「音楽家の 身体メンテナンスBOOK」

原書は下記の通り。
THE MUSICIAN'S BODY:a maintenance manual for peak performance
by Jaume Rosset i Llobet,edited by George Odam
Ashgate; illustrated edition edition (30 Jun 2007)
http://www.amazon.co.uk/Musicians-Body-Maintenance-Manual-Performance/dp/0754662101#_
日本語訳は中村ひろ子により春秋社から2008年12月に出版されている。
著者のジュベットはバルセロナ大学で医学博士号を取得、専門はスポーツ医学&整形外科、1990年代バルセロナ近郊のマンレサ総合病院で音楽家のための医療にかかわるようになり、2001年には芸術医学部を創設、現在はテラッサ芸術医学生理学学院医学部長。オーダムはギルドホール音楽演劇学校の調査人材教育部門長。

このような本が存在すること自体、私はまったく知らなかったのだが、一読してこれはプロ/アマ関係なく鍵盤管弦打楽器を演奏する人にとっては必読の書のように思えた。身体の機能と構造を知ること、ウォーミングアップ/クールダウンやトレーニング/練習の仕方をマスターすることは、スポーツ選手だけではなく楽器をやる人にとっても同じように必要になると思うからである。

以下、はじめに の要約。
・音楽の演奏には、心と身体の最高の部分をあわせて心と表現と肉体を巧みに組合わせることが求められている。音楽家なら誰でも楽曲を勉強して演奏する訓練は十分に積んでいるが、肉体的なことについては、楽器の持ち方程度に限られていることが多い。
・音楽家にとって常に最高の演奏をするためには、自分の身体の状態や身体が何を求めているかを意識することが大切である。
・このようなことを認識しているとしても、スポーツの世界に比べると実際に何かをする人は少ない。長時間練習が身体にどんな悪影響を及ぼすかなどろくに考えもせず、ただひたすら練習に励んでいる。そして身体の故障というものはだいたいが長時間練習で起こることが分かっている。

以下目次。
基本的な機能 / 音楽家の問題点 / 身体と楽器の調和 / 楽器と環境 / 身体の構造 / 心と音楽 / トラブル解決法

以下、基本的な機能 の章から一部抜粋。
ここでは筋肉の構造、脳の働きと記憶の構造、呼吸のメカニズムなどが述べられる。
練習の仕方については、下記のようなポイント(例)があげられている。
○一度に長時間練習するより、長時間にわたって短時間の練習を重ねる方が身に付きやすい。
○曲も、練習するところも順番を変える(心身ともに良い状態で練習できる箇所を分散させる)。
○楽譜なしでうまく弾くたった一つの方法は、楽譜なしで練習することである。

上記の例はソリスト向けのものであるが、私にとって、この本の中でいくつか認識を新たにした箇所を次に引用する。
●どの楽器についても、椅子は十分な奥行きと幅を持ち、大腿全体と腰を支え、膝が90度以上に保たれなければならない。膝から床までの高さより2~5センチ高い椅子ならこの条件を満たす(さらに、15~20度座面が前傾していると骨盤が動くのを防ぎ、脊椎がよりよい位置に安定する)。

→現在私が所属しているオケの練習場は、小学校の多目的室であり椅子も小型なため、上記の条件をまったく満たしていない。このため、これからはクッションを用意することにした。

●楽器の運び方や持ち方が、常に適切とは限らない。たとえば、クラリネットをケースに入れて30分持ち運ぶことが、数時間の練習より前腕の筋肉に負担をかけることもある。
負担をかけないためには、楽器の重みをできるだけシステマティックに配分すること。幅の広いストラップを使う、繊細な手の筋肉より強い背筋を使うよう心がけること。それが無理なら重みが均等にかかるようにして運び、ケースを持つ手を頻繁に替えること。
●楽器をどのようにして運ぶか(一部省略/要約)
この情報が必要なのはコントラバス奏者とハーピストだけのように思われそうだが、ピッコロケースの持ち方でも演奏の質に直接関連したり、そこから手の故障が起きたりすることはありうる。どんな楽器を弾く人も、以下に注意しよう。
1.どんなに軽そうに見えても、荷物を長時間手で持つのは避ける(楽器ケース、本、バッグ)。手を握って筋肉が縮んだままでいると、筋肉や腱に酸素と栄養分を運ぶ血管が締め付けられ、30分クラりネットを吹くより疲れる恐れもある。楽器を運ぶにはバックパックを使うことを考えよう。
2.できるときは必ず、荷物は肩か背中にかけて運ぶ。手で持たざるを得ないときは、まめに持ち替える。
3.重みは、バックパックのストラップを利用して両方の肩に分散させる/リュックのように背中に背負う。
4.ケースにストラップが1本しかなかったら、斜めがけにしてまめに左右を入れ替える。
5.ストラップは幅の広い、クッションの入ったものに。そうすれば筋肉を圧迫したり、肩の皮膚を傷めることがない。
6.ストラップの長さを調節して、できるだけ身体にくっつけて、背中の下の方、お尻に近いところに背負う。こうすると、身体の重心を保ち筋肉の緊張を防ぐことができる(可能ならケースをウエストから腰に付け、重さの主要部分を肩や脊椎からより強い部分に移そう)。
7.楽器ケースやバックパックはできるだけ軽くしよう。軽量ケースを買い、当面使わない楽譜は出し、一番重いものはケースの底、持つとき身体に一番近くなる部分に入れよう。
8.体重の10%を超える荷物は持たないように。それより重かったら、キャスターのついたものを使うことを考えよう。
9.キャリーケースは後ろに引くより、自分の前で押した方がよい。抵抗の関係で引くより押すときの方が身体の近くに置けるので、その方が背中のためにはよい。

→私も、スーパーライトケース
http://zauberfloete.at.webry.info/200804/article_12.html
と、軽量譜面台
http://zauberfloete.at.webry.info/200908/article_15.html
を使用してはいるが、ケースを背負うことはできないし、ショルダーストラップもあまり使用していない。が、この記事を読んで、これまで使っていなかったクッション入りのストラップを出してきて少し調整し使用することにした。
それにしても、いつもの練習時、私はおそらく体重の17~18%くらいの荷物を持ち歩いている。筋肉や腱にかなりの負担をかけていることだろう・・・。

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  • 楽器ケース ショルダーストラップ破損

    Excerpt: 「音楽家の 身体メンテナンスBOOK」 という本を読んで以来、楽器は手に持たずにストラップを肩にかけて持ち歩いていた。 http://zauberfloete.at.webry.info/20110.. Weblog: Zauberfloete 通信 racked: 2012-07-24 23:10