グリモー&ヤルヴィ/皇帝

ピアノ:エレーヌ・グリモー、パーヴォ・ヤルヴィ=フランクフルト放送交響楽団の演奏によるベートーヴェン:ピアノ協奏曲第5番変ホ長調「皇帝」を観た(2008年6月3日サントリーホール)。この数年間に観た「皇帝」の中でも飛び抜けて優れた演奏だったと思う。
グリモーはもともとドイツ系の音楽を得意にしているが、今回のベートーヴェンも格調高く音楽的で極めて緊張感のある名演だった。まず、その弾き姿が素晴らしい。背筋をピンと伸ばし凛とした美しさが感じられる。過度に感情移入することなく、それでいてひじょうに繊細でデリケートなところを随所で気づかれないように垣間見せる。出てくる音も十分なダイナミクスのレンジを持ちながら、美しくよく歌う。指揮はポイントでしか見ていないようではあったが、感心したのはグリモーがよくオケを聴き、それにさりげなく合わせていること。特に第一楽章中間あたりの木管群の中でメロディが受け渡され、それにピアノが寄り添うところ、結構ここはズレることが多いのだが、グリモーはぴったりとつけていた。カデンツァの終わり直前、ホルンにメロディを受け渡す絶妙な間の取り方とタイミング、楽章間にみせる優しい微笑み・・。
第二楽章の禁欲的なまでの深い沈潜と祈り・・。そして終楽章の開始、期待は見事に裏切られ、何と自然で静かにそのテーマが開始されたことか。大見得を切ってこれ見よがしに弾く人が多い中、グリモーはあえてそうすることなく、自分なりの主張を聴かせてくれた。この開始を聴いた瞬間、ザンデルリンク=バイエルン放送響のバックでグリモーがモーツァルトのイ長調(K488)を弾いたディスク(海賊盤)の終楽章の開始を思い出した(両者はまったく同じアプローチ)。
全般的にちょっとクールでありながら、優しく、熱い演奏を聴かせてくれた。よく考えられた大人のベートーヴェンだったと思う。こんなに素晴らしい演奏は滅多に聴けるものではない。録画しておかなかったことが悔やまれる。
忘れてはならないのはヤルヴィの指揮。
ドイツ・カンマーフィルの演奏を聴いて以来、この指揮者はただ者ではないと思っている。
http://zauberfloete.at.webry.info/200607/article_11.html
今回もよく見ていたが、かなり挑戦的でやりたい曲想を表現した見事な指揮をする。以前同様、カルロス・クライバーを彷彿させるエキサイティングな指揮ぶりに、やはりベートーヴェンの指揮はこうであらねばと大いに納得した。
フランクフルト放送響も秀演で、特に弦楽器の人たちが一生懸命弾いている姿に好感を持った。

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    Excerpt: 今度の日曜の演奏会でこの曲を演奏する。ベートーヴェンの作品の中でも自主的に聴く回数が特に多いこの曲は昔から聴き込んできたが、実際に演奏するのは今回が初めて(これまでベートーヴェンのピアノ協奏曲は第3番.. Weblog: Zauberfloete 通信 racked: 2018-10-29 21:13