「ミラノ四重奏曲」弦楽合奏版

モーツァルトが1772年秋から翌春にかけて作曲した6曲の弦楽四重奏曲(K155~160)は、その作曲時期が、オペラ「ルチオ・シッラ」初演のためのミラノ旅行にあたるため、「ミラノ四重奏曲」と呼ばれている。第1曲ニ長調から第6曲変ホ長調まで順次五度ずつ下がっていく調性をとっており、K80に次ぐ最初期の四重奏曲集ではあるが、6曲のうち4曲が短調の中間楽章を持っているなど独特の陰影、雰囲気を感じさせる。
さて、この曲集のうち4曲(K155・157・159・160)を弦楽合奏(5-4-3-2-1)で演奏したディスクがリリースされた。Cornelius Frowein指揮、Sinfonietta Koelnによる演奏(ANTES/2005)。
ミラノ四重奏曲集を弦楽合奏で演奏したディスクは、実はこれが初めてではなく、70年代前半にリリースされた、故ライナー・ブロックがプロデュースしたヴィーナー・ゾリステンによるK155・156・159・160の名盤(DG/1969)があった。私は弦楽四重奏で聴くより先にこの演奏に馴染んでしまい、繰り返し好んで聴いたものだった(この演奏はモーツァルト:セレナーデ&ディヴェルティメント集3枚組の中の一枚として国内盤で一回だけCD化された)。
さて、弦楽四重奏曲を弦楽合奏で演奏する根拠についてだが、私はモーツァルトの手稿を見ていないので断言はできないが、K158と159が「ディヴェルティメント」の標題を持っているという点、さらにモーツァルトによるパートの指定が「Violini/Viole/Bassi」となっている点、1770年代前半はクァルテットというスタイルがディヴェルティメントという形式から独立する過程にあったなどの点からも、弦楽合奏で演奏されても全くおかしくないものであると考えられる。通常弦楽合奏で演奏される有名なK136・137・138のディヴェルティメントを思い浮かべれば誰もが納得するだろう。
さて、このシンフォニエッタ・ケルンの演奏、ヴィーナー・ゾリステンの演奏に比べると、録音が優れているのはもちろん、爽やかで伸びやか、若々しい音楽づくりに好感が持てた。弦楽四重奏に比べ、弦楽器が増えることによる厚み、コントラバスが入ることによる低音の安定感などは聴いていてたいへん心地よい。
特筆すべきはK159変ロ長調の中間楽章、ト短調で書かれたアレグロ・モルト。この調性特有の情熱と激しい感情が感じられる。それに続く対照的なアレグロ・グラツィオーソの典雅な美しさ、その中に現れる一抹の翳り・・。
そしてK160変ホ長調。第一楽章冒頭の主題はK136ニ長調のそれに酷似しているが、より貴族的、格調の高さを持っている。それにしてもこの曲こそ、もともとが弦楽合奏のための曲であったかのような素晴らしい響き。ずっとこの響きに浸り続けていたいような気持ちにさせられる。

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