モーツァルト:ピアノ協奏曲第23番イ長調K488~聴き比べ その8 グリモー V.S.サイ~

今回はエレーヌ・グリモーとファジル・サイという期待の若手。
なお、サイは正規盤だが、グリモー(ザンデルリンク=バイエルン放送響)は海賊盤のライブ録音。音質的にも水準以上でとにかくオケが素晴らしい名演を繰り広げる。
●グリモー/ザンデルリンク=バイエルン放送響(sardana/1997.5) <11'00"/7'01"/7'41">
公式録音ではない、いわゆる海賊盤。同日に録音されたモーツァルト:交響曲第25番が組合わされている。録音はすばらしく良い。
この曲の演奏の既成概念を打ち破る、若々しくおおらかでのびやかで自由な演奏。バイエルン放送響、特に木管は見事な演奏(ホルンも上手いが、さすがに完璧ではない)で、弦楽器ともどもピアノと完全に溶け合った素晴らしい音楽となっている。
第一楽章冒頭、弦楽器に応える木管群、フルートのEの音色の美しさに聴き惚れる(この時代の首席は誰だったのだろうか)。ピアノも音色はやや明るめだが粒のそろった美しいタッチ。153小節あたりで一瞬ためらう仕草もみせるが、基本的にはインテンポ。ややペダルを多用しているのか豊麗な響き。
そしてフルート、クラ、ファゴット、そして時にはホルンまでセクション全体が一体となった音色で聴こえてくる。弦楽器も包み込むような暖かい音色。なお、クラリネットセクションの演奏を聴いていて、弦楽器群より、本当にごくわずか早めに発音することが全体の心地よい響きにつながるような印象を受けた。
52、120、250小節の3回続くフレーズはどれもダイナミクスは同じ。カデンツァはモーツァルト作ではなくオリジナルか・・。
アダージョは遅めのテンポ。しっとりとていねいに、しかし感傷的にはならず優しく歌われていく。禁欲的な中、66小節のGからDへの跳躍の間にアルペジオが添えられている。木管の対話はとにかく美しい。51小節のフルート、3拍目のCis、6拍目のDをテヌート気味に強調するやり方は効果的。
ほとんどアタッカで終楽章に入るが、グリモーの開始はフォルテ全開で前進あるのみというかなり大胆な弾き方(441小節はやや抑え気味に弾いている)。このフレーズがこのように弾かれるのは初めて耳にする。
9小節目からのオケのトゥッティは一瞬、ピアニストの勢いにひるんだ感じも垣間見せるがすぐに持ち直す。とにかく、一度走り出したら振り返ることはなく、その音楽の自然な流れはすばらしく見事。98小節から、そして129小節からのピアノの左手と右手のかみ合い方、バランスは最高、そして151小節からのピアノとオケ(特に管楽器の二拍目の二分音符の強調)の一体感は素晴らしい。なお、265小節クラリネットの装飾音符は四分音符相当の音価、続くピアノも同様。
●ファジル・サイ/グリフィス=チューリヒ室内O(naive/2004.7) <10'11"/6'09"/7'54">
ファイの演奏ということでどんなに変わった演奏かと期待したが、以外に大人しい演奏でやや期待外れ(?)となった。ピアノの音色はやや軽い音色だが、テクニック的には正確無比の演奏となっている。52小節の木管は第3回目をやや弱くするという奏法。96小節あたりをかなり弱く演奏している点、154小節からのクレッシェンドが印象的。カデンツァはモーツァルト作、ただしこの弾き方が独特でかなりエキセントリックだった。
第二楽章はピアノの音色も美しい。ただしテンポはかなり速め、そして10,21,62小節を「本当に」スタッカートで弾いている。確かにこれらの音符にはスタッカートが付いているのだが、慣用的な演奏だと、あまりスタッカートでは弾かれることはない。それだけに初めて聴いた耳にはやや違和感を感じる。終楽章もやたらに速くはない。129小節からの弦楽器による二分音符はかなり短く、アクセントが付けられている(以降も同様の扱い)。また、157小節からの受け渡される管楽器による3回のフレーズにクレッシェンドが付けられているのも面白い。265,273小節の前打音は両者とも完全に四分音符(+四分音符)で演奏されている。

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