ハイドン:交響曲第102番変ロ長調

交響曲第102番はハイドンが1794年にロンドンで作曲し、1795年2月2日ロンドンの王立劇場で開かれた第1回「オペラ・コンサート」で初演された(「奇跡」のエピソードはこの時のものらしい)。 その際、フィナーレがアンコールされたとのこと。
ハイドンが作曲した最後から三番目の交響曲であり、愛称こそないものの優れた楽曲であることは疑いない。
第二楽章では、独奏チェロのオブリガートが独特の効果をあげているが、同時にこの楽章ではハイドン初の試みであるトランペットとティンパニへの弱音器の指定がある。
そして「オペラ・コンサート」においては、総勢60名に達する大オーケストラにより演奏が行われたというが、この曲ではなぜかクラリネットが用いられていない。そのせいか(?)、この曲には独特のインティメイトな雰囲気も感じられる。

今年秋の演奏会でこの曲を演奏することになったためパート譜を調達/借用した。エディションはザルツブルクのハイドン・モーツァルト・プレッセ(1967/ロビンス・ランドン校訂版)。一方、私が持っているスコアは、ハリー・ニューストン校訂によるオイレンブルク新原典版(1999)。あと、おそらくブライトコプフか旧オイレンブルク版のリプリントと思われるドーヴァー版。
各版を大まかに比較すると、スラーなどのアーティキュレーションの付け方に少なからず違いがある。例えば終楽章13、17小節各アウフタクトからの木管(Fl,Fg)のヴァイオリンと対話のフレーズ、HMP版では何もアーティキュレーションは付けられていないが、オイレンブルク新原典版とドーヴァー版にはスラーが付けられている。そして、概してオイレンブルク新原典版はかなり詳細に(丁寧に)アーティキュレーションが付けられており、ある意味で好ましい。
http://zauberfloete.at.webry.info/201403/article_3.html
しかし、最も異なる点は第三楽章メヌエット、51小節アウフタクトからトゥッティで ff が約4小節間続く箇所で、オイレンブルク新原典版のみが一小節毎に p の指定が交替で書かれている。校訂ノートによれば、ドナウエッシンゲンの手稿パート譜およびロンドンの写譜家によるスコアの写しにそのようなスケッチ風の記述があるとのこと。この箇所が気になったのでいくつかのCDを聴いてみた(メヌエット楽章のみ)。
なお便宜的に3、11小節三拍目BGなどにスラーをかけていない版をA(ドーヴァー版)、スラーをかけているものをB(HMP版、オイレンブルク新原典版)とする。
●ディヴィス=ロイヤル・コンセルトヘボウO(PHILIPS/1974) B
プレヴィン盤が登場する前はこれが私にとってレファレンス盤だった。今聴いてもまったく古さは感じさせない。オーソドックスで格調高い演奏。
●カラヤン=ベルリン・フィル(DG/1980・81) B
カラヤン・ファンでありながら、ベルリン・フィルとのハイドンはあまり共感できないものがあったのだが、久しぶりに聴いてちょっと認識を新たにした。ゆったりとしたテンポで堂々とした足取りながら音楽は重くならず、トリオではエレガントさも垣間見せる。
●アーノンクール=ロイヤル・コンセルトヘボウO(TELDEC/1988) A
オケはコンセルトヘボウながら、アーノンクール節全開の強烈な演奏。
●ノリントン=ロンドン・クラシカル・プレーヤーズ(Virgin/1993) B
アーノンクール同様、かなり個性的ではあるが、一拍目に何回か登場する装飾音の入れ方などひじょうに好ましい。他の人がやらないテヌート処理も説得力がある。また、ダカーポしてもリピートは完全に実行している。
●プレヴィン=ウィーン・フィル(PHILIPS/1993) A
私が以前から最も愛聴している名演。WPhらしさが満ち溢れている演奏と録音。
●ラトル=バーミンガム市響(EMI/1994) B
ベルリン・フィルとの88~92番(EMI)は超名演だが、バーミンガム市響との録音も洗練され軽妙な演奏を聴かせる。注目すべきはここでのホルンを in B alto で吹かせていること。ハイドンのロンドンセットにおける B管ホルンはバッソという説もあるが、35小節アウフタクトからの上向音型や、61・62小節の「ミーレ/ド」のアルト管の演奏を聴いてしまうと、何が何でもこの演奏でなくてはと思ってしまう・・・。
●スラットキン=フィルハーモニアO(BMG/1994) B
特に変わったところもなく普通の演奏、と思って聴いていたらトリオのオーボエとファゴットの装飾音を長前打音のように長めに演奏していた。
●デニス・ラッセル・ディヴィス=シュトゥットガルト室内O(SONY/録音時期不明;発売は2009) B
この全集、どの曲を聴いても面白味に欠け今一歩なのだが、この曲も堅苦しく愉悦感に乏しい。しかし、ホルンはアルト管で吹かせており、やはりその効果は目を見張るもので素晴らしい。
●ミンコフスキ=レ・ミュジシャン・デュ・ルーヴル(naive/2009) B
しなやかで躍動感あふれる名演。しかし、「太鼓連打」のような奇抜さというかユニークな点はあまりない。

ということで、プレヴィン、アーノンクールだけが A のパターンではあったが、とはいえ、両演奏とも上記終楽章13、17小節の木管のフレーズはノン・レガート(HMP版に準拠)で吹いている。
他にもバーンスタイン、ヨッフム、ヘルビッヒ他があったような気もするが、聴くことができなかった。

話を戻せば、いずれにしてもメヌエットの51小節アウフタクトからトゥッティで ff が約4小節間続く箇所、間にピアノをはさむオイレンブルク新原典版のような演奏をしているディスクは、聴いた限り皆無だったということが結論。
私としては、ff で一気に押し進むより、 ff と p が一小節ずつ交替して進んでいく方が、よりハイドンらしいと思うのだがどうであろうか。

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!

ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。

→ログインへ

なるほど(納得、参考になった、ヘー)
驚いた
面白い
ナイス
ガッツ(がんばれ!)
かわいい

気持玉数 : 0

この記事へのコメント

この記事へのトラックバック