ベートーヴェン:交響曲第8番へ長調作品93~その2~

私が初めて演奏したベートーヴェンの交響曲は第8番だった。もう40年くらい前のことになる。
当時はまだクラシック音楽初心者で、せいぜい5番と「田園」くらいしか知らず、8番などもちろん知らなかった。音楽之友社のスコア(第6刷)は当時230円で、その時に一緒に買ったレコードは、セル=クリーブランドO(CBS)による17cmLP盤(500円)だったことを今でもよく覚えている。本当にこの演奏は何回聴いたか分からないが、その後CDに買い換えた以降はほとんど聴くこともなくなった。
私にとってこの曲の理想的名演は、ハンスシュミット・イッセルシュテット=ウィーン・フィルによる演奏(1968.9 ウィーン・ゾフィエンザール/LP:DECCA SXL-6396)。ウィーン・フィルにとって最初のベートーヴェン交響曲全集で、プロデューサはイッセルシュテットの息子のエリック・スミス、同時期に録音された第5・8番のレコーディング・エンジニアはケネス・ウィルキンソンだったと記憶する。今はなき(2001年に火災で焼失)ゾフィエンザールの美しい響きを十分に生かした典型的なDECCAトーンが聴ける。
イッセルシュテットの音楽作りは古典的で中庸、適正なテンポとバランスによる極めてドイツ的な演奏で、ウィーン・フィルの美しい音色、自主性を最もよく引き出し、特に第8番は全集の中でも最も優れた演奏の一つだったと思う。
その後、ベーム、バーンシュタイン、アバド、ラトルなどが指揮したウィーン・フィルによる全集がリリースされたが、この第8に限り、イッセルシュテットの演奏を超えるものは未だに現れていない。とにかくここでのウィーン・フィルの音色は限りなく美しい。すべての楽章での艶やかな弦楽器、ウィンナ・オーボエの特徴ある響き、特に第3楽章トリオでの深々とした素晴らしいホルン、ハリのあるティンパニ・・・。そして、忘れがたいのは第一楽章再現部から少し先、208小節あたりからの1stヴァイオリンの前打音がついたフレーズの歌い方。これ以上の優雅さはないと言うか、この演奏は何度聴いても本当にその美しさに魅了される。

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