「リンツ」のエディション

前回、「リンツ」序奏における旧版(ブライトコプフ版)と新版(ベーレンライター版)の違いについて実際の演奏を聴いて比較してみたが、その他の箇所について楽譜上の違いをとりあえずざっと調べてみた。
http://zauberfloete.at.webry.info/201210/article_11.html
旧版と新版の違いについては、スラーの有無などアーティキュレーションの違い、低弦にファゴットが加わっているかどうかなど、細かいことを言い出すとキリがないのだが、それらの点は別にして今回大きな違いと思われた点は、序奏のダイナミクス始め、下記の点が挙げられる(それぞれ最初の表記が旧版/後半が新版)。
●第一楽章序奏16,17小節一拍目: f / p 、18小節の fp の位置(1,3,5個目/2,4,6個目の八分音符)、19小節二拍目: ff / f
●第二楽章42小節: f / p
●第二楽章48小節四拍目 低弦+Fg:H / B 、48小節四拍目 2ndVn:D / Des
他にも第三楽章トリオ15小節のスラー有無、22小節のファゴットのDに♯があるかどうかなどの違いもあるがここでは省略する。
一般的に、旧版または新版で一貫している演奏が大部分ではあるが、クーベリック=バイエルン放送響、ヨッフム=バンベルクSOなどでは、序奏は新版だが、第二楽章42小節のダイナミクスは旧版に依っている演奏もある(48小節は両者とも新版準拠)。
なお、「プラハ」以降の交響曲においては、新版と旧版の間でここまで大きな違いは存在しない。「リンツ」旧版のパート譜を使用する場合には、上記の点についての検討は最低限必要と思われる。

参考)市販(一部絶版)されている、あるいは閲覧可能なスコアの新旧区分は以下のようになっている。
○ブライトコプフ(旧版)
○ベーレンライター(新版)
○NMA(新版)
○音楽之友社(旧版)
○音楽之友社ベーレンライター版(新版)
○全音楽譜出版社(旧版)
○オイレンブルク(新版)
○ドーヴァー/合本(旧版)

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!

ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。

→ログインへ

なるほど(納得、参考になった、ヘー)
驚いた
面白い
ナイス
ガッツ(がんばれ!)
かわいい

気持玉数 : 0

この記事へのコメント

cherubino
2012年11月10日 19:57
Zauberfloete様、こんばんは。たまたまわたくしも西川尚生氏が発見した『リンツ』の筆写譜について調べていて、こちらの記事も大変参考になりました。しかしこの交響曲のファゴット・パートはなかなかやっかいですね。いろいろ疑問点は多いのですが、2カ所ばかり新旧全集の違いについてご意見をお聞きしたいと思い、コメントを差し上げました。お手数をおかけします(いずれもファゴット)。
(その1)旧全集の第2楽章の48小節目。Zauberfloeteさんがご指摘になったナチュラル記号のついたシの音から49小節目にかけて「シー・ド」とあがったところで終わっている(低弦はまだ続きがあって、新全集のFgはこれとユニゾン)。ここも旧版パート譜はスコアと同じでしょうか?Zauberfloeteさんもここは吹かれないのでしょか?
(その2)第4楽章の58-65小節。こちらは新全集がブルクシュタインフルト城のベントハイム侯爵図書館にあるパート譜に従ってFgのパートを書き入れたところ。旧全集およびアイゼンの「新校訂版」には採用されていない箇所なのですが、いくつか新し目のCDを聴いてもなかなかこの箇所を吹いているように聴こえるものがないのでちょっと以前から疑問に思ってました。その直後、66小節目からのOb,2Vnとのユニゾンはすごくよく響いていて、このあとの疑似ポリフォニックな展開を導きだしていく、結構格好のいい箇所だと思います。でもなぜか58-65小節ではっきりFgの音が聴こえた盤は、わたくしが確認できたのはアバド/ベルリンフィル(Sony)だけでした。春のコンサートでは、旧版使用とのことなのでここはやはり吹かれないのかもしれませんが。もし何かおわかりのことがあればご教授ください。
2012年11月29日 23:22
cherubinoさま
ずいぶん遅くなってしまいましたが、上記の点、確認しました。旧版のパート譜はスコア同様、1stファゴットは48小節がH(シ ナチュラル)→Cになってその後は20小節休みになっています。
なお、この箇所は指揮者と打ち合わせた結果B(シ フラット)で演奏することになりました。
次に第4楽章58~65小節(293~300小節)については、小澤征爾=水戸室内管弦楽団(2004/SONY)はベーレンライター版を使用しており、この箇所は楽譜通り(一回目はあまりクリアではない)にファゴットが聴こえます。
そして、アーノンクール=ロイヤル・コンセルトヘボウO(1984/TELDEC)でもファゴットがしっかり聴こえます。また、168~171小節と176~179小節についてもチェロ・バスと同じ音型をファゴットが吹いています。以上の箇所はベーレンライター版スコアの通りなのですが、132~141小節と367~376小節でも1stファゴットがチェロと同じ音型を吹いています。音楽之友社/ベーレンライター版スコアの前書きによれば、この箇所はフュルステンベルク侯宮廷図書館所蔵のパート譜筆写譜にそのような表記があるとのことでした。なお、第三楽章トリオの22小節、ファゴットはDis(新版)ではなくDを吹いているので、ここでの使用楽譜はベーレンライター版ではなく、別のものを使っているのではないかと思われます。
さらに、ヘルムート・ミュラーブルール=ケルン室内O(2000/NAXOS)では、概してアーノンクール盤と同様なのですが、驚いたことに終楽章冒頭のCのチェロのキザミをファゴットとコントラバスが一緒に演奏していました。
その他の演奏は(まだあまり聴いてはいませんが)概して旧版(に一部手を加えたもの)による演奏のようです。

cherubino
2012年12月02日 22:40
Zauberfloete 様
詳細なご返答ありがとうございます。終楽章冒頭および、132~141小節(367~376小節)を聴く限り、結局、アーノンクールの演奏は、既存演奏のうちではフュルステンベルク侯宮廷図書館所蔵のパート譜(ドナウエッシンゲン筆写譜)に比較的忠実な演奏になるかと思います。132~141小節他の1stファゴットも、一度耳にするとなかなかいい感じですけど(もしかしてベーム盤もここ吹いてませんか?)。
しかし、第3楽章のトリオのDis>>Dは、ご指摘いただき初めて気づきました(さすがZauberfloete さんです!)。旧全集のDがこんなところで復活していたとは。しかも、この異同は各版の校訂報告にも全然指摘がありませんし、私にはその根拠がわかりません。アーノンクールのことですから、奏者の吹き間違えなんていうことはないと思いますし、もしかしてガーディナーやブリュッヘン、クーベリックもDに聴こえませんか?。この週末、何度も聞き直しているうちに、一瞬聴いただけでは、どっちがどっちかわからなくなりました(笑)。なので、以上、聴き間違っていたらごめんなさい。いつもながらありがとうございました。

この記事へのトラックバック