ポストホルン セレナーデ

秋の演奏会のアンコールで、「ポストホルン」セレナーデから第4楽章(ロンド)を演奏することになった。
団が所有していたパート譜はブライトコプフ版。念のためベーレンライター版を参照しつつ確認したところ、ファゴット・パートのダイナミクスの間違い、フルート・オーボエのアーティキュレーション他に一部相違があった。また、ブライトコプフ版はいつもながらスコアとパート譜の間にも食い違いが見られる。
ベーレンライター版がモーツァルトのオリジナルに最も忠実とは思われるが、モーツァルト自身が敢えてアーティキュレーションを書き入れていない場合や、書き間違い/書き忘れなどもないとは言えないので、全面的に盲従することもどうかと思う。
とりあえず演奏を聴いてみることにした。
手元にあるCD約20枚の内、下記の主要な10枚を聴いてみた。なおアーノンクール盤も持っていたはずなのだがどうしても発見できなかった。
●ベーム=ベルリン・フィル(DG/1971) 6:12
私の永遠の愛聴盤。すみずみまで知り尽くしている演奏と思ったが、あらためてスコアを見ながら聴いてみると意外にいいかげんに聴いていたことがわかる。とはいえゴールウェイとコッホの演奏はとにかく素晴らしい。この中では最も古い録音ではあるがまったく不満はなくひじょうに美しい。
http://zauberfloete.at.webry.info/200602/article_20.html
http://zauberfloete.at.webry.info/200801/article_5.html
●アバド=ベルリン・フィル(SONY/1992) 5:38
かなり速めのテンポ(10種類の中では最速)で、ベルリン・フィルは上手いが味付けも薄い。フルートとオーボエはクレジットされていないが、オーボエはおそらくシェレンベルガーと思う。フルートの方は録音時期からパユではないと思うが、ブラウともちょっと違う感じがする・・。なお、225~227小節の休符をフルートとオーボエで埋めるというのは画期的。
●ヴァント=バイエルン放送響(Profil/1978) 5:45
1978年10月ミュンヘン、ヘラクレスザールでのライブ。美しいフルート、この頃の首席のグラフェナウアーではないかと思う。なかなか堅実な演奏。ヴァントは今回採り上げなかったが1982年のベルリン・フィルとのライブ(ロンドの演奏時間は5:40)もあり、それも含め一貫した確固たる解釈を持っているようである。
●ディヴィス=バイエルン放送響(Novalis/1986) 6:14
ディヴィス最初の録音で、かなりゆったりとしたテンポ、全体に気品ある格調高い演奏。オーボエは次の1992年録音ともどもクレメントであることが某HPで明らかにされている。この録音の方が厚いリードで強靭な音色で私好み。フルートも美しいが1978年の録音に比べるとやや地味な音色。
●ディヴィス=バイエルン放送響(BMG/1992) 5:40
1992年6月20日ヴュルツブルク、カイザーザールでのライブ録音。残響豊かなホールの違いはともかく、同じ指揮者とオケとは思えない演奏。テンポも速めだしオケも何となく粗い。クレメントも柔らかめの薄いリードで音色は少なからず異なるがやはり上手い。なお、55小節の装飾音符は前録音と同様短めに吹いている。
●ヴァント=北ドイツ放送響(BMG/2001) 5:44
最も新しい録音のワリにはあまり冴えないのはオケの違いのせいか。フルートはやや地味、オーボエはなかなか美音で上手い。音楽づくりは1978年のバイエルン放送響とほとんど同じ。
●ヴェーグ=ザルツブルク・モーツァルト・カメラータ・アカデミカ(PHILPS/1988) 5:51
フルート:ニコレ、オーボエ:ホリガー、ファゴット:トゥーネマン他の豪華メンバーが協演。全般的にヴェーグの指示なのかコントロールの行き届いた丁寧な演奏。ホリガーはさすがにある意味では見事な演奏だが、音色がドイツ的なものとは縁遠く、異なる楽器のような感じ。ニコレはさすがに味のある素晴らしい演奏をしている。
●ボスコフスキー=ウィーン・モーツァルト合奏団(DECCA/1973) 6:27
テンポは極めてゆったりとしており、特にオーボエとホルンは、この時代のウィーン・フィルならではの他とは全く異なる独特な味の濃い音色が聴ける。冒頭のフルートは晴れやかで伸びやかでひじょうに美しい(おそらくトリップと思う)。
●レヴァイン=ウィーン・フィル(DG/1982) 6:01
約10年後の録音でありながら、オケ全体の音色がグローバル化している。楽器(の仕組み)は変わっていないのだろうが、ウィーン風の個性は薄められ普遍的なものになっている。また、この頃のモーツァルト交響曲全集と音づくりは同じで、やや乾いた響きで録られている。なお、ボスコフスキー盤と同様、170、171小節のオーボエのトリルを省略しているのはウィンナ・オーボエの事情によるのか、ウィーン・フィルの楽譜のせいなのか。
●マリナー=アカデミー室内O(PHILIPS/1984) 6:01
フルートは上手いが、オーボエはやはりイギリスの音色でやや興醒め。マリナーらしい(?)無難な演奏だが、228小節のフェルマータの長さとその後を徐々にアッチェレランドしていくやり方は個性的だった。

こうして聴いてみると5~6分の曲ではあるが、各演奏はそれぞれ特徴があって面白かった。
まず冒頭のフルートのフレーズ(8小節と一拍)をブレスなしで吹き通せるか、55小節のオーボエの装飾音符をどう吹くか、86、90小節の2ndフルートのフレーズの吹き方、その前後の1stフルートの装飾音符の奏し方、121小節のオーボエの装飾音符を付けるかどうか、131小節以降のフルートの装飾音符の奏し方、163~164小節の2本のオーボエのオクターブの持って行き方、189小節以降のフルートとオーボエの十六分音符八個のアーティキュレーションの付け方、そして最後228小節のフェルマータからフルート・オーボエのユニゾンによる次のテーマへのテンポなどなど、演奏する側にとってのポイントは数多い。それにしても87、91小節第四拍目のファゴットのFisは、楽器の特質とはいえ、ほとんどすべての演奏でことごとく高めになっていた。

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