モーツァルト:弦楽三重奏のためのディヴェルティメント変ホ長調K563

1788年9月27日(ウィーン)の日付を持つこの曲は、モーツァルトの友人でありウィーンの商人であったミヒャエル・プフベルクのために書かれたと言われている。1788年の夏といえば最後の三大交響曲を作曲した時期であり、この作品はその直後に作曲されたことになる。モーツァルトにとって唯一の弦楽三重奏曲であり、弦楽五重奏曲とともに最も円熟した室内楽作品となっている。
アルフレート・アインシュタインはこの曲を「この世で耳にすることのできるもっとも完璧で、もっとも繊細な曲だ」と評したが、娯楽性のあるディヴェルティメントとアカデミックな室内楽の絶妙なバランスを保ちつつ、そのプロポーションの美しさは比類がなく、ジャンルを超えた不朽の名作と言えると思う。

各パートにはコンチェルト並みの高度な技術が要求されるためか、演奏される機会もあまりなくディスクも多くはなかった。私が持っているのは下記の通り。
●パスキエ・トリオ(ERATO)
●グリュミオー・トリオ(PHILIPS/67)
●キュッヒル/シュタール/バルトロメイ(DECCA/1980)
●クレーメル/カシュカシアン/マ(CBS/1985)
●フェルナンデス/寺神戸/ツィッペリング(Brilliant/1991)
などを聴いてきたがどれも満足することはできなかった。そこへ登場したのがアルノルト・シェーンベルク・トリオによる演奏。
●クスマウル/クリスト/ファウスト(CAMPANELLA/2000)
完璧なテクニックと艶やかで伸びやかな美しい音色のクスマウルに加え、クリストとファウストによる絶妙なトリオは天国的に美しい演奏を行っており、空前絶後の名演となっている。
その後録音された、
●ベンヤミン・シュミット、アントワース・タメスティ、ヤン・フォーグラー(SONY/2005)
によるディスクも捨て難い演奏ではあったが、クスマウル盤の完成度には及ばなかった。
そして、今回購入したのは名手ツィンマーマンが弾くこの曲。
http://zauberfloete.at.webry.info/201012/article_9.html
●ツィンマーマン、タメスティ、ポルテラ(BIS/2009)
全体的な印象としては、クスマウル盤より若々しく伸び伸びとした演奏と思う。ツィンマーマン始め皆、テクニック的にももちろん完璧で、ところどころ余裕の遊び心もみせる心憎い演出となっている。録音も極上で三人が演奏している空間の広さまでが感じられるような美しい響き・・。
(2/28追記)
とは書いたものの、個人的にはやや定位が安定しないとは思っていた。たまたま今日発見した下記ブログにそのようなことが書かれており、やはりそう感じたのは私だけではなかったと安心した。
http://ameblo.jp/classics-audio/entry-10747779231.html

タメスティは2004年ミュンヘン国際コンクール第一位、シュミット盤でもヴィオラを弾いている。他にシューベルトの変ロ長調D471のトリオも収録されている(SACD HYBRID盤)。

それにしても、この曲の終わり方(終楽章特に最後の9小節)は誰もが予想もしなかったような見事な(というかあっけない)ものだと聴くたびにいつも思う。

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この記事へのコメント

KAYO
2011年02月28日 00:36
K.563 はまだ聴いてない曲でした。あわてて伯父に電話したら、もっていたので、数日中に借ります。
教えていただき感謝致します。
音楽ブログ Langsamer Satz にコメントしました。よろしければ読んでいただけますか。ひどい内容なんで笑われるでしょうね。・・・・
2011年02月28日 23:07
KAYOさま
K563は、モーツァルトのベスト10に入る傑作だと思いますし、モーツァルト以外では決して書けなかった曲だと思います。
ヴァントに関するコメント読ませていただきました。nailsweetさんも、そしてKAYOさんも、音楽に対する確固とした自分なりの判断/受容基準や視点、見識を持っておられ、また、豊かでかつ鋭い感性を持っていらっしゃると思いました。羨ましい!
それに比べると、私のブログの文章はあまりに即物的すぎて恥ずかしいです。もともと単純な人間のため、好き嫌いしか判断基準がないのかも知れません。
KAYO
2011年03月04日 01:11
ほめすぎですよ。でも、うれしいです。

元カレとヨリをもどしたくて、思案中なのです。夫が知ったら、怒るでしょうね。

吉田秀和さんの「永遠の故郷 夕映」を購入しました。ウーラントの詩「春を信じて」は、学生のころ訳した経験があります。なつかしい。
私は先訳に従って、「春の信仰」としましたが、「信じて」のほうが良いと思いました。

「夕映」とは、シュトルベルク伯の詩からサブ・タイトルにしたのかな?
私のイメージだと「夜」はノヴァーリス、「薄明」はシュティフターを評したトーマス・マンの言葉、そして「真昼」はニーチェ。・・・まだ読みもしない本のことから、勝手な想像に耽っています。
2011年03月07日 00:19
KAYOさま
いつもコメントありがとうございます。音楽ばかりかドイツ文学にもお詳しいようで(と言いますか、いかにも一般教養として身につけていらっしゃるかのごとく当たり前のようにお話になるので)、ますます尊敬してしまいました。私もせめてシューベルトの歌曲くらいは少し勉強したいとは思っています。「冬の旅」だけではKAYOさんとお話できないので・・。
KAYO
2011年03月08日 19:32
K.563 きょう聴きました。きれいな曲ですね。最初はハイドンの「ひばり」みたいと感じました。終楽章になると春への憧れにつながるような旋律が歌われ、透明感が増す。濁りのない曲調がハイドンから一歩ぬきでて、淡白な終わりは歌の終わりかなと思いました。
伯父から他に2枚借りました。
シェバノワの弾くショパン「ワルツ集」。それとマイケル・ティルソン=トーマス指揮サンフランシスコ響の、ベートーヴェン「運命」ほか。
シェバノワさんはこないだ亡くなられたそうで、まだ未聴です。
ベートーヴェンのほうは、誠実な演奏を優秀録音がとらえていて、感銘をうけました。
第1楽章の展開部のまんなかへん?に、ファゴット・ソロがありますよね。一瞬だけど。あれが意識に「ひっかかった」のは、初めてです。
私はクリュイタンスの全集が好きですけれど、今まで、あそこを意識が捉えたことはなかったです。あれはオーボエ・ソロ(カール・シュタインス?)が凄すぎましたから、そっちしか聴いてなかった。・・・
長いコメントになり申し訳ありません。



ノブ吉
2015年07月20日 15:33
初めまして。私は室内楽を愛する一人です。
この曲の大変魅力的な演奏を紹介します。
デュメイ、コセ、ホフマンによる演奏は、この曲の魅力の幅を広げるものと思います。
まず、デュメイの明解かつ憂いを持った演奏に、他の二人が絶妙なサポートをしています。
残念ながら、これほどの名盤であるにも関わらず、すでに廃盤になってしまいました。
この演奏に接する事ができて大変幸せです。
2015年07月21日 22:36
ノブ吉さま
コメントありがとうございます。
ご紹介のCD、私も持っていることを思い出しました。3枚組の中の1枚だったため記憶に埋もれていたものと思われます。今度探して聴いてみます。

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  • 極上のモーツァルト~弦楽トリオ演奏会~

    Excerpt: 東日本大震災復興支援チャリティコンサートとして開催された弦楽トリオの演奏会を聴いた(渋谷区文化総合センター大和田 さくらホール)。 曲目と演奏者は下記の通り。 ●モーツァルト:ディヴェルティメント.. Weblog: Zauberfloete 通信 racked: 2011-07-20 00:44