モーツァルト:12のデュオK487(496a) ~その3 ラルゲット~

モーツァルト:12のデュオK487(496a) 、第5曲にはラルゲットの指定がある。
http://zauberfloete.at.webry.info/201405/article_18.html
モーツァルトのラルゲットといえば、まず思い浮かぶのは、ピアノ協奏曲(第24・26・27番など)やホルン協奏曲第3番の緩徐楽章、さらにはクラリネット五重奏曲や管楽器とピアノのための五重奏曲の緩徐楽章、また、オペラではフィガロの伯爵夫人のカヴァティーナ、タミーノの「なんと美しい絵姿」のアリアなどなど・・・、いずれも超名曲ばかり。これだけの曲が並ぶと、モーツァルトは何か特別な想いを込めた曲にラルゲットと書いたのではないかとさえ思えてくる。

さて、ラルゲットとは一般的にラルゴよりはやや速い、と説明される。しかしここで注意しなくてはならないのは下記の点。よく現代の楽典には、
(Grave)→Largo→Larghetto→Adagio→(Lento)→Adagietto→Andante→Andantino→Allegretto→Allegro
の順に速くなっていくと書かれているものがあるのだが、モーツァルトの時代にはそうではなかった(ラルゲットはアダージョより速かった)ということ。
*ショパンの夜想曲作品27-1は「ラルゲット」で始められるが、終わりに長いリタルダンドがおかれ、結局終わりがアダージョになっているという。

また、アンダンティーノに関しても、、エヴァ+パウル・バドゥーラ=スコダ著「モーツァルト 演奏法と解釈」の中においてすら、上記と同じように「いくらか速いアンダンテを意味する」などと書かれている。
しかし、アーノンクール著「音楽は対話である」においては下記のように説明されている。
18世紀において一般的だったように、モーツァルトの場合にもアンダンテはまだ速いテンポ表示の一つであった。アンダンティーノは、いわば「ほんの少しアンダンテ」ということで、メノ・アンダンテと同様に遅く、そしてアンダンテよりもピウ・アンダンテやモルト・アンダンテの方が速いテンポを意味していた。
そして、まさにモーツァルトの時代にアンダンテがゆっくりしたテンポを示すという意味上の変遷が始まったのである。

このあたりについて、「フィガロ」や「イドメネオ」などの具体的場面を例示しながら、その取るべきテンポと記号の意味に関し詳細な説明がなされている。
そして、モーツァルトの時代においては下記のようなテンポ設定であったであろうと結論づけられている(左から右へ速くなる)。

                     molto Andante      
Adagio molto   Andantino   piu Andante  (Allegro) vivace assai molto
Largo   Adagio     Andante           Allegro
           Larghetto       Allegretto

この順番の正しさは、モーツァルトが同じ楽曲について、自筆の楽譜にはアンダンティーノ、「全作品目録」にはラルゲットと書き込んでいる例が見られるということで証明されると書かれている。
いずれにしても、モーツァルトがイメージしたラルゲットはアダージョとアンダンテの間の、中庸で適度なテンポだったのだろう。

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