キリル・ペトレンコ=ベルリン・フィル/ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第3番

ペトレンコがこれまでベルリン・フィルを指揮した2回のコンサートが、8月末までデジタル・コンサートホールで無料公開されている。
https://www.digitalconcerthall.com/ja/news
とのことで、とりあえず私が知っているベートーヴェンのピアノ協奏曲第3番を聴いてみた。ピアノはラルス・フォークト、2009年5月10日の映像。
コンチェルトということで、あまり指揮者が前面に出ることはなかったが、ペトレンコという人はあまり大きな振り方はせず、感情移入はしながらもオケの自主性に任せた上で要所を的確に引き締めるというタイプのような感じを受けた。ただし瞬発力や集中力、緊迫感などは尋常ではなく、オケとしても油断はできないと思う。
エルガーの交響曲では拍手が鳴りやまないうちに曲を始めたり、インタビューを見ても純粋でシャイな感じはぬぐえず、ある意味クライバーのような天才肌の人でもあるのだろう。

レコード芸術誌(8月号)にも関連記事がいくつか載っているが、個人的になるほどと思った記事から下記に抜粋する(セオドア・W・リビー・ジュニア「ベルリン・フィルの決断について」より)。
オーケストラ界において、これほど重要なポストが、ディスコグラフィのレーダー上でまだほんのチラっとしか姿を見せていない人物に与えられた、これは初のケースではないでしょうか。そして、このことはレーベル各社がクラシックから手を引き、独自メディアを立ち上げる楽団が増えるにつれて、この15年ほどの間に起きている、注目すべきパラダイム・シフトを際立たせています。(中略)
コリン・ディヴィスが今日の指揮者について言ったこと――全レパートリーを録音するような、自分や同世代の指揮者に与えられた機会は、今の指揮者は誰一人として得られない――は、おそらく真実なのでしょう。そして、私たち音楽ファンにとって、それは大きな損失でしょう。最終的に生きながらえるのは録音なのですから。
そこでベルリン・フィルに戻ります。はたしてBPOは、DGやEMIがカラヤンを不滅にしたように、自身のメディア事業を通して、ペトレンコを不滅にできるのか。そして、もしペトレンコとBPOが何十年にも渡り素晴らしい音楽を作っても、ベルリンや一握りの音楽祭の会場の外では誰も体験できないのだとしたら、それがどれほどの重要性を持つのでしょうか。

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この記事へのコメント

pfaelzerwein
2015年07月21日 23:45
「ベルリンや一握りの音楽祭の会場の外では誰も体験できない」 - 市場があるかどうかだけの話ですが、フルトヴェングラー時代とは違い一分も経たないうちに世界中の話題となっています。芸術にとって肝心なのは、場所などの含めた同時代性とそれが本物であることでしょう。メディアのあり方がここでも問われています。
2015年07月23日 19:55
pfaelzerweinさま
いつもコメントありがとうございます。
デジタルコンサートホールの聴衆が何人いるのかわかりませんが、レコードやCDを介した聴き手とは質も異なるのかも知れません。まあ、「本物」かどうかの価値基準も変貌していくのかも知れませんが・・。いずれにしてもペトレンコにはもう少しテレビなどに登場して欲しいと思います。

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