「名曲の暗号~楽譜の裏に隠された真実を暴く~」

佐伯茂樹氏による最新刊(音楽之友社/2013.12)。佐伯氏の著作は実用的かつ実証的、さらに演奏法にも詳しく、管楽器奏者にとってはどれも必読の書であると思う。具体的には、
「楽器から見る オーケストラの世界」
http://zauberfloete.at.webry.info/201011/article_2.html
「管楽器おもしろ雑学事典」
http://zauberfloete.at.webry.info/200711/article_6.html
「木管楽器 演奏の新理論」
http://zauberfloete.at.webry.info/201110/article_14.html
「金管楽器 演奏の新理論」
http://zauberfloete.at.webry.info/201206/article_12.html
など、さらには吹奏楽に関する著作も多いが、それらの中でも私が最も繰り返し参照している本が、
「名曲の『常識』『非常識』オーケストラの中の管楽器考現学」(音楽之友社/2002)
である。オーケストラ曲における管楽器の用法についての画期的な書であり、ひじょうに興味深く面白い。

さて、本書はタイトルこそ別物だが、上記「『常識』『非常識』」の続編(一部内容が重複している)とも言うべきもの。主に管楽器関連の話が中心とはなっているが、
○ベートーヴェン「第五」冒頭のリズムは、扉を叩く音ではなく鳥の鳴き声だった?
○チャイコフスキーの交響曲第四番は本当に絶対音楽?
○ドヴォルザークの「新世界より」第二楽章はアメリカ先住民の葬儀を表している!
○「ラプソディ・イン・ブルー」のオーケストレーションをめぐる真実
などなど興味深いテーマが満載となっている。
また、「新世界」交響曲の自筆譜を参照した結果、テューバの指定は元々なく、該当箇所の第3トロンボーンのところに鉛筆で「Bass×Tuba」と書き込まれているだけという話や、第一楽章で2ndフルートがソロを吹く箇所は、元々1stフルートのソロとして書かれてあったが、その直前の弦楽器を6小節追加した結果、当初の1stフルートを波線で消し、その下の空いていた2ndフルートの行にソロが書き込んであるという話など、現在「普通の」こととされているスコアが、作曲家が意図した通りのものであるとは限らない、という話も少なからず載っている。
とにかくひじょうに面白い。著者の着想の域を出ない仮説もあるとはいえ、楽器のメカニズムの歴史的変化、それに伴う管弦楽法の詳細など、管楽器奏者の一般教養として知っておくべき内容も多い。価格はやや高いが手元に置いておく価値はある。

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!

ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。

→ログインへ

なるほど(納得、参考になった、ヘー)
驚いた
面白い
ナイス
ガッツ(がんばれ!)
かわいい

気持玉数 : 0

この記事へのコメント

この記事へのトラックバック

  • モーツァルト:「トルコ行進曲」の前打音

    Excerpt: 佐伯茂樹氏の「名曲の暗号」の中に、このテーマが採り上げられているが、 http://zauberfloete.at.webry.info/201401/article_8.html 「木管楽器 演.. Weblog: Zauberfloete 通信 racked: 2014-01-08 21:43
  • 最近読んだ本 2016/7

    Excerpt: ●「名曲の真相~管楽器で読み解く音楽の素顔~」佐伯茂樹著(アカデミア・ミュージック/2016.7) 佐伯先生の最新刊。管楽器にまつわるひじょうに興味深い歴史、名曲における使用例などが紹介されている。.. Weblog: Zauberfloete 通信 racked: 2016-07-31 21:51