「リンツ」 ベーレンライター版スコア~その2~

前回の記事の直後に、cherubinoさんのサイトに私の疑問点の回答が掲出されていた。
http://gospels.cocolog-nifty.com/classic/2013/02/post-4a3f.html
結論としては、今回採り上げた最新のベーレンライター版スコアは、2003年に出された新モーツァルト全集の校訂報告書の訂正を反映した改訂新版であるということ。とはいえ、「改訂新版」の表記もなく、かつ(私はそこまで気付かなかったが)前書きの一部は今回の修正に伴い書き換えられていることもわかった。
また、ベーレンライター社のHPに出ていたデザインの異なる表紙は、「5th Printing 2012」版の表紙とのことである。
ということで再度、1971年版との相違点をチェックしてみた(前回の項目に追記)。
A:ベーレンライター版(2009年版)
B:音楽之友社/ベーレンライター版(1971年版)
○第一楽章
・16小節 1stVn:一個目の八分音符にfp(A)、一個目の八分音符はp、二個目の八分音符にfp(B)
・17小節 2ndOb:後半3つの八分音符にスラー(A)、小節全体にスラー(B)
・43~46小節 2ndVn休み(A)、2ndVnは1stVnと同様の音型(B)
・111・114小節 Ob,Fg,1stVn,2ndVn,Vla:八分音符にスタッカートなし(A)、あり(B)
・126小節 Fg:F-Eにスラーなし(A)、あり(B)
・184小節 1stVn:C-Hにスラーなし(A)、あり(B)
・186~189小節 2ndVn:休み(A)、2ndVnは1stVnと同様の音型(B)
・257・260小節 Ob,Fg,Vla:八分音符にスタッカートなし(A)、あり(B)
○第二楽章
・33・35小節 2ndVn:スラーあり(A)、なし(B)
・45小節 Fg,Vc:pp(A)、p(B)
・55・57小節 1stVn:十六分音符3つと6つにスラーが分離(A)、一つのスラー(B)
・68小節 2ndVn:後半三拍分が一つのスラー(A)、最後の十六分音符3つのみスラー(B)
・69小節 1stVn:四拍目までが一つのスラー(A)、三十二分音符4つのみスラー(B)
○第四楽章
・58~65小節 1stFg:休み(A)、低弦と同一音型(B)→この部分の前書きが書き換えられている。
・68小節Ob,Fg,1stVn,2ndVn:一拍目から二拍目にスラー(A)、一拍目の四分音符に楔型アクセント、二拍目へのスラーなし(B)
・303小節 Ob,Fg:一拍目から二拍目にスラー(A)、一拍目の四分音符に楔型アクセント、二拍目へのスラーなし(B)
その他、点線のスラーが実線になっている(あるいは逆の)ケース、あるいは何も指定がなかったところに点線のスラーが付けられているケースなども何箇所か見受けられた。

以上であるが、個人的な感想を下記に付記したい。
スタッカートやスラーのかけ方の変更はともかく、終楽章の68、303小節のメロディ・ラインのアーティキュレーション変更には疑問が残る。68小節はヴァイオリンまでのすべての楽器のアーティキュレーションを変更しているにもかかわらず、303小節の方はオーボエ、ファゴットのみ変更しており、結果的にヴァイオリンとはアーティキュレーションが異なったままとなっている。この点はどう考えても納得がいかない。

そして、今回一部削除された低弦(あるいはチェロのみ)にファゴットを重ねる用法についての私見。
ハイドンと同じようにモーツァルトも、後期の作品に向け徐々にバッソとファゴットを分離し、ファゴットに独立したパートを与えるようになっていく。シンフォニーにおいてはパリ交響曲、ピアノコンチェルトでは第15番あたりから、ファゴットの独立した使用が目立ってくる。
さらに、チェロのみのキザミにファゴットを重ねるという使い方は、若い頃の作品はともかく、後期の作品においては「後宮」序曲冒頭のようにチェロのみで、ファゴットを重ねる用法はあまり見られないのではないかとも思う(直感的感想)。
なお、チェロ・バスの人数が少ない場合、低弦をファゴットで補強するということは、実際には少なからず行われていたであろう現場的手法(パート譜に後から書き込まれた可能性もないとは言えない)とも思う。

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  • 「リンツ」 ベーレンライター版スコア

    Excerpt: 「リンツ」のベーレンライター版スコアを借りてきた。 http://zauberfloete.at.webry.info/201302/article_6.html これが現在日本国内で入手可能.. Weblog: Zauberfloete 通信 racked: 2013-02-19 23:09