最近読んだ本 2012/06

●「山口百恵 赤と青とイミテイション・ゴールドと」中川右介著 (朝日文庫/2012.5)
著者は「クラシックジャーナル」編集長であり、出版社アルファベータ取締役。これまで「カラヤンとフルトヴェングラー」、「二十世紀の10大ピアニスト」、「坂東玉三郎」、「松田聖子と中森明菜」(以上すべて幻冬舎新書) 他多くの著作がある。
本書は、「蒼い時」を始めとする既刊書籍、雑誌などの文献から、本人と関係者の発言を徹底的に収集し、1972年10月の「スター誕生!」予選前後から1980年10月の引退までの8年間について、山口百恵の軌跡がまとめられている。
これまで書かれた山口百恵の評論として忘れられないのは、著者も述べている通り下記の二作であり、前者は歌手として、後者は女優としての山口百恵を論じたものだった。
○平岡正明著「山口百恵は菩薩である」(講談社/1979)
○四方田犬彦編「女優山口百恵」(ワイズ出版/2006)
本書では、歌手/女優両面からスポットを当て、客観的資料/事実を基に詳細なフォローが行われている。特筆すべきは、その時代の芸能界、特に歌謡曲、テレビ、映画などの状況/環境についても詳細に記述されており、「史伝」としての大きな意味/価値を持っている。
個人的には歌手山口百恵のファンだったため、映画の状況についてはほとんど知らなかったが、本書を読むと彼女が女優としても極めて非凡な才能を持った人であったことがわかる。著者は、「映画と歌の両方で持続的かつ同時並行的に成功したのは美空ひばりと山口百恵しかいない」と言い切っている。

●「降霊会の夜」浅田次郎著(朝日新聞出版/2012.3)
謎めいた女の手引きで降霊の儀式に導かれた初老の男。死者と生者が語り合う禁忌に魅入られた男が魂の遍歴の末に見たものは・・・。至高の恋愛小説であり、一級の戦争文学であり、極めつきの現代怪異譚
主人公が少年時代と青春時代に経験した二つのストーリーが語られる。そして、かつての恋人・友人たちとの降霊会での邂逅。
浅田作品の中でも「霞町物語」を最も好む読者としては、久々に好みの作品に出会えたという感じがした。

●「花酔ひ」村山由佳著(文藝春秋/2012.2)
「ダブル・ファンタジー」→「アダルト・エデュケーション」→「放蕩記」と、最近の村山は抑えることなく過激に突っ走る。この作品自体、決して悪くはないと思うが、著者が村山由佳であることが以前からのファンには許されないのかも知れない。「天使の卵」、「おいしいコーヒーのいれ方」、「翼」などの著者と、最近の一連の作品の著者は別人と考えた方が気が楽になると思う。

●「芸術家たちの秘めた恋~メンデルスゾーン、アンデルセンとその時代」中野京子著(集英社文庫/2011.7)
以前出版されていた「メンデルスゾーンとアンデルセン」(さ・え・ら書房/2006.4)を改題、図版等を加えたものとのこと。
19世紀前半、ドイツの作曲家メンデルスゾーン、デンマークの作家アンデルセン、スウェーデンのオペラ歌手ジェニー・リンド、この三人が織りなす人間模様について、メンデルスゾーンの生涯を辿りながら語られる。裕福で恵まれた作曲家と言われるメンデルスゾーンだが、ユダヤ人であったことによる差別、優等生であり過ぎたことによる精神的/肉体的ストレスなど、良いことばかりでもなかったようである。
メンデルスゾーンの伝記はこれまで読んだことがなかったが、アンデルセンとの関係も今回初めて知る話であり興味深かった。

●「クラシック音楽 未来のための演奏論」内藤彰著(毎日新聞社/2009.1)
著者は桐朋学園研究科で小澤征爾、秋山和慶らに師事。現在、東京ニューシティ管弦楽団音楽監督。始めの章は「蝶々夫人」の真実と題して、これまでの演奏ではプッチーニの意図が実現されていないとし、打楽器始めこれまでの演奏慣習の誤りを指摘する。私はプッチーニにはまったく詳しくないので何とも言えないが、文章を読む限りは説得力のある内容のように思えた。続く章は第九のテンポについて。第四楽章、変ロ長調のマーチの速度表示はこれまでの付点四分音符=84ではなく、二分音符=80の誤りであると指摘する。第三章はヴィブラート奏法とピリオド奏法について。著者は20世紀に入ってから始まったヴィブラート奏法を、それ以前に作曲された曲にとっては異質な奏法であり、作曲家が意図したものではないと主張する。他にもメンデルスゾーンやショパン、モーツァルトなどの作曲家たちの意図が正し反映されていないということを指摘する。
「魔笛」序曲の冒頭、二分の二拍子の記述(現代においてはひじょうに遅く演奏されている)は説得力のあるものだった。

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