モーツァルトの初期交響曲/(バッソへの)ファゴット参加について

私が所属しているオケの5月の演奏会でモーツァルトの交響曲第29番を演奏する。この曲、ファゴットは編成上明示されていないため降り番となった。確かに、ウィーン・フィルやベルリン・フィルなどが演奏するこの曲でファゴットが参加していることは普通ないのだが、ホグウッド=エンシェント室内Oの演奏などではファゴットが入っているように聴こえる。
それでは、モーツァルトの時代にはどうだったのだろうか?
ザスラウ著「モーツァルトのシンフォニー」(東京書籍/2003)には下記のような記述がある(以下、引用だが通常書体)。

モーツァルトのシンフォニーには、記譜されなかったパートが三つある。バス・ラインを吹くファゴット、通奏低音の鍵盤楽器、トランペットが必要とされる場合のティンパニである。1780年代の、より入念に仕上げられたオーケストレーションでは、ファゴットとティンパニの問題がなくなり、通奏低音の問題だけが残された。
すでに引用した、バス・ラインを際立たせることに関するハイドンの意見*は、当時主流をなしていたやり方を反映している。すなわち、オブリガート**のファゴット・パートが必要でない場合に、少なくとも一本のファゴットをバス・ラインに追加することが、絶対に必要というわけではないにせよ、好ましいとされていたのである。こうした実践を裏付ける証拠はたくさんある。ファゴットは、バス・ラインに望ましい音色と明瞭さを与える点で価値があるばかりでなく、トゥッティの際にヴァイオリンを重複するオーボエまたはフルートに対し、必要なバランスを与える点でも価値があると考えられていた。オブリガートのファゴットを伴う楽章が一つだけのシンフォニーの場合(例えば、モーツァルトのK110=75b)、もちろん、ファゴットは、他の楽章でバス・ラインを演奏する。

*ヨーゼフ・ハイドンは、低音楽器では1パートひとりという編成を、少なくともある状況において好んでいたことが、1786年の記録に残されている。
ファゴットは、万やむを得なければ省略できますが、私はむしろ使いたいです。それは何より、バスが一貫してオブリガートになっているからです。私はまた、三つの低音楽器、つまりチェロ、ファゴット、コントラバスによる編成のほうが、六つのコントラバスに三つのチェロといった編成よりも好きです。なぜなら、(後者の編成では)パッセージによっては聴き取りにくくなるからです。(以上、引用終了)
**(筆者注)オブリガート: 17~18世紀の楽譜で、省くことのできない声部、あるいは楽器を指定したもの。 ↔ アド・リビトゥム

上記の説明中、オブリガートの(独立したパートを持つ)ファゴットを伴う楽章が一つだけの曲の例としてK110(交響曲第12番)があげられているが、同じようなケースで有名な例としては第25番K183がある。この曲では第二、三楽章のみファゴットの独立パートが存在するが、NMAではその他の楽章に小さい楽譜で Fagotti パートが加えられており、実際にファゴットが参加している録音も少なくない。また、第12番の場合には、第一楽章冒頭に「ファゴット アド・リビトゥム」のコメントがある。
ということで、「モーツァルトの交響曲において、独立したファゴット・パートのない曲の場合、少なくとも一本のファゴットをバッソに加えることが好ましい」という立場に立てば、交響曲第29番においても(第25番第一、四楽章と同様に)、ファゴットをバッソに追加しても良いということになるのだろう。

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