ヘンゲルブロック=北ドイツ放送響

トーマス・ヘンゲルブロック指揮によるハンブルク北ドイツ放送交響楽団の演奏会を聴いた(5/28東京文化会館大ホール)。
曲目、ソリストは下記の通り。
○ハイドン:交響曲第70番二長調
○モーツァルト:ヴァイオリン協奏曲第3番ト長調/Vn:クリスティアン・テツラフ
○ベートーヴェン:交響曲第3番変ホ長調「英雄」
○モーツァルト:歌劇「フィガロの結婚」序曲(アンコール)
北ドイツ放送響を実際に聴くのは今回が初めて。ヴァント指揮のディスクを何枚か聴く限りは、やや暗く重心の低いドイツのオケらしい響きと思っていたが、2011年のシーズンから首席指揮者がヘンゲルブロックに代わってからは、ドラマティックに変貌をとげたと言われている。
「溌剌として生気漲る」という表現がチラシにもあったが、とにかく新鮮な響きに満ちた躍動感あふれる音楽を聴かせてくれた。そして特筆すべきは木管群の巧さ。オーボエの名手パウラス・ファン・デア・メルヴェを始め、やや細めだが艶やかな音色のフルート、幅広く豊かな音色のファゴットなど、どの奏者もとびきりの美音に加え、優れたテクニックと音楽性を持った見事な演奏だった。
一曲目のハイドン:交響曲第70番は、第53番や第63番と同時期に作曲された知られざる名曲。美しい二短調のアンダンテ、対位法を多用した終楽章など聴きどころが多い。冒頭からコン・ブリオのヴィヴァーチェが弾むように開始される。
指揮台は置かず、弦は12型で大きめの編成。ヴァイオリンは対抗配置、ヴィオラ、チェロは左右に広がり、指揮者と木管最前列の間には弦楽器が一列しかいない。そしてホルンとトランペットはピリオド楽器。弦楽器は終始ノン・ヴィブラート奏法で弾く。
ヘンゲルブロックという人は、アーノンクール率いるウィーン・コンツェントゥス・ムジクスでヴァイオリニストを務めた後、フライブルク・バロック・オーケストラを設立、さらにドイツ・カンマー・フィルの初代芸術監督を務めたとのこと。
ということで、ヘンゲルブロックのアプローチはアーノンクールを思わせるかなり尖ったものに感じられたが、オケ固有の性格と相まってか和声の響き方やフレージングにはドイツっぽさが感じられる。その意味で両者の出会いが上手く相乗効果を生んだということだろうか。
古楽器の団体や普通のオケ(?)とはまた一味違う、新鮮でひじょうに素晴らしいハイドンの響きだった。なお、時には弦楽器のトップ奏者だけで演奏させたり、コル・レーニョ奏法を取り入れたりと、変化に富んだ演奏でもあった。

続いて、クリスチャン・テツラフによるモーツァルトのト長調のコンチェルト。かなり縮小された弦楽器群。
テツラフのCDはモーツァルト:弦楽三重奏のディヴェルティメント(EMI/2001)、ハ長調の弦楽五重奏(Avi/2005)などを持っているが、実演では初めて聴く。小柄で一見すると少年のような感じ(実際にはそうではない)だったが、演奏はこれまでのイメージを覆す「過激な」ものだった。古楽器奏法でかなりアクセントを強調し、じっくり歌うことは少なく前進性を優先する。細かい音符がやや前のめりになりがちな点が気にはなったが、若々しく優れた演奏だったと思う。なお、第一楽章150小節前後のレチタティーヴォの処理は「楽譜通り」の演奏だった。
http://zauberfloete.at.webry.info/201112/article_27.html
アンコールはバッハのソナタからアンダンテ。こちらはしっとりとした、無条件で素晴らしい演奏だった。

ベートーヴェンでは弦は再び12型。先日のノリントンは4管編成だったが、木管各2、ホルン3、トランペット2(以上金管は現代楽器)と編成通り。弦の人数が多く音量も大きいので、強奏時には木管群が埋もれがちになる。
ヘンゲルブロックの指揮は全体的に速めのテンポ、ダイナミクスの幅も大きく、流れや歌もある。すっきりしていながら重みもあり、密度の高い見事な演奏だった。
そして弦楽器の厚みと、しなやかで美しい木管楽器、安定した金管、それに、オケ全体を包み込むように支えていた素晴らしいティンパニ。
熱狂的というよりは静かな感動を呼び起こす名演だったと思う。素晴らしかった。

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!

ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。

→ログインへ

なるほど(納得、参考になった、ヘー)
驚いた
面白い
ナイス
ガッツ(がんばれ!)
かわいい

気持玉数 : 0

この記事へのコメント

この記事へのトラックバック

  • ヘンゲルブロック=ハンブルク北ドイツ放送交響楽団

    Excerpt: 「プレミアムシアター」、今回はヘンゲルブロック指揮ハンブルク北ドイツ放送交響楽団の演奏会。曲目等は下記の通り。 ○メンデルスゾーン:ヴァイオリン協奏曲ホ短調作品64 ○プロコフィエフ:無伴奏ヴァイ.. Weblog: Zauberfloete 通信 racked: 2015-09-14 22:53
  • エルプフィルハーモニー 杮落し演奏会

    Excerpt: 録画しておいた「プレミアムシアター」を観た。今回はハンブルクに新しくオープンしたエルプフィルハーモニーのこけら落とし公演の模様。 これまで、ヘンゲルブロック=北ドイツ放送響の演奏は、実演、テレビなど.. Weblog: Zauberfloete 通信 racked: 2017-05-04 23:12