吉田秀和氏

ETV特集「言葉で奏でる音楽~吉田秀和の軌跡~」(NHK教育)を感慨深く見た。
もう30年以上前、日曜の朝9時からNHK-FMの「名曲の楽しみ」を聴くのが私の日課(?)だった。当時放送されていた中で今でもはっきりと覚えているのは「モーツァルトの生涯と音楽」。毎回欠かさず聴いていたし、吉田氏の話に啓発されてアインシュタインやゲオンなどの著作を繰り返し読んだのもこの頃だった。
今回の番組は、吉田氏自身の語りにほとんどが費やされ、氏のファン(などといっては失礼だが・・)としては大変興味深く、また満足のいく内容で、ひじょうに充実した90分だった。私は吉田氏の著作をずいぶん読んでいる方だとは思うが、読むたびにその視点と分析の仕方の鋭さ、新しさに感銘を受けてきた。が、書かれた文章を読むのとは別に、吉田氏独特の落ち着いた語り口を耳にしていると、いつも、聞く者に対して説得力や安心感を与える不思議な力を持っているとつくづく思わされる。
今回の番組でも、いくつか刺激を受けた内容、表現があった。
○「芸術は手仕事」:確かに機械化されたら芸術ではありえないし、練習の積み重ねは手仕事以外の何者でもない。氏の原稿作成風景も興味深いものだった。手書きによる原稿はもちろん、手書きの楽譜とそれを切り取ってヤマト糊で貼る作業・・。
○「音楽と言葉はくっついている」:音楽は国境を越えた共通言語とは言われるが、歌詞のないフレーズであっても作曲家の頭の中で言語表現と結びついていたかも知れないし、作曲家の母国語のイントネーションとその音楽は無関係ではありえないと思う。
○「音楽を聴くためにより良い装置であることに越したことはないが、ある程度の装置で聴いてわからないものは、どんなに良い装置で聴いてもわからない」:オーディオ界では常に議論されてきたテーマであり、私自身も、より良い装置で聴く方が得られる情報量は絶対に多いと思ってはいるのだが、音楽の本質を聴き取るためにはある程度以上の装置で十分であり、そこから先は聴く側の耳の良さと音楽的資質に依るのだろうと最近は考えている。
○「この人の特徴はどこにあるかを一言で表現する」:評論家はもちろん、人や物事をみる際には最も必要とされる分析/表現力。結局のところ、人のどこに着目すれば他の人との違いが最もはっきりするのかを見極める、ということに尽きるのだろう。言うのは簡単だが・・。
「たとえ世界が不条理だったとしても」の話も出ており、本に書かれていた内容を思い出した。
http://zauberfloete.at.webry.info/200601/article_6.html
結局のところ、バッハ、モーツァルト、ベートーヴェンが自分にとって最も大切な音楽だ、とおっしゃっていたのは特に印象的だった。
これからもお元気であって欲しいし、執筆活動も続けていただきたいと心から願う。

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!

ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。

→ログインへ

なるほど(納得、参考になった、ヘー)
驚いた
面白い
ナイス
ガッツ(がんばれ!)
かわいい

気持玉数 : 0

この記事へのコメント

この記事へのトラックバック