「魔笛」の速度記号~その2 第二幕~

前回に引き続き、今回は「魔笛」第二幕の速度記号について考えてみる。
http://zauberfloete.at.webry.info/201506/article_13.html
繰り返しになるが、モーツァルトはその速度表記を、
ラルゴ/アダージョ・モルト →アダージョ →アンダンティーノ/ラルゲット →アンダンテ →アレグレット →アレグロ
の順に速くなるものとして使用していた。
以下、第二幕各曲の調性、拍子、速度記号についてまとめてみた。

●第9曲 神官の行進
へ長調 2/2 アンダンテ
●第10曲 合唱つきアリア「おおイシスとオシリスの神よ」 (ザラストロ、合唱)
ヘ長調 3/4 アダージョ
●第11曲 二重唱「女の奸計から身を守れ」(第1・2の僧)
ハ長調 2/2 アンダンテ→新全集ではアレグレット
●第12曲 五重唱「どうしたの? どうしたの? どうしたの?」 (3人の侍女、タミーノ、パパゲーノ)
ト長調 2/2 アレグロ
●第13曲 アリア「誰でも恋の喜びを知っている」(モノスタートス)
ハ長調 2/4 アレグロ
●第14曲 アリア「地獄の復讐が私の心の中に煮えかえっている」(夜の女王)
ニ短調 4/4 アレグロ アッサイ
●第15曲 アリア「この聖なる殿堂では」(ザラストロ)
ホ長調 2/4 ラルゲット
●第16曲 三重唱「再びようこそ」(3人の童子)
イ長調 6/8 アレグレット
●第17曲 アリア「ああ、私にはわかる、消え失せてしまったことが」(パミーナ)
ト短調 6/8 アンダンテ
●第18曲 僧侶たちの合唱「おお、イシスとオシリスの神よ、なんという喜び!」
ニ長調 2/2 アダージョ
●第19曲 三重唱「愛しい人よ、もうあなたにお会いできないのですか?」 (パミーナ、タミーノ、ザラストロ)
変ロ長調 2/2 アンダンテ モデラート
●第20番 アリア「娘か可愛い女房がひとり」(パパゲーノ)
ヘ長調 2/4 アンダンテ
●第21番 フィナーレ
○「やがて朝を告げるために輝きわたるのは」(3人の童子、パミーナ)
変ホ長調 2/2 アンダンテ
○「あなたの若者がこれを見たら」(3人の童子、パミーナ)
変ホ長調 3/4 アレグロ
○「苦難に満ちてこの道をさすらい来るものは」(鎧を着た2人の男、タミーノ)
ハ短調 2/2 アダージョ
○「何が聞こえたのか?パミーナの声だろうか?」(鎧を着た2人の男、タミーノ、パミーナ)
変ニ長調 2/2 アレグレット
○「私のタミーノ!おお、なんという幸せ!」(パミーナ、タミーノ、鎧を着た2人の男)
ヘ長調 3/4 アンダンテ
○「私たちは烈火の中を進み、雄々しく危険と戦った」(タミーノ、パミーナ)
ハ長調 4/4 アダージョ
○「勝ったぞ!勝ったぞ!気高いふたりよ!」(合唱)
ハ長調 4/4 アレグロ
○「パパゲーナ!パパゲーナ!パパゲーナ!」(パパゲーノ)
ト長調 6/8 アレグロ
○「さあさあ、じゃあいいさ、なんにもおれを止めてくれないんだから」(パパゲーノ)
ト短調 6/8 アンダンテ
○「やめなさい、ああ、パパゲーノ!」(3人の童子)
ハ長調 2/2 アレグレット
○「響け、鈴よ、響け!」(パパゲーノ)
ハ長調 2/2 アレグロ
○「パ、パ、パ」(パパゲーノ、3人の童子)
ト長調 2/2 アレグロ リタルダンド、イン テンポ
○「静かに、静かに、静かに、静かに!」(モノスタトス、夜の女王、3人の侍女)
ハ短調 2/2 モデラート
○「太陽の光は夜を追いはらい」(ザラストロ)
変ホ長調 2/2 レチタティーヴォ マエストーソ
○「汝ら、浄められた人たちよ、万歳!」(合唱)
変ホ長調 4/4 アンダンテ
○「強いものが勝ち」(合唱)
変ホ長調 2/4 アレグロ

上記から気付く点は下記の通り。
○モーツァルトは、アダージョ――アンダンテ――アレグロ という形を基本にして各曲の速さを指定している。
○ラルゲットはアダージョよりは速く、アンダンテよりは遅い、ということで、第15曲ザラストロのアリア「この聖なる殿堂では」は遅すぎないことがポイントとなる。第3曲タミーノのアリア「なんと美しい絵姿」と同じテンポの指定となる。
○アンダンテは「ゆっくりした」テンポではない。その意味で、第17曲パミーナのアリア「ああ、私にはわかる、消え失せてしまったことが」はゆっくりし過ぎないことが必要。ちなみに、「6/8アンダンテ」というのは、フィナーレのパパゲーノの「さあさあ、じゃあいいさ、なんにもおれを止めてくれないんだから」(絶望して首をくくる直前)の一節と同じであり、モーツァルトは、この両曲のテンポが同じであること想定していたことになる。
○フィナーレにおける速度記号/加速減速についての指定は、比較的すっきりしているのでわかりやすい。一つ確認すべきは、パパゲーノ/パパゲーナが終わった後の「静かに、静かに、静かに、静かに!」(モノスタトス、夜の女王、3人の侍女)の箇所にある「モデラート」。一般的な楽典ではアンダンテとアレグレットの中間とされているが、モーツァルトの使用例はあまり多くないと思われる。
アーノンクール著「音楽は対話である」(アカデミア・ミュージック/1992)によれば、「アレグロ・モデラート」は「適度に速く」の意味でアレグロよりは少し遅いと書かれている。いずれにしても、アレグロより遅いことは間違いないだろう。

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