モーツァルト:ピアノ協奏曲第23番イ長調K488~聴き比べ その3 ピリスの新旧録音~

ピリスは1970年代、エラートにモーツァルトの第9番以降のコンチェルトを録音していた。指揮はグシュルバウアー、ジョルダンなど。その後、ドイツ・グラモフォンに移籍してから1990年代初め、アバド=ウィーン・フィルとの第14・26番、アバド=ヨーロッパ室内Oとの第17・21番のディスクが発売されたが、私の知る限りそれ以降は録音のニュースも聞かない。
そしてずいぶん時間が経ってから発売されたのが、With Passionと題された2枚組のアルバム。
http://zauberfloete.at.webry.info/200705/article_21.html
今回は1975年にされた最初の録音と聴き比べてみる。
●ピリス/グシュルバウアー=リスボン・グルベンキアン室内O(ERATO/1975) <11'13"/7'15"/7'56">
ピリスのピアノが素晴らしい。粒が揃ったクリアなタッチ、弱音を効果的に用いつつ意外なところで思い切りアクセントをつけるピリスらしい音楽づくり。音色もDENONに録音したソナタ集に通じるこじんまりした心地よい響き。ターンなどの歯切れの良さは他では聴けない。が、DGに移った後は普通のピアノの音色に近くなってしまったと思うのは私だけだろうか。
第一楽章、52小節からの木管のフレーズは3回とも同じダイナミクス。カデンツァはモーツァルト作。模範的と思える素晴らしい演奏。
アダージョは限界の遅さとも思えるほどのゆっくりした歩み。が音楽が弛緩することはない。46小節より47小節をさらに強く弾くという解釈。76小節からはpppまで落としている。
終楽章は爽やかで心地よい絶妙なテンポ。オケはやや非力なところもなくはないが一応の水準。129小節からのピアノの右手の強調は音楽の流れとも合致し素晴らしい効果をあげる。265小節のクラリネットは四分音符二つの演奏法、その後のピアノももちろん同様。
●ピリス/ブリュッヘン=ザルツブルク・モーツァルテウムO(DG・ORF/1995) <11'16"/6'29"/8'32">
ブリュッヘン=モーツァルテウムOという異色の組み合わせ。オーケストラはやや古楽器的な奏法を取り入れた独特の鳴り方。ピアノの音色はやや異なるが基本的には旧録とほぼ同じ解釈。52小節の木管のフレーズは3回とも平板に演奏されているが、120・250小節のピアノとの対話では二回目をフォルテにしている。79小節を思い切り弱くするのは旧盤と同様。98・228小節からのフレーズは、オケがその前で遅くするせいか、ややテンポ感のズレが感じられる。カデンツァはモーツァルト作。第一楽章が終わった後の会場ノイズで初めてこの録音がライブ(1995年ザルツブルク音楽祭)であることを確認する。
アダージョは旧盤と同じくらいのゆっくりとしたテンポで開始されるが、今回は一定のテンポではなく、数小節を大きくとったフレーズ内の揺れがあり、かなりロマンティクな演奏になっている。37小節後半の大きなクレッシェンドは効果的。また、今回も46小節より47小節を大きく弾いている。
終楽章は旧盤よりもやや安全運転気味。それでも木管群との対話はブリュッヘンの指示なのか、かなり丁寧に構築されている。265小節の前打音は旧盤と同じ長い奏法。

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