ハイドン:木管五重奏のためのディヴェルティメント 変ロ長調

木管五重奏をやったことのある人ならば、必ずと言って良いほどこの曲を演奏した経験があると思う。私も、高校時代にオケの仲間とこの曲を演奏したことを懐かしく思い出す。
最もよく知られているのは、ハロルド・ペリー編曲によるBOOSEY AND HAWKES版だが、この曲の原型については、あまり知られていないのではと思う。

ヨーゼフ・ハイドンによる<Feldparthien>と呼ばれる6曲からなるセット(Hob.Ⅱ:41-46)。Feldharmonieとはmilitary bandのことで、parthieとはpartita(=suite)のこと。つまり管楽器のための組曲で、このうちHob.Ⅱ41,42,43の3曲がオーボエ、クラリネット、ファゴット、ホルン各2本の八重奏、44,45,46の3曲がオーボエ2、ファゴット3、ホルン2、セルパン1の八重奏で書かれている。
なお、セルパンというのは金管楽器に似たマウスピースと木管楽器のような音孔を持つコルネット族の低音楽器(分類としては金管楽器)。蛇のような形に曲げられた長い円錐形をしており(serpentはフランス語で蛇の意味)、チューバ発明以前は金管の低音楽器としても使用されていた。
この6曲の組曲の中の旧番号でいうと第一番、Hob.Ⅱ:46(変ロ長調)というのがこの曲の原曲。もともと第二楽章には「聖アントニーのコラール」という副題がつけられており、このテーマを、後にブラームスが「ハイドン・ヴァリエーション」に用いたことはあまりにも有名。
(注)オリジナルの草稿は発見されておらず、ハイドンの真作かどうかは議論が分かれているという。

この原曲を含む6曲の組曲のCD、私はなぜか持っており、久しぶりにこのHob.Ⅱ:46を聴いてみた。演奏はファゴットのマンフレート・ザックスを含むチューリッヒ・トーンハレOの管楽器奏者たち(Jecklin/1973)。ここではセルパンのパートはコントラファゴットで演奏されており、そのせいもあり、かなり全体がおどろおどろしい響きとなっている。いずれにしてもオーボエ2、ファゴット3、コントラファゴット1、ホルン2という編成からはかなり「リードっぽい」響きになることが予想されると思う。

この原曲に対して木管五重奏編曲版は、原曲にほぼ忠実ながら、かなり響きがすっきりして見通しの良いものとなっている。今回、ウィーン管楽合奏団による「音楽時計のための作品集」というCDがタワーレコードによって復刻された。元々はDECCAによる1980年、ウィーン、ソフィエンザールでの録音。
モーツァルトの幻想曲へ短調(K594&K608)、自動オルガンのためのワルツに加え、ハイドンとベートーヴェンによるこの楽器のための小品、そして、このハイドンのディヴェルティメントが収められている。メンバーは、シュルツ、トゥレチェク、シュミードル、アルトマン、ファルトゥル。
演奏はさすがに往年(シュルツとシュミードルは現役だが)の名手たち、単純なこの曲に深みと奥行きを与えている。よく聴くとファゴットやホルンはペリー編曲の譜面とはやや違いもみられたが、概してほぼ同様。トゥレチェクの音色はやや枯れすぎているという印象も受けたが、シュルツやシュミードルはさすがと思わせるものがあるし、感心したのはやはりアルトマンのアンサンブルのツボを心得たバランスの取り方とウィンナホルンの音色。

この曲、これまで、アンサンブル・ウィーン・ベルリン(1980年代?)、アフラートゥス・クインテット(2006年)などの録音はあったが、私が以前から気になっているのはベルリン・フィル管楽五重奏団による幻の録音。ゴールウェイ、コッホ、ライスター、ピースク、ザイフェルトによって1970年6月3~5日、ベルリンでダンツィ、ライヒャ、シュターミッツなどの四重奏、五重奏が録音されたが、ライスターの回想記(「ベルリン・フィルとの四半世紀」音楽之友社/1987)によれば、この時一緒に、ハイドンの「聖アントニーのコラールによる五重奏曲」も録音したと記されている。もし現在でもこの録音がDGの倉庫に眠っているとするならば、ぜひ発売して欲しいと思うのは私だけではないだろう。

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