社によってそれが通常の形に修正されてしまっている例(バッハ、ベートーヴェンなど)。
◇曲の全体構造をわかりやすくするために、楽譜を変則的なレイアウトにしている(重要なモティーフがどこに配置されているかがわかるよう、残りのスペースがあっても敢えて行/段を変えて、新しい段落/左端から書き始めている)。
 →組み直された結果、バラバラになってしまう。
◇符尾の向きを変えることで三声体(あるいは四声体)であることを明示した。
 →実用譜では符尾を同一方向に串刺しで表示。 
◇敢えて符頭から始めないスラー/小節線をまたいで宙に浮いているように書かれたスラー(ショパンにもその例がある)。
 →符頭からに統一され曖昧な形ではなくなっている。
◇ダイナミクスの記号やペダルの指定も、小節をまたいだり、音符の前だったり曖昧な書き方をしている場合がある。
 →音符の下に統一。

○和声を身につける最良の道
 ①バッハのコラールを自分の手で書き写す
 ②毎日、それをピアノで弾く
 ③頭と指に和声を叩き込む
○ドビュッシー校訂によるショパン「エチュード」素晴らしい。その中で示されているフィンガリングは、「弾きやすくするための指遣い」ではなく、曲がどのように構築されているか、そのアナリーゼをフィンガリングで示している。
○バッハの原曲を移調し、音を加えることは、バッハの世界の破壊

またこの書では、作曲家の自筆譜についての話だけではなく、音楽はもちろん、映画、能、絵画、塗師、老舗の和菓子屋の話など、幅広いテーマについてエッセイ風に綴られている。

○コンスタンティン・リフシッツは、自分の設計図をもってバッハの音楽を構築していく。それゆえ、飽きずに何度も聴きたくなる。
○エリック・ハイドシェックに教わったという、ブラームスのワルツのリズムの取り方
→「ア~ム=ステル=ダム」と歌うと、生き生きとした3拍子のリズムになるという。
○フルトヴェングラー指揮(1954年録音)で、「マタイ受難曲」の構造がこれ以上ないほど明確に現れてくる。バッハの音楽的思考がまるでスケルトンのように分かってくる。

*このCDは現在廃盤なのだろうか?
○銀座の和装小物を扱っていた「くのや」が2012年1月末に閉店した。
*私も昔、リードに巻く糸を買いに行ったことを思い出す。


ということで、作曲家の自筆譜を参照することは、研究のためにはもちろん、演奏する上でも大きなヒントが得られることは間違いない。出版譜というものは作曲家が書いた通りとは限らないことは認識しておく必要がある。
なお、この本を読んでいて感じたことは、私自身、対位法はもちろん和声に関する知識がほとんどないということ。少しずつでも勉強していきたいと思った。

さらに、このような本の場合、その受取り方にはかなりの個人差があると思う。その意味で、アマゾンのカスタマーレビューはなかなか興味深いものがあった。
http://www.amazon.co.jp/%E3%82%AF%E3%83%A9%E3%82%B7%E3%83%83%E3%82%AF%E3%81%AE%E7%9C%9F%E5%AE%9F%E3%81%AF%E5%A4%A7%E4%BD%9C%E6%9B%B2%E5%AE%B6%E3%81%AE%E3%80%8C%E8%87%AA%E7%AD%86%E8%AD%9C%E3%80%8D%E3%81%AB%E3%81%82%E3%82%8A-%E3%83%90%E3%83%83%E3%83%8F%E3%80%81%E3%82%B7%E3%83%A7%E3%83%91%E3%83%B3%E3%81%AE%E8%87%AA%E7%AD%86%E8%AD%9C%E3%82%92%E3%82%A2%E3%83%8A%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%82%BC%E3%81%99%E3%82%8C%E3%81%B0%E3%80%81%E6%9B%B2%E3%81%AE%E6%A7%8B%E9%80%A0%E3%80%81%E6%BC%94%E5%A5%8F%E6%B3%95%E3%81%BE%E3%81%A7%E3%82%82%E5%88%86%E3%81%8B%E3%82%8B-%E4%B8%AD%E6%9D%91%E6%B4%8B%E5%AD%90/dp/490758377X

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この記事へのコメント

2016年04月07日 23:27
pfaelzerweinさま
ありがとうございます。
今度聴いてみます。

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  • 最近読んだ本 2016/4

    Excerpt: ●「クラシックの真実は大作曲家の「自筆譜」にあり!」中村洋子著(DU BOOKS/2016.3) http://zauberfloete.at.webry.info/201604/article_3.. Weblog: Zauberfloete 通信 racked: 2016-04-30 10:22