モーツァルト:ピアノ協奏曲第19番ヘ長調K459 ~その2 聴き比べ~

モーツァルト中期のピアノ協奏曲は、一応の演奏であればあまり注文は出ないのだが、この第19番に関してはいくつかのポイントがある。
まず、第1・3楽章での躍動感、愉悦感の表出、ピアノとオケ(特に管楽器)との対話と掛け合い、さらに緩徐楽章における陰影の演出など。
この曲の場合、オケは伴奏に徹することなく積極的に仕掛けて行かないといけない。その意味では編成の小さい室内オケに向いていると思えるが、聴き比べた結果必ずしもそうとも言えないことがわかった。
なお、下記以外に、アシュケナージ、シュミット、ラビノヴィチ、ハンは今回時間切れで未聴、ハスキル盤はどうしても発見できなかった。レコードでしか持っていなかったのだろうか・・。
●ポリーニ/ベーム=ウィーン・フィル(1976/DG)
古典的名盤。オケは中編成ながら機動性に富み、ピアノとのアンサンブルも素晴らしい。一世代前のウィンナ・オーボエの音色も懐かしく、ホルンもさすがに上手い。特に第二楽章終わりにかけてのテンポの落とし方は見事。ポリーニのピアノも硬質な音色だが美しい。
○ピリス/ジョルダン=ローザンヌ室内O(1978/ERATO)
ピリスのピアノは音色、タッチとも美しいが、伴奏オケが全般的に緩く、何とも重たい。
○ツァハリアス/マリナー=シュトゥットガルト放送響(1980年代/EMI)
部分的に聴くべき箇所もあるが、全般的に詰めの甘さが感じられる。が、オケ、特に管楽器は好みのトーンで聴き応えはある。
●ラローチャ/セガル=ウィーン響(1983/DECCA)
典型的なDECCAトーンで美しいピアノとオケ。ラローチャの演奏は暖かく、オケとのアンサンブルもかなり良い。特に不満がないということはそれだけでも立派な演奏なのだろう。
●ペライア/イギリス室内O(1984/CBS)
ペライアの音色、タッチがとにかく美しい。オケも指揮者はいないがよくピアノに付けている。ただし管楽器の音色はあまりにもイギリス的。
●シフ/ヴェーグ=カメラータ・アカデミカ・ザルツブルク(1987/DECCA)
オケの味付けはかなり濃い。テンポ、ダイナミクス、バランスなどひじょうによく考えられており、なるほどこういう演奏の仕方もあったのかと納得させられる。ピアノは適度にオケに寄り添い、ある時は自由。終楽章のカデンツァにK314終楽章の一節を取り入れるなど遊び心も見せる。
○内田光子/テイト=イギリス室内O(1988/PHILIPS)
内田のピアノは魅力的だが、オケが堅実すぎて躍動感に欠ける。このコンビならもっと優れた演奏ができるはずだが・・。
○バレンボイム/ベルリン・フィル(1994/TELDEC)
オケ、特に木管の音色はさすがにベルリン・フィル、ファゴットなどは文句のない美しさ。が、バレンボイム独特の少し崩した粘りのある語り口は音楽を停滞させ、愉悦感にも欠ける。
○フェルナー/カメラータ・アカデミカ・ザルツブルク(1997/ERATO)
若手ピアニストによるこじんまりまとまった演奏。主張には欠けるが無難な仕上がり。オケもヴェーグ盤と同じだがあれほど前面には出てこない。
ということで、一枚選ぶとするとやはりポリーニだろうか。とはいえ、ペライアはもちろん、シフもぜひ持っていたい一枚。

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