ハイドン:交響曲第90番ハ長調

来週の演奏会でこの曲を演奏する。
1788年から89年に作曲された交響曲第90番から第92番までの三曲は、ハイドンが自筆譜に「ドニィ伯爵殿下のために」と記しているように、フランスのドニィ伯爵の注文によるもので、伯爵が理事の一人を務めていたと思われるコンセール・ド・ラ・ロージュ・オランピックの演奏会で上演されたと推測されている。なお、この第90番が作曲されたのは1788年とされており、この年の夏にモーツァルトは三大交響曲を作曲している。
交響曲第90番は演奏される機会はほとんどないものの、ハイドンの創作における「古典的完成期」の最後を飾る名曲と言うことができる。
第一楽章:主部のテーマが組み込まれたアダージョの序奏で開始される。それに続く主部はアレグロ・アッサイ、明るくリズミックな第一テーマと、フルートとオーボエによる優しく流れるような第二テーマの対比が鮮やか。
第二楽章:変奏/ロンド形式によるアンダンテ。へ長調とへ短調の二つのテーマから構成されている。
第三楽章:フランス風の優雅なメヌエット(ハイドンはわざわざMenuetとフランス風の表記を用いている)。トリオではオーボエが大活躍する。
第四楽章:アレグロ・アッサイ。単一テーマによる自由なソナタ形式で書かれている。そしてこの曲の後半、音楽は完全に終止したように見せかけて4小節間沈黙する。その後、(ハ長調から)変ニ長調へ転調し長いコーダが続く。

以上のような構成を持っており、知られざる名曲としてだけではなく、コンサート会場でのサプライズが期待できる仕掛けが組み込まれている。
私が初めてこの曲の素晴らしさ/面白さを知った(この曲のディスクは持ってはいたが)のは、2007年夏に発売されたラトル=ベルリン・フィルによる演奏を聴いたときのこと。
http://zauberfloete.at.webry.info/200708/article_13.html
http://zauberfloete.at.webry.info/200708/article_18.html
http://zauberfloete.at.webry.info/200802/article_13.html
それまでの他の演奏とはまったく次元の異なる画期的な演奏であり、鮮烈で切れ味が鋭く、伸びやかに生き生きと躍動する音楽・・・。ハイドンの交響曲に新たな生命を吹き込んだとも言える衝撃的な演奏だった。その後、何回繰り返し聴いたことだろうか(ここ数年で最も回数多く聴いたディスクだと思う)。
ラトルは1990年にバーミンガム市響とこの曲をEMIに録音しており、2003年9月ベルリン・フィルとの演奏会においてこの曲を採り上げ(DiscLosure Classicsから海賊盤が出ている)、さらに2007年の2月にハイドンの交響曲(と協奏交響曲)だけの演奏会を行っている(上記EMIの2枚組セットはこの時のライブを中心に編集されている)。ラトルはハイドンへの思い入れも少なからずあるようで、ライナーノーツで次のように語っている。

私はハイドンこそ今日おろそかにされている作曲家の中で最も偉大な存在だと感じています。彼が生涯に生みだした作品は質と量において驚異的であり、創意や知性、ユーモアや深い情感を備えた宝の山なのです。そうした奥深さは、明瞭に示されるよりは、少しばかり垣間見えるからこそ魅力的なのです。あたかもそれらの音楽が、背後の暗闇の存在を理解するには、その影に気づけば充分なのだということを知っているかのようです。

そして、この交響曲第90番について次のように語っている(なお、このディスクには第4楽章の拍手あり/なしの2つのバージョンが収録されている)。

200年以上も経って、なおも冗談のオチが効果的であることは多くありません。しかし、聴衆は譜面に書き込まれたこの偽りの終結部に(繰り返しがあるので二回聴くことになります)、必ずつかまります。一回ならず二回欺かれたと知ったときの聴衆の反応も、それ自体この音楽の一部であり、必要不可欠と言えるものです。もっとも、私たちは、自分たちも欺かれてみたいというリスナーのために、終楽章を客席の反応なしに聴けるようにもしてみました。とはいえ、咳やマナー違反の携帯電話とはちがって、聴衆の発するこうした音は、目に見えない形ではあっても、スコアに書き記されていると私は考えます。あるいは、仮にハイドンが今の世に交響曲を書き続けていたら、きっと携帯電話も楽器に含めたことでしょう。

音楽が終わったと思って聴衆は拍手を始めるが、実は音楽はまだ終わっていない・・・。
指揮者が拍手を制止するのか、拍手が終わってから再び音楽を開始するのか、あるいは別の演出になるのか、どのようになるのかは当日になってみないとわからない。

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