「パリ」交響曲第二楽章

この秋の演奏会で、モーツァルト:交響曲第31番ニ長調「パリ」を演奏することになった。使用楽譜はブライトコプフ版ということで、念のため私が持っているベーレンライター/音楽之友社版スコア(1973)とパート譜付属のスコアを比較してみた。
アーティキュレーションの違いなど細かい点を別にすれば大した違いはないだろうと思っていたのだが、実際に見比べてみると、第二楽章は思いもよらない相違点が少なくなくひじょうに驚いた。
この曲、パリのコンセール・スピリチュエルの支配人ルグロが気に入らず、第二楽章をモーツァルトが書き直したことは有名である。が、オリジナルの第二楽章もモーツァルト自身が改訂しているらしい。
私が持っているスコアの前書きによれば、ベルリンのドイツ国立図書館所蔵(その後テュービンゲン大学図書館蔵)のオリジナル第二楽章の自筆譜は、モーツァルトの最初の書きおろしはほとんど判読できず、新しく清書され直してあり、その中で重要な訂正・改善を行っているとのこと(アンダンティーノからアンダンテへの変更も含まれる)。
以下、ブライトコプフ版とベーレンライター版の主要な相違を記す(アーティキュレーションやダイナミクスの違いは省略)。
○速度表記:アンダンティーノ/アンダンテ
○16・58小節5・6拍目ホルン:休み/Gオクターヴ
○20小節5拍目からフルート:休み/1stVnメロディとユニゾン(アウフタクトはFlのみ)
○21小節2・3拍目低弦:休み/A C
○60~62小節低弦:2・3拍目、5・6拍目が両者で異なる
○73~76小節オケ全体:最初がdur、後半がmoll/最初がmoll、後半がdur
○89・90小節:ホルンの音型が両者で異なる
ということで、細かい点は別にしても、73~76小節のdur→mollの順番は、一聴すれば明らかに違いがわかるのだが、恥ずかしながら私は今まで気づかなかった。
一応代表的なCDを試聴してみたところ、ベーム=ベルリン・フィル(DG/1966)はブライトコプフ版、レヴァイン=ウィーン・フィル(DG/1985)はベーレンライター版をそれぞれ使用していた。この箇所、一回目(31小節)はdur→mollの順番なので、73小節からもそれに揃えるのが正しい(?)のか、敢えて順番を逆にしたのか、真相はわからない・・・。

なお、第一・三楽章については、アーティキュレーション、ダイナミクスなどの相違は別にして、上記のような大きな相違はみられなかった。
それにしても、ブライトコプフ版というのはスコアとパート譜の間にも表記上の相違があるため油断できない。たとえば、スコアには<十六分音符の装飾音符(前打音)+八分音符+2つの十六分音符>と書いてあっても、パート譜上ではわざわざ<4つの十六分音符>に直してあったりする。まったく、余計なお世話と思う。

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この記事へのコメント

cherubino
2014年04月12日 21:52
Zauberfloete様、こんばんは。
「パリ」交響曲の演奏会で、ブライトコプフ版をお使いになるとのことですが、その場合、ご指摘のように第二楽章の速度記号の違いが問題になるでしょうね。
私も自分のブログに記事を書き時に少し調べてみたのですが、楽譜はブライトコプフ=旧全集を使用しながら、速度記号は新全集のものを引っ張ってきて「アンダンテ」と表記しているものが結構多くなっています。
また「アンダンテ」と「アンダンティーノ」のどちらが速度的に早いのか、という点も結構重要な論点でしょう。秋の演奏会での指揮者の方のお考えをお聞きしたいところです。
2014年04月14日 12:30
cherubinoさま
コメントありがとうございます。今回は指揮者の方と相談して、パート譜はブライトコプフ版なのですが、それをベーレンライター版に準拠した形に修正したものを使用することになりました。実際に作業してみると、上記以外にも違いは結構あって興味深いものがありました。
cherubino
2014年04月15日 23:44
お忙しい中、お返事ありがとうございます。
Zauberfloeteさんという優秀なライブラリアン!がいらっしゃると、指揮者の方もきっと心強いでしょうね。
個人的には、第3楽章を旧全集どおり4分の4拍子で振った演奏を聴いてみたい気も、ちょっとしているのですが(^^)

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